22.あなたのためなら
アニミスの大群が迫る中、俺は盾を構えたまま動かない。クロウはライフルを構え、俺の横に立つ。
「君は……目の色が変わったね」
クロウの声には、どこか痛みが混じっていた。
「俺は……守りたいものを見つけただけだ」
その言葉に、クロウは小さく笑った。
「僕も……賭けてみるほかないね」
クロウの動きは鋭く、正確だった。ライフルの照準を外さず、ナイフさばきも敵に隙を与えない。俺はその背中を追いかけるだけで精一杯だった。なぜかエイイチ、あいつのことを思い出す。
施設の構造が変化する。本拠地そのものがアケドの能力のようで形を変えていく。
その瞬間、マルクの咆哮が響いた。通路の奥から、狼の光が爆ぜ、アニミスの群れをなぎ払っていく。
「ツバサさん、大丈夫ですか!」
マルクが飛び込んできた。アビリィも後に続く。
「この人は……?クロウ!?離れてください!」
アビリィは驚き、構える。
「ゲンさん、合流できましたか!アビリィ彼が協力者であり、僕の友人ですよ」
クロウは静かに答える。
「任務中ではその名で呼ばないでくれよ。それとあの時はすまなかったね」
困惑しているアビリィに俺は説明を入れる。
「クロウはスパイだったんだ。だから俺たちに襲いかかるしかなかった」
その時、壁が歪み開く。そこから泥だらけのミカイが現れる。気絶したメイを拘束して、引きずっている。
「メイは私を倒したわ。三次元に固定したからもう逃げさせないわ」
「これで全員だね。亜空間を発生させるよ」
「あんたがマルクの友人ね」
クロウがうなずき、空間を切り裂くが何も出てこない。
「強い結界が張られたようだ……アケドを倒さなければ出れないな」
アビリィは迫る大群を見つめる。
「まずいですね。私達生き残れるでしょうか……」
俺たちは五人、背中を託し合い、アニミスの大群に立ち向かう。
壁から無数に現れ、倒しても土塊となり蘇る。攻撃が透ける個体もいる。
アビリィが冷静に分析する。
「弾幕や敵の一部はホログラムです。実際の敵はそれほど多くないです」
「私の空間感知なら気配でわかるわ。全員同じ顔で気味が悪いわね」
「奴らは最初期型のデモ版アニミスですね」
五人いればなんとかなるか。
そんな希望も瞬間、潰えた。
その時、ミカイが後ろから光る球に貫かれ、倒れる。
「な……に……こいつ急に……」
「お嬢様……!」
マルクはミカイの守りに入るが敵は増える一方だ。
「弱い個体の中に強い個体が擬態しているんだ!見極める必要がある」
クロウが叫ぶが、戦況は悪化していく。
「まずいな……このままでは一人ずつやられる……!」
俺は刃を生成し、放つが透けていく。ホログラムの個体は居るだけで倒せない。光玉を防御するが、透けていく。紛らわしい。
「僕は本体、アケドを探す。マルク必ず、守り抜けよ」
クロウは一人、前へ進む。俺たちは防御に徹する。
「反撃できない。これじゃ敵が増える一方だ……」
「逃げ道はないようですね……」
「安心してください。僕が……僕がなんとかしますから……」
アビリィのバリアと俺の盾、マルクの爪でなんとか持ちこたえている。
俺たちはもうキズだらけだった。
長くはないだろうと悟っていた。
「まだ……こいつがいるわ……」
ミカイはメイの首を掴み、喉に指を突きつける。
「アケドユウシ!聞こえているでしょ!随分、自分のアニミスを甘やかしていたみたいだけど。こいつがどうなってもいいの?私は権限でウイルスをつくった。いつでもメイを消せるのよ」
人質か……追い詰められれば、そんな手しか使えなくなるのか。
だが、今の俺たちにとってはファインプレーだった。
敵の攻撃が一斉に止まった。
「お嬢様………」
マルクは何を思ったのだろう。
その表情は悲しみにくれていた。やがて、優しく、ミカイの頬に手を当てる。
「お嬢様………僕はあなたの手を汚させたくありません……けれど、それは僕の役目でもあった」
マルクは俺の肩に手を置き、力強く、訴える。
「ツバサさん、お嬢様のことをよろしくお願いします」
「お前……何する気だ?」
マルクはアビリィに目を向けた。
彼女はただ黙って下を向いた。
ミカイは心配そうにマルクを見る。
「マルク……?どうしたの?」
「お嬢様……いや……ミツハさん…………過去なんか忘れて幸せになるんですよ」
マルクは狼のオーラを解放させる。いつもの比にならないほどの強い衝撃だった。風圧に立っているのがやっとだった。
その瞬間、敵はすべて塵と化した。
彼の動きは瞬間移動のようだ。
圧倒的の域を超えている。
ただ、純粋には喜べない。
彼は理性を引き換えに力を解放する。
なぜ今まで使わなかった?
そんなことわかっている。
「ツバサさん、必ずアケドを捕まえましょう……必ず……!」
アビリィは叫ぶ。
「ああ、アビリィはミカイを守ってくれ。俺はクロウの後を追う」
「待ってツバサ!」
俺が飛び出そうとするとミカイが声をかけた。
「これを使って、みんなを助けて」
のばされたミカイの手を、優しく握ると、
俺の中に何かが流れる。
「これは……!?ありがとう必ず助けるさ」
俺は奥へと進む。砂粒が道を埋め尽くしている。マルクは敵を破壊して回っている。
砂粒は一点に集まっていく。その先にアケドがいるのか?
俺は進む。そこにはアニミスが永遠に生成され続ける部屋があった。
クロウは戦っていた。
「土塊が集まってくる。ツバサ、何かあったんだね」
俺は黙って加勢した。クロウは察したように続ける。
「マルク……か……アケドはあの中にいる。敵は湧き続けるだろう。マルクをこちらに誘導できないか?」
「あいつは……反射的に敵を狩る獣になっている……直にくるだろう」
疾風がこちらにやってくる。マルクだ。湧き続ける敵を蹴散らし始める。俺とクロウで残りを倒す。
「僕があの壁を切り裂く。ツバサ、その隙から中へ入るんだ」
クロウ目を閉じ、強いオーラを発生させる。その瞬間、居合斬りをし、割れ目ができる。俺は体をねじ込み内部に侵入する。
中は真っ暗だった。割れ目もすぐに修復される。
目の前には複数のウィンドウ。その元にはアケドが座っていた。
彼は立ち上がり、こちらを見て言った。
「君たちの様子を見ていたが、私は何を見せられているんだ?」
俺は水を生成し、金属の刃に変え、放つ。
アケドは土を生成し、金属の盾に変え防御する。
「だがな、フクチツバサ……お前と話したくなった」




