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残響戦域レゾナンス  作者: 素人Knight


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第四章 VS双銃要塞⑦

 再び〈ガンダリス〉に向かって移動し始めた〈レギオン〉を誘導ミサイルが襲う。


 だがそれはもはやグレンにとって何ら脅威ではなく、ビームライフルでもって難なく撃ち落としていく。


 開けた場所に陣取る〈ガンダリス〉を、グレンが目視で捉えた。依然として、〈ガンダリス〉は移動していない。


 今いる場所が、自機の性能を最も発揮できる場所であると心得ているからだ。焦って移動してくれれば楽に倒せると考えていたグレンは、この期に及んでも冷静さを失わない彼女に感服しつつ、改めて自身が組織する派閥に欲しいと思うのであった。


 両機が相まみえる。既にミサイルを撃ち尽くした〈ガンダリス〉は、未だ潤沢に残るガトリング砲の残弾を惜しみなくばら撒いた。


 一面を覆いつくす弾丸の雨が、グレンを外しそこら中の建造物を破壊し崩壊させていく。


 ガトリング砲の弾丸が尽き、リロードの時間が生まれる。その隙にグレンは〈レギオン〉を物陰から移動させ、半ばから折れた鉄塔の上に登る。損傷した股関節が不愉快な金属音という悲鳴を上げるのを聞きながら、照準を定める。


 ロックオンシステムが瞬時にレティクルの中央に〈ガンダリス〉を据えるが、それを無視して微調整する。


 先程の無茶な使用により僅かに歪んだ銃身では、OSのロックオンシステムに従うと狙いがズレるからだ。


 その位置からビームライフルを構え、出力を上げた状態で射撃する。


「うーん、やっぱこれじゃ抜けねぇか」


 純度の高いアステリウムが作り出す力場に荷電粒子が偏向され、強固な装甲を前に弾かれた。


 試しにもう一発、さらに出力を上げて撃ってみるが結果は同じ。その手応えの無さと、自身の分析が当たっていたことをグレンは確認した。


 リロードが完成した〈ガンダリス〉が、再びガトリング砲を唸らせた。〈レギオン〉が登った鉄塔を滅茶苦茶に破壊し、高所から落下させる。


「おっとっと」


 グレンは着地の瞬間にスラスターを吹かしてその速度を減退させるが、衝撃が機体内部を激しく揺らす。


「やっぱ俺じゃなく足場を狙ったな。勝ち筋が見えたぜ、リーゼロッテ!」


 そう言って、再びグレンは操縦桿を強く握る。


 そろそろ本当に危なくなってきた〈レギオン〉のフレームに、これが最後だと無茶をさせ、〈ガンダリス〉の周囲を旋回させる。


 片手にビームライフルを持ち替え、もう一方で背中のヒートホークを抜く。


 左右のフェイントから背面へ回り、バックパックを狙って斬りかかった。


「させるかっての!」


 さすがにこれは想定していたリーゼロッテが迷いなく対応する。手動で関節のロックを解除すると、地面に固定された下半身を置いて上半身が反対側に回転した。


 ロクに機動力がない〈ガンダリス〉は、こうして背面に回られることを想定し、初めから上半身が三六〇度回転する機構を備えているのだ。


 正面から斬りかかって来る敵機へと砲門を向ける。その刹那、〈レギオン〉が急停止し、跳躍した。


「なッ!?」


 〈ガンダリス〉の上空を取り、ヒートホークを振り上げる。赤熱した刃が狙うのは、〈レギオン〉の武装で唯一破壊できる〈ガンダリス〉の頭部。平面からは肩と首回りの分厚い装甲で守られている部位だが、上空からの攻撃に対してはそうではない。


 そして何より――。


「くそ、やられた!」


 両腕のガトリング砲は、その砲門を上に向けることができないのだ。立てた襟の様な構造となっている首回りの装甲と、弾帯が収められたバックパックの設置位置等、複雑な構造故のデメリットである。


 グレンはその事実を、これまでの映像を見て予測し、かつ高所に登った自機ではなく、足場の鉄塔を撃ち崩す行為を見て確信に変えた。


 当然、射角制限という欠陥は設計段階から明らかになっており、それを補うための装備がマニュアル操作で敵を誘導できる多連装ミサイルと、あらゆる角度・射程から攻撃可能な〔浮遊する牙〕である。


 だが既にミサイルは残弾を撃ち尽くし、〔浮遊する牙〕も全て撃ち落とされた。高所からの攻撃に対処する方法は、〈ガンダリス〉には残されていない。だが。


「――舐めんなぁッ!」


 リーゼロッテとて、学年一のパイロット。このまま何もできないまま負けることは、自身のプライドが許さないと咆哮する。


 右のガトリング砲を上空へカチ上げた。肩関節が無理な可動域を強制され、フレームが軋む。ミサイルポッドの接続部分が外れ地面に落ちた。肩の装甲により、襟が歪む。


 それは先程グレンがやって見せたものと同じ芸当。自らの機体を破壊することで、規格外の可動域を生み出す荒業。


 〔浮遊する牙〕の学習さえ上回るグレンの機転を見て、リーゼロッテも再現した。


 しかし、両腕は上げられなかった。どれほど無茶をして構造を無視したところで、物理法則の壁は無視できない。


 機体のフレームを完全に変形させて想定外の姿勢を取る程のパワーは、〈ガンダリス〉には用意されていなかった。


 ガトリング砲に接続された弾帯に残る残弾は約三〇発。宙に浮いた〈レギオン〉を滅多打ちにして破壊するには十分な量である。


 絶好のカウンターを決めたと確信したリーゼロッテに対し、グレンもまた勝利を確信した。


「待ってたぜ、それをなッ!」


 初弾が発射される刹那、ヒートホークを振り下ろす軌道を変更し、露出した砲身の隙間に差し込む。


 銃身がぶれて弾が外れ、砲身の回転を止められたせいで次弾が送られず撃ち止めとなる。


「もういっちょ!」


「……え、ちょッ!?」


 さらに左腕のビームライフルを前へと突き出し、その銃口をそれより僅かに大きいガトリング砲の砲門に差し込んだ。


 〈ガンダリス〉の肩に両足で着地すると一気にトリガーを引いた。


 ガトリング砲の内部に吐き出された熱量が砲身を赤く染め上げ、溶解させる。


「俺の勝ちだ、リーゼロッテ」


 〈レギオン〉に残ったエネルギーの殆どをつぎ込み、止めの一発を放った。


 砲身を逆流するビームが〈ガンダリス〉の腕を内部から破壊する。激しい爆発を起こし、砕け散る右腕。


 最大出力のビームは右腕の破壊だけに留まらず、弾帯を遡ってバックパックに辿り着き、更なる破壊をもたらした。


 〔浮遊する牙〕のエネルギーを補充するために配備された小型ジェネレーターに引火し、爆発を起こす。


 ストラクトを揺らすほどの破裂音と衝撃。巨大な炎を生み出し、〈ガンダリス〉の右腕とバックパック、およびその周辺を滅茶苦茶に破壊した。


 異常な発熱を検知した演習場のシステムが、天井や床などあらゆる場所のスプリンクラーを作動させ、消火剤を噴出させる。


 炎が消え、再び火を起こさぬ様に冷却用の水を散布させる。熱を持った〈ガンダリス〉がシャワーを浴びる中、合成音が鳴り響いた。


『リーゼロッテ・ノクティス、脱落』




 二人の学位戦が行われている中、研究棟の傍に並び立つ倉庫の裏に身を隠す影があった。


 学園から支給されたデバイスで勝敗の行方を見届けたその少年は、制服のポケットから別のデバイスを取り出し、どこかに連絡を取った。


『どうされましたか?』


 通話相手は若い女。感情の読めない冷たい声で応えた。


「僕だ。調査の結果だが……やはり彼はあの能力を発現していた」


『そんなっ――』


 少年の言葉に、通話相手の女が言葉に詰まる。


『にわかには信じられません。ただの学生が……それは確かですか?』


「あぁ、間違いない。そうでなければ、あの動きは説明が付かない。それに、ただの学生というのなら、僕もそうだ』


『お言葉ですが、あなたはただの学生ではありません。我が組織の優秀な――』

 言いかけた女が言葉を止める。


「どうかしたか?」


『いえ、警備システムが作動しかけただけです。すでに解決いたしました』


「気を付けろ。計画がバレるようなことがあれば、組織に重大な被害が出るだろう」


『かしこまりました。それで、どうするのですか? 例の少年は』


 その問いに少年は即答する。


「スカウトする。彼は僕らの同士になり得るからな」


『あなたがそう言うのなら、従いましょう』


「何か不満か?」


『平和ボケした学生に、我々の仲間が務まるとは思えません』


 女のその言葉には、自分達の目的の崇高さや、理想の気高さに対するプライドが浮かんでいた。


「実力は申し分ない。経歴や出自を考えれば僕達の思想にも共感してくれるだろう。頭の方は、少々あれだけどね」


 少年は自らが目を付けた人物について、そう評価を下す。そこに一切の遠慮や誇張、侮りは無く、まるで学生の成績を決定する教師の様に淡々と言った。


『……そうですか』


 女はその言葉に少々の沈黙を挟む。それを無言の肯定として受け取った少年が話題を変える。


「僕の機体はどうなった?」


『既に調整が完了し、周辺宙域に輸送が完了しております。次の物資搬入と同じタイミングで、学園内部に運び込みます』


「僕も立ち会おう。アレを隠すには学園敷地に詳しい人間が必要だろう」


『かしこまりました』


 二人の通話が終了する。デバイスをポケットに入れ、少年はその場を去った。

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