転生先は貧民村
「何さ、まだ熱の余韻でもあるのかい?」
先ほど声がしたほうを見ると、体格のガッシリしたおばさんがこちらを見ていた。肩幅が広く、美しい上腕二頭筋は、ローマの彫刻のよう。袖が適当に破れたふくは、ゴツゴツの腕をより映えさせている。動きやすさを重視した半ズボンは、足の美しい筋肉をひけらかすかのようだ。髪は藍色で、後ろでくくっている。
総合判断。
え?誰?
「―――っ!?」
おばさんの顔をみた瞬間、頭に情報が流れ込んできた。え?え?なにこれ?これは記憶?もしかしたら元の体の記憶かもしれない。頭がグラグラして、記憶と記憶がかき混ぜられるような感覚だ。
「ちょっと?大丈夫?」
今は黙っててくれ!明らかしんどそうだろ!
数分間記憶と格闘していると、ようやく収まった。しかも最悪。どうやらここは想子村というらしい。んで、私は想子 藍。16歳。
それなりに顔がよくて、髪はきれいな藍色。元の顔に比べたらマシだ。この目の前にいるおばさんが、母親。どうやらこの村は貧民村で、今作物の育ちが悪く困っているらしい。その生活に耐えかねたもとの想子藍が神社に行って、領主のような生活がしてみたい、と願った。私みたいなやつだな。いや、だから転生できたのか?
その後家に戻った藍が熱を出してぶっ倒れて、私が移ったと。そういうことだと思う。
生活からして日本の鎌倉時代、室町時代くらいか? ヨーロッパっぽくはない。多分、日本や中国と同じ様な感じだと思う。転生物って、もっとこう華やかな魔法の世界とか、中世ヨーロッパとかじゃない?しかも貧民村って…。家の中も、竪穴式住居ですか?って感じの質素な感じ。一応床は木でできてて、めっちゃボロいキッチンらしきところもある。けど、全体的に見て今の日本の水準に比べると、最悪なんて言葉じゃ生ぬるい。
あぁ、おわった。終わり終わり。
「あんた、またあの神社に行ってたらしいじゃないか。あそこは縁起が悪いっていうから、行くのをやめろって何回も言っているじゃないか。」
知らねぇよ。元の体に言え。私はもうそいつじゃねえんだ。どこだよその神社。
「さぁ、元気になったなら、畑仕事しないかい!今農作物が採れなくて困ってんのはわかるだろ?」
うぅ…めんどくさい。
半ば無理やりに外に連れ出された。外に出たと同時に、反射的に鼻をふさいでしまった。
え?なんか異臭するんですけど。ここで作物育ててんの?食べたくな!ここにきて、食べ物、匂い、金、生活と問題が4つも出てきた。
見回すと、木や藁で作った小さな小屋がかなり並んでいる。貧しい村にはかわりないが、かなり住民は多いらしい。
すると、前から家族が歩いてきた。
「おぉ!線さんじゃない!」
ん?村の住人か?知人かもしれない。記憶を探ってみる。あぁ、いたいた。この女の人は線。線の家の子供、いま線さんの横にいる私と同い年くらいの男の子、点と藍は仲が良かったらしい。家族ぐるみで交流があり、作物を交換しているらしい。
点は少しくせっ毛の短い濃い茶髪で、顔は全体的に整っている。かっこいいというよりかは、美形と言ったほうがいいか。
すると、点が私を見るなり大声をあげた。
「おぉ!藍!神社に行けたってな!どうだった?!」
はい。こいつ嫌い。母の言動から、ここの村では神社は縁起の悪いものとしてされてる。それを大声で、しかも住人が通勤するであろう時間帯に、村の真ん中で叫ぶなんて、デリカシーが無いとか言うレベルではない。
ほら!!明らか筋肉馬鹿そうなお母さんも苦笑いで黙り込んじゃったじゃん!この空気どうしてくれんの!?
当の本人は、何かしましたか?というような顔で突っ立っている。こいつと仲良くできてた元の藍、マジ尊敬。
最後までお読みいただきありがとうございます。
点、デリカシーないとかのレベルでは無いです。次回は今回の続きです。ぜひ読んでみてください。
お手数をおかけしますが、誤字脱字等あれば教えて頂きたいです。




