「勇者パーティーの一般戦士の俺、実は世界を滅ぼすラスボスらしい。でも勇者に恋したので世界は救います。」
俺の名前はシン。
職業、一般戦士。
……少なくとも、そういうことになっている。
「次の依頼どうする?」
酒場のテーブルで向かいに座る少女が聞いてきた。
金色の髪。
透き通るような青い目。
そして背中に背負った聖剣。
勇者リリア。
世界を救う運命の人。
「帝国軍の拠点を叩くらしいよ」
俺が言うと、リリアはにやっと笑った。
「いいね! 強い敵は大歓迎!」
この人、ほんと戦うの好きだな。
「シンは怖くないの?」
「まあ……慣れてるし」
本当は違う。
帝国軍が怖いんじゃない。
俺自身が怖い。
「じゃあ決まり!」
リリアは立ち上がった。
「帝国をぶっ飛ばしに行こう!」
周りの冒険者たちがざわつく。
「勇者だ…」
「また帝国軍と戦うのか…」
その中心で、俺は頭をかいた。
(また戦いか)
正直、あまり気が進まない。
なぜなら――
俺はたぶん、
この世界で一番ヤバい存在だからだ。
⸻
帝国軍の砦
夜。
帝国軍の砦を見下ろす丘の上。
「作戦は?」
俺が聞くと、リリアは即答した。
「突撃!」
「やっぱりそれか」
「シンプルが一番!」
勇者、脳筋すぎる。
「でも兵は多いよ」
「シンがいるじゃん」
「俺?」
「うん」
リリアは笑った。
「シン、めちゃくちゃ強いじゃん」
……それは否定できない。
でも。
(強すぎるんだよな)
自分でも理由が分からない。
剣を振れば敵が吹き飛び、
魔法を受けてもほとんど効かない。
まるで――
この世界の法則から外れているみたいに。
「行くよ!」
リリアが砦へ走り出す。
「おい待て!」
俺も慌てて追いかけた。
⸻
戦闘
砦の門が爆発した。
「勇者だああ!!」
帝国兵が叫ぶ。
「敵襲!!」
数十人の兵士が押し寄せてきた。
リリアは聖剣を振り上げる。
「はあっ!」
光の斬撃。
帝国兵が吹き飛ぶ。
「相変わらず派手だな」
俺も剣を抜いた。
兵士が斬りかかってくる。
ガキン!
剣を弾き、反撃。
一撃。
二撃。
三撃。
兵士が次々倒れる。
「シン!」
リリアが叫んだ。
「後ろ!」
振り返る。
巨大な鎧の騎士。
帝国の将軍だ。
「勇者ァ!!」
斧が振り下ろされる。
ドゴォォン!!
地面が砕けた。
「危ねえ」
俺は横に飛んだ。
将軍が俺を見る。
「貴様、ただの戦士ではないな」
「どうだろうな」
正直、自分でも分からない。
将軍が突進してくる。
俺は剣を構えた。
そして――
斬った。
次の瞬間。
ドンッ!!
将軍の体が吹き飛び、砦の壁を突き破った。
沈黙。
帝国兵が凍りつく。
俺は自分の手を見た。
(まただ)
力が強すぎる。
⸻
戦闘後
砦は制圧された。
帝国兵は逃げていった。
「やったー!」
リリアが拳を上げる。
「勝利!」
「お疲れ」
俺はため息をついた。
するとリリアが近づいてきた。
「シン」
「ん?」
「ほんと強いよね」
「まあな」
「もしかして」
彼女は笑った。
「魔王より強かったりして」
俺は一瞬、言葉を失った。
……冗談だろうけど。
たぶん。
それ、間違ってない。
なぜなら。
俺の頭の奥に、
最近よく見る夢がある。
黒い玉座。
無数の魔物。
そして。
世界を見下ろす男。
その顔は――
俺だった。




