相見える
畑に水をやったあと、他の世話は母がする事になった。これで明日領主にプレゼンする内容を思う存分に考えることができる。
「う〜ん…。」
この世界では、何が主食なのであろうか。もし米や麦などであれば、一気にこの山川芋の需要が跳ね上がる。芋は主食の代わりになる。そのため、天候に左右されにくい山川芋の価値が上がるのだ。今この村では農作物が採れていない。それもそうだ。この土地はこの村からでも見えるほどの大きな山脈に囲まれている。雨が少ないため、麦や米が育ちにくいだろう。
いや待てよ?じゃあなんで今だけ不作みたいな言いようだったんだ?これまでの母の言動などを考えると、今までは農作物が採れたようないい草だった。もしかすると、それも明日分かるのかもしれない。
しばらくして、母が帰ってきた。早速主食について聞いてみる。…いや待て。迂闊に聞けば怪しまれるに決まっている。考えろ…自然な聞き方を。
「母さん、農作物の価値はどれも同じって言ってたけど、不作なんだよね?価値が上がった作物はあるの?」
「取れなくなったのは主に米と麦と多数の野菜だからね。今まで通り育てることが出来る山川芋とか野菜の価値はそのまんまで、米と麦が少し上がったわね。」
「芋は母さんしか育ててないの?」
「そうね。みんなほかのものを育ててるわ。」
来た!完璧だ!この村で育てられている芋は山川芋だけ、みんな野菜や米、麦を育てているということは、主食は米と麦だと言っているに等しい!これは、希望が見えてきた。
明日の奉納式が楽しみだ!。
「なに嬉しそうな顔してんのさ。」
「今に見ててよ。」
とうとう、奉納式の日が来た。奉納式は昔の日本で言う租や調のようなものだと思う。今のところ税を納められるのが山川芋くらいなので、皆から感謝されて送り出された。領主の屋敷直々に納めに行くらしい。
ここからずっと北に行ったところに領主の城がある。目的地はかなり遠い。そう母に忠告された。
「あんた、奉納式初めてだけと、かなり体力いるわよ。」
私に迷いはない。と言ったらめちゃくちゃ嘘になるし、実際距離が遠いと聞いてからかなり悩んだが、行くことにした。でないと一生このままだ。
え!?まだ着かないの!?かれこれ1時間以上歩いてるんだけど!?
「だから言ったじゃない。キツイわよって。」
母さんが私の気持ちを察したように話しかけてきた。
「ここまでッ…はぁ、はぁ、キツイなんて聞いてない!」
荷台を引いているのは母さんだ。しかし歩くだけでこの辛さ。先が思いやられる。
「ようやく、着いた…!!」
ここが領主の城の城下町か。無茶苦茶広いな。城は、the城と言うよりは日本の寝殿造に近いような形をしている。その付近の町も含めて、少し小さめの平安京のような形をしている。
町の大きな道を歩いて、領主の城に向かった。領主の城は思いの外でかい。寝殿造のような木造の城に、豪華な庭。入り口まで来ると、番人に武器などがないか確認された。もし戦うことになったら、母さんに武器はいらないと思うけど。門番も母さんをみて狼狽えてた。
筋肉は取り上げようがない。
「失礼します!奉納者がやって参りました。」
番人が声を張り上げ、入り口の門を開けた。
「よくぞ来た。今月唯一の奉納者よ。」
聞こえてきた声が想像よりも可愛らしくてびっくりした。いや違う。驚いたのはそれだけではない。まるで自分の声を聴いているかのようだったからだ。驚いて領主を見ると、そこには自分と瓜二つの少女が立っていた。
プレゼン用に考えていた内容も、敬語も、すべてが吹き飛んだ。
「…え?」
少女もまた自分を見、驚いたような表情を浮かべていた。
どういう事?私にそっくりな女の子が領主の娘…?
「どういうことです?帝林様はいらっしゃらないのですか?」
横を見ると、母が苦虫を噛み潰したような顔で女の子に問うていた。
帝林とはまた大層な名前だな。おそらくその人が領主で、このこは代理なのだろう。
周りにいる衛兵と思しき人達もざわめき立っている。
「私は、高山 白。領主高山 帝林の娘だ。そして、父は死んだ。今は私が領主だ。」
え!?てことはこの娘は貴族の娘!?いやいや、はぁ~!?領主の娘と貧民の娘が無茶苦茶そっくりなら、領主の娘のほうに転生させて下さいよ!神様!!なんで!?
私(藍)と全く瓜二つな顔に、すらっとした白髪。髪質も、相手は整えているだけでもともとは同じにみえる。。着物は豪華なものを着ているが、体格、身長まで私と瓜二つだ。
「して…、将よ。話は聞いておるが、その横のものは娘か?」
大人びた話し方は貴族そのものだが、動揺を隠しきれていない。相手も困惑している様子だ。それもそうだ。こんな大衆の面前で貧民の娘が自分の容姿と似ていたのだ。屈辱であり、私は相当の無礼を働いている。存在しているだけで。なんか悲しいな。
ここは母ではなく私が直々に応えよう。
「私は、想子 藍と申します。本日は、領主様にどうしてもお伝えしたい事があり、この度母と一緒に参りました次第です。」
母はかわりに答えるつもり満々だったんだろう。私を見、目を見開いて驚いた表情をしている。何処でそんな言葉覚えたの?とでも言いたそうだ。わたしは前世、怒られたときにへりくだりまくることで回避してきた。敬語は誰にも負けない。
「ほぅ。経緯は分かった。しかし、其方の話は後だ。先にその容姿について聞きたい。私と瓜二つのようだが。」
そんなんこっちが聞きてぇわ。異父姉妹か?
「私の夫 白李は16年前、別の村へ渡りました。言葉にすることも恐れ多いですが、帝林様がこの子の父親だ。ということはあり得ません。」
「だが…」
「僭越ながら割り込ませていただきます。」
おお、この場合でマジで僭越なことあるんだ。
「帝林様が戦場に向かわれることはありませんでした。私が帝林様の愛人ということも絶対にありません。」
頼もしいよ!母さん!見直したよ、母さん!
「単なる偶然というのか?そして、藍と言ったな。其奴には神力が宿っている。これは貴族にしか無い特徴だ。これが何よりの証拠。」
えぇっ!?この世界ファンタジーだったの!?しかも、私神力あるんだ!!むちゃくちゃカッコいい!!でも、絶対母さんは驚いてるだろうな…。横を振り返ってみると、先ほどの表情をあまり変えていない。よほどの自信があるんだろう。白のハッタリだと仮定している様子だ。
「彼女は、神に寵愛されているんでしょう。」
見ると、白の着物をまとった神官らし老人がいた。
「彼女には、貴族の神力ではなく、明らかに神社に祀ってある神から発せられる神力そのものに似ている。お主、最近神社にいったか?」
「…ぁあ、はい。西向神社にいきました」
あの点が思いっ切りノンデリかました時に出てきた神社は、西向神社と言うらしい。後々将から聞いた。
「あの神社に…。なるほど。となると話はが通じます。白様。この者は白様のご親族のかたではございません。」
なんか分からんけど、ナイスジジイ!助かった!
「なるほど…。分かった。後で少し藍に話がある。2人きりでだ。将、そしてほかの神官、大臣、全員は、奉納の儀が終わったあと外に出ろ。」
え!?私も同様、ほかの全員も慌てふためいている。
「しかしそれは…、」
「良いな!」
逆らえるはずもなく、将が山川芋を奉納し終わったあと皆は出ていった。しかし、これはチャンスでは?さっきから考えていたけれど、私のプレゼンもできれば周りに聞かれたくない。これは好機かもしれない。そうと決まれば早速だ。
「あの…」
「こちらから先に聞いてもよいか?」
「あ、はい…。」
え、何聞かれるの?
「神力があるというのは本当か?」
「大変申し訳ございません。私は神力というものは存じておりません。今初めて拝聴しました。」
白は目を見開いた。
「何!?神力を持ちながら知らないだと?神力は見えるか?神力を持つものは、他人の神力を見ることができる。」
あ〜!あのおっさんのヒゲから伸びてモワモワしたたやつ、あれ神力だったんだ。
「はい。私の神力について教えて下さった方は、神力らしき物が見えました。」
でもあれ?ホントに神力があったとしたら、私の神力が見えてた白も神力を持っていることになる。しかし、今私は彼女の神力を見れていない。
私が不思議そうにしていると、心中を察したように白が話してきた。
「困惑するのはわかる。私の神力のことであろう?よい。教えよう。私には、殆ど神力が、無い。領主の娘なのにだ。領主である父 帝林が死去してから、私が領主になった。領主の神力量は、そのまま作物の収穫量に直結する。」
困ったような顔をしながら話す白を見ながら、私は密かに納得していた。あ〜そういうことだったんだ。だから不作になっちゃったんだ。
「そこでだ。」
ん?
「はい、なんでございましょうか。」
「私と入れ替るつもりはないか?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もし誤字脱字や設定の矛盾、不備等あれば、教えていただけるとありがたいです。
いよいよ第一部前半はクライマックスを迎えました。




