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1話 魔法の世界

(ここ……どこだ?)

 

 暗闇の空間。一本の光の道に俺はそこに立っていた。


 先は果てしなく続く道しかなく、他には何も無い。俺は無意識に足が動き真っ直ぐ、歩いていた。


 どのぐらい歩いているのか、ここには時間の概念無い。俺は感覚でそう感じた。

 そして――

 

 ――なんでここにいるのか。

 

 ――なんでこうなったのか。

 

 ――なんで歩いているのか。


 俺の記憶が全て朧になっていく。


「ダメだ!!」


 頭を抱える。気持ちの奥底で何かが“否定する”忘れていけない“何かを”…………。


 だが…………思い出せない。思い出せなかった。

 俺はふと後ろ振り向く。そこには俺とは逆の方向で歩く女性がいた。

 俺はその女性の方に歩みを進めようとする。

 だが、女性はこちらに振り向く、彼女の顔を見る。

 

 ――彼女は俺の姉貴だった。


 (姉貴…………なんで…………?)


 姉貴の表情は悲しい表情をしていた。そして、俺にこう言った。


「こないで…………」



 [神歴 1999.3.3]



「――ッ!?」


 俺は目を覚ました。

 目覚めた場所は薄暗い部屋の真ん中、ベッド?みたいところにいた。

 そして体を起こす。

 

「俺は確か…………そうだ!!…………。

 俺、公園で女の子を助けた…………はず、だけど…………」


 周りを見渡すが人一人もいない。


「なんだ…………ここ……病院?…………。

 …………服、制服のままだけど…………」


 色々、疑問だらけだがまず、ベッド?から降りて立とうとする。


「――うぁっ!?」


 足に力が入らない…………まともに立つことすら難しいくらいに筋力が落ちた感覚だ。


「事故の後遺症か? でも……ここにいても不気味だし行くしかないか…………」


 俺は壁を支えにしてゆっくりと歩き、部屋を後にする。


「俺が寝ていたベッド、ベッドじゃなくて棺桶の形になってたけど…………俺死んだ扱いになってんのか?」


 そう思いながら、暗闇の廊下を歩き進める。


 しばらく歩いているうちに足の感覚を取り戻し、普通に走れるくらいには治ってきた。

 だが、歩いても歩いても、まだ誰一人、人と会っていない。


「なんで…………誰もいないんだ?…………本当に、ここはどこなんだ?」


 暗闇に慣れると廊下の壁や床のひび割れがあり、空気は埃っぽい、何ヶ月以上人の人がいた気配がない。しかも、廊下は迷路のように入り込んでいる。


「…………まじでここ、どこなんだよ、病院じゃないのかよ!!」


 次第に苛立ちをしかけたとき…………。


――クシャッ


 廊下の先の突き当たりからなんらかの物音が聞こえた。


(……なんか、いる?)


 俺は恐る恐るゆっくり近づき、そっと覗き込む。


 ……クシャッ……クシャッ……クシャッ


(――ッ!?)

 そこには巨大蜘蛛が同類の蜘蛛を共食いしていた。


(な、なんだ!!? この馬鹿でかい蜘蛛は!!?)


 俺は一歩下がろっとした。そのとき…………。


 ――パキッ!!


「――ッ!?」


 後ろに下がろうとした際、足元に食い散らかされた、蜘蛛の足を踏みつけてしまった。


 シャァルルルル…………。


 蜘蛛は俺に気がつき…………。


 シャァッ――!!


 俺に襲いかかってきた。


「うぁあああ――!!」


 全速力で逃げる。迷路のような廊下を走り続ける。


「俺なんか食ったて上手くね――よぉ!!!」


 シャァッ――!!


 しかし、走るのも束の間、今、走っている廊下の先は、行き止まりである。


(終わった…………)


 シャァッ――!!


 行き止まりのため足が止まる。だが、蜘蛛は同じ速度のまま、突っ込んでくる勢いで迫って来る!!


「何か!!何か!!何か!!」


 必死に何かないか考えるが蜘蛛の足は振り下ろし俺を突き刺そうとする。


(し、死ぬ!!!)


 死を覚悟した瞬間――。


「伏せて!!」


 女性の声と共に蜘蛛の全身が突然、炎に包まれる。


「な、なんなんだ…………これ」


 腰が抜け、尻餅ついた俺は、ただ茫然と燃え尽きる蜘蛛を見ていた。

 そして、灰になった蜘蛛の奥から二人の男女が現れる。


「君? 大丈夫、何処から来たの?」


「俺たち以外に遺跡の調査なんて、クエストに書いてないけど…………」


 女の子が俺に近づく。


「本当に大丈夫? 私の言っていること理解できる?」


「…………え?」


 唖然としていた俺はすぐさま、正気に戻り冷静に今の状況を見る。すると――。


「あれ?…………『梨沙』?…………」


「『リサ?』…………違うよ、私は『リナ』。

 …………っで、こっちがお兄ちゃんの『レオ』」


「立てるか?」


 レオは手を差し伸ばしてくれ、俺はその手に掴まり立ち上がる。だが、リナのこの顔立ちは、どこから見ても『梨沙』の顔立ちまんまだった。


「君の名前はなって言うの?」


 リナが名前を追求する。


「つ、ツキガミ アラタ…………」


「アラタか…………良い名前だね!」


「二人ともさっきの攻撃で、“魔素感知”の乱れが変わった。

 もうすぐ、ここに多くのモンスターがやって来る。話は歩きながらで行くぞ」


「うん、わかった…………アラタもついてきてね」


「……あ、ああ……」


 こうして、俺たちはこの建物を出るため出口に向かう。そして……道中、俺は二人に質問されていた。


「アラタ、お前は通してこの遺跡の中にいるんだ……ここの入り口に防御結界を俺らが入ってから張ったから後からこの遺跡に入れないはずだけど…………」


「……わからない、俺もなんで、ここにいるのかわかんないんだ…………」


 次にリナが質問する。


「じゃあ、アラタは出身なの?」


「出身は、『ニホン』だけど…………」


 二人はなんとも言えない表情で首を傾げる。


「に、ニホン…………どこその“村”…………お兄ちゃん、聞いたことある?」


「ない…………そんな“村”聞いたことないな…………」


「…………村じゃあ……ないんだけど」


 少し、冷静になって考えてみる。今二人の格好はいわゆるファンタジー世界の服のイメージに近い、だとするなら、俺は異世界に来たのか、単なるドッキリかそのどちらかだ。

 

(いや、さっきの蜘蛛はなんて、説明するんだ!)

(それにさっきどうやって攻撃したんだ)


「なぁ…………さっきの蜘蛛何で燃やしたんだ?」


 蜘蛛をどうやって倒したのか聞いてみる。


「え……? 魔法だけどどうして?」


 リナが当たり前のように答える。


「魔法ッ!?」


「そんなに驚くこと?」


「もしかして魔法もわからない感じ…………?」


 俺は頷き、二人はまた、なんとも言えない表情をする。


「ま、まあ……とりあえず二人と出口が見えて来たぞ!」

 レオの指さすところを見る。

「まず……『カリタス王国』に戻るぞ、そこで一度ギルドに報告する」


 こうして、俺は二人について行き、カリタス王国へ向かうこととなった。

 多分、ここから俺の人生が始まるって感じがした。俺の異世界冒険が今一歩踏み出す。

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