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嵐の前の曇り空

あと一週間ほどでダンジョン村次巻発売です!次巻の辺りの小話をちょこちょこ入れますよ!

 高級宿屋で宿泊手続きを済ませた、ゲオルグ達。シルヴァンを抱えたまま落ち込むアルギスをどうするのかと南の魔女を見る。

「フン!」

 身体強化して、シルヴァンごとアルギスをお姫様抱っこした南の魔女は、目を極限まで見開いた案内係に部屋へ案内するよう促す。しっかりした足取りで階段を上がる南の魔女。アルギスのお腹の上で何とも言えない視線をよこすシルヴァンが、一階の天井でフェードアウトされていく。

「「すごいですね、南の魔女様」」

「……じゃの」

 部下二人の言葉に頷きながら、シルヴァンは大丈夫なんだろうかと考えるゲオルグ。 

「お腹すきましたわね」

 のほほんと話しかけてくる東の魔女に我に返り、食堂へ向かうことにしたゲオルグ。食堂で、南の魔女達の文も注文して、部屋に届けさせるように頼んだ。


「アルギスさぁん?お昼よぉ?食べないとお仕事できないわよぉ?」

 南の魔女は部屋係から食事の入ったアイテムボックスを受け取って、部屋の隅に声をかける。

 部屋に入った時には、きちんと椅子の上にアルギスを置いた南の魔女。ちょと目を離したスキに、アルギスはシルヴァンを抱えて部屋の隅に体育座りで落ち込んでいた。

 南の魔女の言葉に反応したシルヴァンは、南の魔女のマネッコをして身体強化し、アルギスを引きずってご飯のもとへとたどり着いた。

「ありがと!シルヴァン♡あんたは芋っ娘と違って優しいわねぇ」

「キュゥ」

「はい!アルギスさんしっかり!ご飯も食べないでどうするの!仕事できなかったら、ますますお兄様に嫌われちゃうわよぉ!」

 南の魔女の言葉にビクッと慄き、涙に濡れる目を南の魔女に向ける。

「……嫌われる?」

「うっ。(失敗した!)嫌いにはならないわよぉ。心配はするでしょうけどぉ。大事な弟が食事を取らないぃなんて絶対大騒ぎするわよぉ、あなたのお兄様ぁ。さ、食べた食べた。お腹空いてたら碌な事考えないわよ!」

「ウッウッ」

 泣きながら食べ始めるアルギスに聞こえないように、ため息をこぼす南の魔女。シルヴァンを捕まえてボソリという。

「あんたの主にはちゃんと責任とてもらいますからねぇ?」

「キュゥ」

「うふふ。もぅ!冗談よぉ、かわいいんだから!さ、食事食事!」

 シルヴァンは南の魔女がかけらも冗談で言ってないことを本能で理解した。南の魔女から食事を分けてもらいながら、季節先取り梅雨入り状態のアルギスをどうしたもんかと案じる。が、美味しい料理にあっさり思考を放棄した。

「ケップ」

「いっぱい食べたぁ?もう大丈夫?」

「オン!」

「あらぁ?アルギスさんは?」

 部屋の隅からどんより漂う空気の方に視線を向けるシルヴァン。フッと息を吐いて、トコトコとアルギスに近づき、その背中に顎を乗せながら、寄り添うように座る。

「……シルヴァン頼んだわぁ。あんただけが頼りよぉ。はぁ」

 片手で顔を覆い、食事の後片付けを部屋係に頼んだ南の魔女であった。



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