ブラウニーさんへの贈り物
「アマーリエからだ。引っ越し助かった、ありがとうだそうだ」
ダールは手の者に届いた菓子を渡し、皆で分けるように言う。手渡された者は頷いてアジトへと戻った。
「……やっぱりバレているのか?」
「そりゃバレるだろ」
「や、やりすぎだって言ったじゃんか、厨房の中を実家の厨房とぴったり同じに整理整頓したら」
テーブルに置かれた菓子の山を見て、ダールが使う草者の中の通称【アマーリエ部隊】のメンバーが言い合いを始める。
「バレてるが、ヤブをつつく真似をしないだけの賢さがあるんだよ、あの嬢ちゃんは」
「ヤブの前に餌を置く悪知恵はあると思うんだけど」
仲間の一人がそう言って目の前の菓子の山を指差す。
「じゃ、お前食うなよ」
「食べるに決まってんでしょ!せっかく作ってくれたんだから!」
「ちょ、お前分ける前に食べ始めるなよ!」
話し合いに参加せず、一人黙って食べ始めているやつがいるのに気がついて、慌てて皆でお菓子を分け始める。
「俺その塩辛いの多めで!」
「んじゃ、私甘いの多くして」
「焼き菓子切り分けるぞ?」
なんだかんだ楽しくわけっこを始めるアマーリエ部隊。
「結局、胃袋から懐柔されてるよな」
「「「「お前が言うな!」」」」
一人で先に食べ始めていた者のポツリと漏らしたつぶやきに、その場に居た全員が突っ込んだのであった。
実はこのアマーリエ部隊、まっさきに美味しいものが食べられるとあって草者たちの中では人気の部署であったりするのだ。
ただ、対象者がやらかしまくるため、気の休まる時間は少なかったりするのだが。
警護監視対象者によるアメとムチというおかしなことになっている辺境伯領の諜報部員達でした。