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垢嘗め、あかなめ。

作者: 悪太郎。

「ご馳走様でありんす。嘗めたその口で呟いた垢嘗めは、いつもの女房の顔に戻ってしまった。

垢嘗めが寝室に化け出る様に為って久しい。

風呂桶の湯垢を嘗め取っていたこの妖怪は、西洋化が進むにつれ化けて出る場所を失った。

今、奴等は女性に取り付き、男性の垢の最も溜まる場所、つまりは陰茎亀頭を嘗める妖怪に変化を遂げた。

男達は其れを受け入れている。

奴らを寝室から叩き出すのは、容易である。

陰茎を綺麗に洗えさえすれば良いのだから。

然し対処に励む男性は多くない。

垢嘗めの舌戯たるや、世の女性を遥かに凌ぐ出来で、あまつさえ其の行為は性倒錯の一例としてよく出される、歯を抜いた口に陰茎をねじ込むが如き背徳と快楽を得られる為である。

背徳を犯す者は常に罪の共有を求めるために、垢嘗めの取り付いた妻を持つ男性の繋がりは固い。

垢嘗めの交換などもよく行われており、我が家の垢嘗めは現在7人目である。

射精後も、垢とほぼ成分の変わらぬ精液を嘗めとる其の姿には愛着さえ感じる。

故に、垢嘗めが満足し何時もの女房の顔に戻る時等、そこはかと無く悲しくなるのは最早常で、直ぐに背を向け眠りにつく。


ここまで書き至って恐ろしい事にはたと気づく。

果て、垢嘗めの生殖行動とは如何なるものなのであろう。

雌雄の別も皆ついておらぬ様である。

妖怪とは物に魂が宿った場合や、事象に姿がついた場合もあるが、一番多いものは人が怨念や悔いを持って姿を崩したものではなかったか、すなわち、垢嘗めとは総て女性の可能性もあるのだ。


いつの夜か定かではないが、垢嘗めのフェラチオで興に乗って化けて出ているままに女房を犯したことがあった。

くるりと反転し、目をやる。

中年期太りかしら。なんて、しきりに言い出した女房の腹に、触ってみると腹一面垢の塊である。

恐ろしくなって垢を爪で引っかき、落とす。ぽろっぽろと剥れる垢、垢、垢。

まとめると握り一つや二つの大きさではない、シーツに包み、部屋の隅の屑篭に慇懃に入れた。

其の間、女房の顔を見ることは無い、垢嘗めが出てこぬか咎めたのだ。

くるりと回って背を向けぎゅっと目をつぶる。

早く寝ねば早く寝ねば、


屑篭から赤子の声。女房が我が身を揺する。「お前さん、垢太郎と名づけてもよいかね。女房の声は、垢嘗めの呟きに瓜二つであった。

垢嘗めは、風呂桶や風呂にたまった垢を嘗め喰うとされる妖怪である。

これ以上に説明の必要な無名妖怪であるとは思わないので割愛する。

垢太郎とは、岩手県に伝わる昔話力太郎の幼名である。

長らく入浴していなかった老夫婦が落とした垢で人形を作ったところ、その人形に命が芽生え、立派な一人の人間の子供になったという。

成長した垢太郎は力太郎と名を変え力試しの旅に出る。

旅の途中に御堂コ太郎と石コ太郎と出会い、戦い、家来にしながら最終的に長者の娘を生贄につれていこうとした鬼を退治するという物語である。

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