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ほそーく長く刺激的に!

 ある日メラニーが、温泉村からの荷物をパン屋に持ってきた。

「アマーリエさん、温泉村から荷物届きましたよ〜」

「あれ、なんだろ?」

「えーっと蕎麦粉と小豆みたいですね」

 伝票を確認して、アマーリエに手渡すメラニー。

「村長の奥さんからだ。ホイ受取しましたっと」

 サインして、メラニーに伝票を返すと、荷物を解くアマーリエ。中にあった手紙を読む。

「何々……温泉村の開拓も進んでるって。養蜂家も来たんだ!感謝の言葉があるよ。気にしなくていいのになぁ。大隠居様から温泉村行きの許可が出たら、メラニーさん、温泉に一緒に行きませんか?」

「いいですね!私あれからまだ一度も行ってないんですよ!」

「え、まじで?」

「何回やってもくじで負けるんですっ!」

「えー」

 メラニーの引きの悪さに思わず口が開いてしまったアマーリエであった。

「オンオン!」

「あ、お帰り、シルヴァンちゃん」

「オン!」

「よぉ、商業ギルドの!」

「ベルンさん。こんにちは」

「ベルンさん、シルヴァンをありがとうございます」

「ギルドに行くついでだから、送ってきた。なんだそれ?」

「ああ、温泉村の村長さんの奥さんから蕎麦粉と小豆が届いたんですよ。何か村の発展のお礼だそうです」

「そうか!よかったな。で、何作るんだ?」

 キラリと目の光るベルンに、うーんと考え始めるアマーリエ。すかさずシルヴァンが念話画像を飛ばす。

「え、ざるそば食べたいの?」

「オン!」

「「ざるそば?」」

「あーえっと、蕎麦を麺にして調味料につけて食べるんですけど、肝心の調味料がないんですよねー」

「キュゥ」

 食べたいとアマーリエの膝に下顎を押し付け、上目遣いで訴えるシルヴァン。

「無理だよ、シルヴァン。流石に麹は怖くて自主製造できないね。そもそもニホンコウジカビが居るかどうかもわかんないのに」

「オゥ」

「うーん、カレー南蛮で許して」

「カレーなのか!」

「カレーですか?」

 ベルンとメラニーの反応にあははと笑って誤魔化そうとするアマーリエ。

「リエ?」

「アマーリエさん?」

「うう。お口にあうかどうかわかりませんよ?出汁がちょっと違いますし」

「食べなきゃわかんないだろ」

「そうです、そうです」

「そんなに蕎麦粉の量が多くないから、内緒ですよ!」

「「もちろん!」」

 こうして密約がなされたのであった。

 ベルンは冒険者ギルドで用事を済ませて戻ってくると言い、メラニーも仕事を終わらせてくるととんで帰っていった。

「……さて、秘密は守られるのであろうか?この村の人観察能力高いんだもんよ。みんなミス・マープル並なんだもん!」

「キュゥ」

 がっくりしながら、あるだけの蕎麦粉で二八蕎麦を打つことにしたアマーリエ。厨房に行って、準備を始める。その作業を、じっと見守るシルヴァンであった。

 そばを打ち終えたアマーリエは、カレーと出汁の用意を始める。カレーはもう、定番としてアイテムボックスに保存されている状態になりつつある。

「うーん、これをお蕎麦屋さんのカレー南蛮にするんだけど、醤油がなぁ」

「キュゥ」

「魚醤で代用するけど、量が難しい。ここにカレーを投入」

 味見しながら、バランスを整えるアマーリエ。

「こんなもんかな。ほい、味見」

「オン!」

「今度、フォーでも作るか」

「オン」

 味見をして、その微妙なズレがズレでなくなる料理をつくることをシルヴァンに提案したアマーリエであった。

 アマーリエは、ベルン達が戻ってきてから蕎麦を茹で始める。

「ウフフ、楽しみ」

「蕎麦でも麺になるんだな」

「蕎麦に小麦粉混ぜてますけどね」

「そうなのか?」

「蕎麦だけでもできますけど、さらに技術がいるんですよねー」

「そうなんですね」

「ん、茹で上がった。冷水で一回しめて、もう一回さっと茹でるっと」

 シルヴァンはその横で木の大きめのスープ椀を風魔法で持って待機中である。

「よし、こんなもん。シルヴァンありがとう」

 アマーリエは蕎麦をお椀に入れ、上からカレーをかけていく。ベルンとメラニーはワクワクとそれを見守る。

「はい、じゃあ上で食べましょうか」

 それぞれ出来上がったお椀をトレーに乗せて二階へいそいそ上がっていく。

「「「いただきます!」」」

「オン!」

「熱っ」

「はねるから気をつけてくださいよ。証拠は残さないように」

「「ん!」」

 箸はないのでフォークでパスタのように蕎麦を巻き取って食べる三人。

「美味しい!魚の風味がします」

「魚の出汁に魚醤使ってますからねぇ」

「柔らかい味のカレーだな。蕎麦の麺もはじめてだが、うまい」

「うどんでもできますよ」

「なるほど。うどんでも美味しそうですね!」

 バレたら、カレーうどんでごまかすつもりのアマーリエであった。

「ああ、そうだ。リエ、区画ごとにコメを分けて収穫して欲しいって言ってたろ」

「ええ」

「この間ダンジョンで採ってきたのは、分けてあるぞ。要るか?」

「助かります!アーロンさんに鑑定頼んで、米の種類を特定したかったんですよね。精米するまで見分けつかない種類もありますし」

「よくわからんが、今度持ってくる」

「お願いします〜」

 その後は無言でカレー南蛮そばを堪能した三人と一匹であった。

「美味かった。またなんか美味しいもん作ってくれ」

「美味しかったです〜」

「お粗末さまでした。小豆があるから、またなんか作りますよ」

「「楽しみにしてる!」」

 それぞれを店の前で見送った、アマーリエとシルヴァンだった。


 神殿に帰ったベルンは匂いであっさりバレることとなり、ファルに盛大にゴネられることとなった。

「クッ、浄化魔法かけるのを忘れてたぜ」

 痛恨のミスを犯した、ベルンであった。

 もちろん、とばっちりはアマーリエのもとにも行き、結局、神殿カレーの会で村のお母さん達と一緒にうどんをこね、カレーうどんを作る羽目に陥ったのである。


年越しそばどうしようかな?

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