プロローグ
2016年、梅雨。
ジメジメと蒸し暑い、高校1年の朝。
俺は誰もいない家で、誰もいない朝食をとり、今日もいつものように登校する。
今年の春、俺 真虎 馬実 (まとら まみ)は、都会でもなく、田舎でもない、そんな中途半端な所の高校に入学した。
この学校を選んだ理由はただ家が近かったからというだけで特に愛校心はもちあわせていない。
とゆうかまだ入学して2ヶ月そこらで愛もくそもない。
そんなわけで昔から友達が多かったわけではなかったが、入学してまだ日が浅いということもあり、俺は登校はいつも一人だ。
二カ月もあれば普通は友達ぐらいできる?
それはコミュ力の高いリア充どもの言い分だ。
容姿は普通(眼つきはいかつい…髪型も)、
勉強はそこそこ(中の上の下くらい)、
スポーツはいろいろかじったがどれも中途半端でやめてしまい、(幼馴染いわく)オーラはどこか薄暗い…らしい。それに特におしゃべりでもなく、どちらかというと黙って考え事(妄想)をしているほうがすきだ。
そんな俺は入学式当日、とくに人と話そうとせず、一人隅の席で黙って妄想の世界へ入り浸っていた。(はたから見れば教室の隅から女子の品定めをしているヤンキー…のようだったらしい)
そんな俺にこえをかけようなどという強者はあらわれずこの二カ月で校内で仲がいいと呼べる者は一人だけだ。
そんな回想をしているうちに学校前の一本坂にさしかかる手前、その仲がいいと呼べる唯一の生徒が俺に声をかけた。
「よっ、今日もいつも通りの薄暗オーラだな、とら。」
この朝から馴れ馴れしく俺の肩に手を回す背の低めの高校男児は 東雲 犬 (しののめ けん)
俺のオーラを薄暗いとかいいやがる腐れ縁の幼馴染。
ちなみに俺とは別のクラスで、クラス委員を任されている。
「お前も相変わらず朝から鬱陶しい挨拶ごくろうさん。」
そう言って俺は犬の腕を振りほどいた。
「そんなこというなよー、俺ととらの仲だろ」
ちなみにこの とら という呼び方はこいつの昔からの呼び方で、俺が 馬実という名前にコンプレックスを持っているため昔こう呼ぶようにさせた。
コンプレックスになった理由は言うまでもなくこの名前が
女っぽいからよくからかわれる からだ。
「ところでよー、とらー。どうよ?あの人にはもーアドレスくらいは聞いたのかよ?」
「聞けるわけねーだろ。俺は毎日忙しいんだ。」
「けどよー、噂じゃ彼女、今月だけでも4回は告られたって話だぜ、早くしねーととられちまうかもよー」
「あのなー、犬、お前がもし恋をしたとして、他人に告れと言われておいそれと告白なんかできるか?」
「いやー、でもよー、いままで女に興味なかったとらが初めて恋したんだぜ?幼馴染として応援してーんだよー」
そう言って犬はまた俺の肩に手を回した。
いまの会話でお察しの通り、俺は高校1年目の梅雨、絶賛初恋中である。
厳密にいうと初恋したのは春、入学式の次の日、校内で彼女を見かけたときからだ。
初恋の相手の名前は 霧森 巳小 (きりもり みお)
言わずともしれた名門のお嬢様で、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の絵に描いたような人だ。
彼女は一つ年上の高校二年の先輩で、とにかく、綺麗だった。
そんな彼女に俺は一目惚れしてしまったのだ。
だが犬の言う通り、彼女は二年の間ではもちろん、学年問わず、校内のアイドルだった。
というか、この町で彼女を知らない男はいない、といっても過言ではない。
そんな人気者に俺が相手にされるわけもないとわかっていた、だから俺はこの話を早々に断ち切るために
「犬、お前のその気持ちはありがたい、だが、とりあえずその腕をどけろ、重いし暑苦しい。」
と心底鬱陶しそうな顔で言う。
「わーかったよ、っていうかそろそろ予鈴なりそーだし急ごうぜ!恋話の続きまた放課後にでも聞かせてくれよな」
と犬がいたずらっぽい無邪気な笑みで言う。
こーゆーところが憎めないんだよな、こいつ。
「この話をまたする気はねーよ。」
と苦笑い気味に返す俺。
少しだけ歩くペースをあげて俺たちは学校の門をくぐった。
いつも通り学校の授業は面白くもなく過ぎてゆき、いつも通り犬と飯を食べていた。
「なあ犬、お前毎日おれと昼飯食べてるけど、友達いないのか?」
「な、なわけねーだろー。ってかお前には言われたくないねー。」
笑いながら犬は言う。
確かに、犬は高校に入ってかすぐにクラスに溶け込んでいた。
この性格もあって友達と呼べるやつはすぐにできていた。
俺と犬はクラスは別だからあまり他のやつと話しているところを見かけることはすくないが、彼がクラス委員に選ばれとたとうことからも彼がすでにクラス内でかなりの信頼と友好を築き上げていることはあきらかだ。
「そーいえばとら、今日俺クラス委員でちょっとやらなきゃいけないことがあってさー…」
「別にお前がいなくても一人で帰れる」
「とかいって、寂しいんじゃねーのー」
ニヤニヤしながら言ってくる、正直キモい。
「なら明日から別に俺に付き合って一緒に帰んなくてもいいぞ」
「怒るなよー」
そう、犬は決して友達が俺しかいないとかそーゆのではない、むしろおおいほうだ。
しかし、学校に、馴染めない俺に気をつかってかいつも一緒にいようとしてくれている。
こーゆーところが憎めなくて、ありがたくて、キモい。
そんなこんなで昼休みはいつも通り幼馴染との昼食と軽い雑談でおわり、あっという間に放課後になった。
今日はもいつと通りHR終了とともに教室を出た俺は、誰かに帰り道の寄り道のお誘いをうけるでもなく(それどころか会話や挨拶すらなく)、クラス委員の仕事があるらしい友人をおいて一人妄想の世界に入り浸りながら一本坂を下っていた。
学校から家までの帰り道には、学校前の一本坂を下ってすぐの大きな国道が通っており、そこの交差点の信号をわたれば徒歩で10〜15分くらいで、家に着く。
俺の妄想とは、えっちな妄想ではなく、主におれの理想、とゆうか淡い希望が叶うことを頭の中でシュミレーションしているのだ。
全国の高校男児たちならどーいったものかだいたい理解できると思うが、ようするに、好きな子を不良から助けて中が良くなるとか、宝くじがあたるとか、そーいったどっでもいいよーなことだ。
だからきっといま目の前でおこっていることも、俺の妄想なのだろう。
いつもの妄想とは違うが、だがこれが現実にだとも思えなかった。
俺は今、坂を下った交差点の信号でただ立ち尽くして、見下ろしていた。
俺の眼前には真っ赤な炎と、炎とは別の濁った赤い液体。
横転しているトラック。集まる野次馬。
そして横たわる、初恋の相手。
遠くから聞こえるサイレンの音。
何人かの悲鳴。
それがだんだん遠のいていく。
視界も、真っ赤な液体の上に横たわる彼女だけがはっきりと見え、周りは真っ暗に染まっていく。
そんな俺の前に鈴が転がってきた。
彼女がいつも髪留めにつかっていたリボン付きの鈴。
リボンにはローマ字でMioと刺繍されていた。
俺はそれを拾い上げ、そして、ここで視界が真っ暗になり、遠くからきこえていたサイレンの音も消え失せた。
そんな俺の意識を音高い目覚まし時計の音が呼び戻した。
俺はベッドに横たわっていた。
「夢、だったのか…?」
だが背中には嫌な汗が大量にしみこみ、べったりとしていて気持ちが悪い。
そして右手には、リボンがついた鈴が握られていた。
リボンにはMioの三文字が刺繍されていた。
そのリボンには赤黒いシミがはっきと染み付いていた。
初めての小説で、拙いところも多いとおもいますが、がんばって長く書いていきたいと思っています。
皆さんに面白いとおもってちただけるかはわかりませんが、よければ今後もお付き合いおねがいします!