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21.何を切り捨てるか

朝日が田畑を包み込む。

空はまだ眠たげな青をしていたが、地平の向こうから差し込む光が、確かに夜の終わりを告げていた。


マルクが先頭に立ち、俺たちは静かに歩を進める。


「友人から連絡がありました。最深部で落ち合おうと」


「もう潜入に成功しているんだな」


アビリィは緊張感を持ちながらも、楽しげに言った。


「どんな方か楽しみですね……」


足音を立てぬよう、土を踏みしめるたびに、誰もが息を潜めた。


「この先に……井戸があります。そこから地下へ通じているはずです」


マルクの声は低く、力強さを感じる。


やはりここは見覚えがある。

ここはエイイチの祖父母の家の近くの再現のようだ。

共に、はしゃぎ回った日々、思い出が暖かく染みる。


ノスタルカントリー、ここのは思い出を捨てられなかった者たちの居場所。

そして、アケドユウシもまたその一人なのかもしれない。


やがて、石造りの井戸が姿を現す。

昨日、俺たちが見つけた場所だが、 空気が変わっていた。

冷たい気配が、俺たちを待っている。


「罠かもしれないわね」


「それでも行くしかないな」


俺はロープを手に取り、ゆっくりと降りていく。

続いてマルク、アビリィ、そしてミカイが後に続いた。


地下は広く。 石造りの通路が、まるで迷路のように四方へ伸びている。

壁には微かに光るラインが走り、どこか人工的な冷たさを放っていた。


「この感じ……完全に、バースの雰囲気とは別物ですね。現実の地下施設を模しています」


ミカイが壁に手を当てながら言う。


「私が空間をスキャンしていくわ。マッピングと索敵を行うのよ」


敵の気配がない。だが、油断はできない。

内部構造はまるでダンジョンのようだ。


やがて、通路の先に巨大な扉が現れた。

中央には、七曜の紋章、太陽系が円の配置で刻まれている。土星の円だけが光を放つ。


「ここが……最奥か」


ミカイが一歩前に出る。


「メイの気配は……この先。はっきりと感じるわ」


「行こう。ここで終わらせる」


俺たちは頷き合い、扉に手をかけた。


扉がゆっくりと開くと、先には中年の男が立っていた。スラッとした体型。

老いている人間を見たのは目覚めてから、始めてだった。その男はゆっくりと芯に響くような声で話す。


「フクチツバサ……生きていたのか……」


マルクが息を呑む。


「皆さん、奴がアケドユウシ、七曜の一人です」


アケドの背後には四十体近くの者たちが目を閉じ、下を向いて並んでいる。

まるで電源の落ちた機械のようだ。



ミカイは少し戸惑いながらも言う。


「おかしいわ。あいつスキャンできない」


アケドは俺に目を向け、静かに口を開く。


「お前は私と対話したいんじゃないのか……?」


話し合いの場を設けているのか?罠ならすでに攻撃を仕掛けている。


「何故だ……何故、七曜の創造者達はエイイチと共に創った世界を自ら破壊するんだ?本当に私利私欲のためなのか?」


「くだらない話だ。時間の無駄だな」


「おかしいだろ。この世界の基盤を創ったのはあんた達だ。確かに一度は世界を救った。そんな奴らが思考を放棄して、暴力で訴えるのか?死んだエイイチに報いはないのか?」


「青二才が……立場は変わっていく、それだけだ。ヒカワ……奴が本当に勝手にくたばったと思っているのか?奴の死体は誰一人として見たと言った者はいない」


「殺された……?アニミスの中枢、黒幕にか?」


「正義など立ち位置で変わる。人間は結局、見えているものがすべてなのだ」


アケドの身体が眩しく光り始める。

ミカイが飛び蹴りを放つが。アケドの身体をすり抜けて空を切る。


「なっ……!メイと同じ能力なの!?」


「いえ、奴は、ホログラムを使っているようです。そこのアケドは偽物です」


アビリィが冷静に分析していると、前方の兵士たちが一斉に目を覚ます。皆同じ顔をした少年だった。


「奴らはアニミスのようです。僕らのような電磁力バリアを使ってくるでしょう」


マルクはそう言うと。光の爪を伸ばし、狼のシルエットを纏う。


敵のアニミスはそれぞれ光の球を飛ばして攻撃する。数が多すぎるが、マルクがたった1人でなぎ倒していく。

アビリィはその援護に回っている。


俺とミカイは奥へと進む。

最奥のウィンドウを操作するアケドの姿が見えてくる。


「メイの気配が近づいくるわ。気をつけて」


ミカイが言葉を放った時、地面からメイと霊魂達が一気に現れる。


「ミツハちゃん、ちゃんと消してあげるね」


天井から銃声が鳴る。俺は瞬間的に盾を生成し防御する。


「久しぶりだね。フクチツバサ……」


その声に聞き覚えがある。白いフードの少年が地面降り立つ。顔はバクに覆われていない。中性的な顔立ちの少年だった。


「クロウ……!」


半人半アニミスの少年。二つのバースの能力を使ってくる。何処かから遠隔狙撃される可能性がある。気をつけなければ。


クロウはナイフで一気に詰め攻撃を仕掛ける。やはり速いが、今の俺ならついていけないわけではない。波乗りで距離を取り刃を放つが、動きに食らいついてくる。防御ばかりになり、反撃の余地がない。


「すごいなあ、ツバサ。この短期間でこんなに動けるようになったのか」


クロウは俺の動きを学び、首元にナイフを突きつけられる。


「その能力……生成の隙が大きいね」


俺は槍を発生させるが、寸前でかわす。


「その反射神経は素晴らしいな。自分の能力を生かしている」


このままでは負ける。何か策がなければ勝てない。大丈夫だ。クロウの対策も訓練してきた。


しかし、クロウは背を向ける。


「ツバサ、あなたを助け出すって言葉を覚えているか」


そしてクロウは全力で走り出す。

いや、アケドに向かっている。

そのまま彼を斬りつけるが彼は咄嗟に回避する。


「ゲンイチロウ、お前も……裏切るのか?」


その瞬間、銃声がした。アケドの額は撃たれる。


「ずっとこの瞬間を待っていたんだ」


アケドユウシは倒れたまま動かない。

こんなにあっけなく倒せてしまった。


「クロウ、お前はいったい……」


「僕は、アニミス側サイバートピア社のスパイをしていた。君たちに情報を提供していたのは僕だよ」


「諜報員!?マルクの言っていた友人はお前のことか」


クロウはその言葉に笑みをこぼす。

その時、アケドの身体は徐々に土塊になって消えていく。

クロウはその光景に唖然としていた。


「なんだと……!?偽物だったって言うのか?」


「倒せていない……奴はまだ何処かに潜んでいる」


基地内部が歪み、壁や床のすべてが土煙となり、数百人の人型が形成される。


「こいつら無限に湧いてくるのか!」


「撤退だね。この数は相手にできない」


クロウは、空間を斬りつけ亜空間を発生させる。


「だめだ……まだ……ミカイやアビリィ、

マルクが残っている」


「この亜空切断には制限があるんだ。今の体力が残っていなければ。使用できなくなる」


「あいつらを見捨てろっていうのか……?」


「気にしなくていい、マルクなら自分の力でこの状況を打開するだろう」


「けど、俺はあいつらを守るって決めたんだ」


クロウは少しの沈黙を経て、ゆっくりと言った。


「これは僕の教訓なんだが……何かを目的を達成したい時、必要なのは何を切り捨てるかだ」


「それが大切な人でもか?」


「ああ、七曜達は過去の友情を切り捨てた。目的のために……僕達も前に進むんだ。ツバサ……」


クロウは亜空間に半身を浸し、手を差し伸べる。

アニミスの大群がこちらへと迫る。


けれど、俺は……


「本質が間違っている。切り捨ててしまっては、何が残るんだ?」


俺は無数の敵を前に身を構える。

クロウは頭を抱え、亜空間から飛び出し、ライフルを構える。


「仕方がない……僕はあなたを……いや、あなたの権限を切り捨てることができない」


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