アルバン砦は今日も平和?です
本日、「ダンジョン村のパン屋さん2〜パン屋開店編〜」発売です!
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「平和だぁ」
アルバン砦に赴任してから三日ほど、久方ぶりの心穏やかな日を過ごす騎士ノール。悩みの種としばらく関わることがないため、後輩や見習い達をビシバシ扱く、騎士らしい日々であった。
「これだ!これなんだ!俺が求めていた在るべき騎士の姿ってやつは!」
ノールが感動に打ち震える姿を、ミカエラとアーノルドが吹き出すまいと必死で腹に力を入れて頑張っている。そこを通りがかったグゥエンがニヤリと笑って、ノールに声をかける。
「ノール、アマーリエは忘れたころにやってくるんだぞ」
「なっ!?嫌なこと言わんでください!グゥエン殿!」
「ブハッ」
「クスクスクス」
「気を抜くなよ。まあ、お前達に限ってないと思うが、気を抜いて怪我をするようなことがないようにな」
「「「はっ!」」」
アルバン砦は、のんびりとした春の空気を皆で満喫していたのであった。
それは、スケルヴァンからアルバン村に無事についたという知らせが届いた日の夕方のこと。
『侵入警報!侵入警報!アルバン村に何者か侵入した模様!全員、一級警戒態勢を維持!指示があるまで所定位置に待機!』
「ぬぉぉ?なんだ?リエがまたやらかしやがったのか!?」
砦の主任騎士の執務室で、訓練の計画をたてていたノールが警報を聞いて、顔を青ざめさせる。
「落ち着けノール。侵入者だから、アマーリエは関係ないだろう」
ノールの正しい勘を理屈で否定するグゥエン。砦の責任者である主任騎士が顔をこわばらせる。
「グゥエン、ノール!アルバン村の結界を破って侵入できるほどの存在だ。洒落にならんぞ。一級装備で待機しろ!」
にわかに、慌ただしくなる砦の中。そこにスケルヴァンからの魔鳥が届いたと、連絡担当騎士が主任騎士の執務室に飛び込んでくる。
手渡された魔鳥を受取り、魔法陣を解除して魔法紙に戻す主任騎士。内容を読み進める内に、眉間にしわが寄り始める主任騎士。
「……問題ないそうだ。警報を解除。総員、通常勤務に戻るように」
「「「?」」」
ものすごく微妙な顔をしている主任騎士に、連絡係の騎士は返事をして、砦内の警戒解除を知らせに行く。
「主任?」
「あ、ああ。詳細は後日、スケルヴァン殿が報告にみえる。グゥエンとノールは同席するように」
「「はっ!」」
その日はそのまま、訓練計画をたてて終わったノール達。夕食時の砦内の食堂では、今日の警報はなんだったのかと話題になっていた。
後日、スケルヴァンの報告を聞いた主任騎士とグゥエン、ノールは頭を抱えることになる。他所の国の皇族を片田舎で警護も付けずに預かっていいのか物議を醸したが、南の魔女を始めとする強者揃いに、大丈夫であろうと無理やり納得させた三人であった。
そして、この間の警報はゲオルグによる訓練であると下っ端騎士達には伝えられたのである。
「……リエ、問題起こすのは構わんが、こっちまでわざわざ巻き込むのはやめてくれ!」
がっくり項垂れるノールの肩を、無言で軽くたたいたグゥエンであった。




