第2章 第2話 - 旅館での夜
美術館見学を終えて、俺たちは旅館に到着した。立派な和風旅館で、温泉もあるらしい。
「わあ、素敵な旅館ね」
雫が感激してる。
「部屋割りを発表します」
先生が紙を読み上げ始めた。
「男子は5部屋に分かれます。1号室:山田、高橋、中村、2号室:鈴木、伊藤、加藤、渡辺...」
俺は翔ちゃん、圭吾と同じ部屋になった。
「女子も5部屋です。A号室:水野、佐藤恵、金井、白川。B号室:松本、白木、岬、斎藤...」
雫、恵ちゃん、美香ちゃん、麗華ちゃんが同じ部屋。雪ちゃんは、松本ちゃん、未来ちゃん、斎藤ちゃんと同じ部屋だった。
「なお、田崎は諸事情により、私と同じ部屋になります」
(田崎、先生と一緒かよ...可哀想に)
「それでは、各部屋で荷物を置いて、夕食まで自由時間です」
俺たちは1号室に向かった。8畳の和室で、布団が3つ敷いてある。
「いい部屋だな」
翔ちゃんが荷物を置きながら言った。
「温泉楽しみだぜ〜」
圭吾がワクワクしてる。そして早速浴衣に着替えようとして、帯の結び方が分からず格闘してる。
俺も荷物を置いて、少し休憩してた時だった。
コンコンコン
ドアがノックされた。
「はーい」
圭吾がドアを開けると、雫たちがいた。
「お疲れさま〜」
「あ、雫たち。どうしたの?」
俺が聞くと、雫がニヤニヤしながら言った。
「麗華ちゃんがすごいものを持ってきてるのよ」
「すごいもの?」
「ちょっと来てみて」
俺たちは雫たちについて、B号室に向かった。
ドアを開けると...
「うわああああああ!」
俺たちは声を上げた。
部屋の中央に、でっかいモニターが設置されてて、最新のゲーム機が接続されてる。しかも複数台。まるで秋葉原の電気街みたいだ。
「これ、何?」
「PlayStation 5に、Xbox Series X、Nintendo Switch、それからゲーミングPC...」
翔ちゃんが呆然としてる。
「麗華ちゃんが持参したの」
恵ちゃんが説明してくれた。
「え?麗華ちゃんが?」
俺が驚いてると、麗華ちゃんが恥ずかしそうに現れた。
「あの...みんなで楽しめるかと思いまして」
「これ全部持ってきたの?」
「はい...荷物が多くて大変でしたけど」
(お嬢様パワーすげぇ...運送業者も驚いただろうな)
「でも、こんなに持ち込んで大丈夫なの?」
「事前に許可を取りました。『教育的なゲームです』って」
麗華ちゃんがニコッと微笑んだ。
(どこが教育的なんだ...ゲームは脳トレとか言ったのかな)
「よっしゃー!ゲーム大会だ!」
圭吾が興奮してる。浴衣の帯がほどけそうになってるのに気づいてない。
「でも、女子も一緒にできるの?」
美香ちゃんが心配そうに聞いた。
「もちろんですわ。みんなで楽しみましょう」
麗華ちゃんが優雅に言った。
「何のゲームがあるの?」
雫が興味深そうに聞いた。
「格闘ゲーム、レーシングゲーム、パーティーゲーム、RPG...」
麗華ちゃんがゲームソフトの山を見せてくれた。ダンボール箱3個分くらいある。
「うわ、最新のゲームばっかり」
「全部買ったんですか?」
「お兄様と一緒に集めました」
(麗華ちゃんのお兄さん、マジでハイスペックだな...年収いくらだよ)
「じゃあ、まずはみんなでできるパーティーゲームから?」
雪ちゃんが提案した。
「いいね!」
みんなが賛成して、ゲーム大会が始まった。
最初は『マリオパーティ』。8人まで参加できるから、全員でプレイ。
「わあ、懐かしい〜」
雫が喜んでる。
「私、これ得意なの」
美香ちゃんが自信満々。
「負けないぞ〜」
圭吾が闘志を燃やしてる。
ゲームが始まると、みんな真剣そのもの。特に意外だったのは...
「麗華ちゃん、めちゃくちゃうまいじゃん!」
「お兄様に鍛えられましたから」
麗華ちゃんがサラッと答えながら、完璧なプレイを見せてる。コントローラーを握る手つきがプロ級だ。
「うそでしょ...」
圭吾が撃沈してる。
「雪ちゃんも意外とうまいね」
「あ、あの...実は好きなんです」
雪ちゃんが照れながら言った。
(清楚キャラなのにゲーマーって、ギャップ萌えだな...)
1時間ほどプレイして、結果発表。
「1位:麗華、2位:雪、3位:美香...」
「俺、最下位かよ...」
圭吾がガックリしてる。浴衣の帯が完全にほどけてしまった。
「次は格闘ゲームやろうぜ」
翔ちゃんが提案した。
「『ストリートファイター』がありますわ」
麗華ちゃんがソフトを取り出した。
「格闘ゲームは男の勝負だ!」
圭吾が復活してきた。浴衣の帯をしっかり結び直してやる気満々だ。
でも、結果は...
「麗華ちゃん、強すぎる...」
また麗華ちゃんの圧勝だった。しかもパーフェクト勝利。
「お兄様とよく対戦してましたから」
(麗華ちゃんのお兄さん、どんだけゲーム好きなんだ...まさかプロゲーマーとか?)
「私たちは観戦してる方が楽しいかも」
雫が笑ってる。
「そうですね。男子の必死さが面白いです」
恵ちゃんがからかってる。
「うるさいよ〜」
圭吾が恥ずかしがってる。また浴衣の帯がほどけそうになってる。
「けーちゃんも頑張って」
雫が俺を応援してくれる。
「おう!」
俺も気合いを入れて、コントローラーを握った。
でも、やっぱり麗華ちゃんには勝てなかった。
「麗華ちゃん、本当にうまいね」
「ありがとうございます。でも、みんなと一緒だと楽しいです」
麗華ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「普段は一人でプレイすることが多いので」
「え、お兄さんとは?」
「お兄様は大学生で忙しくて、最近はあまり一緒にできないんです」
麗華ちゃんが少し寂しそうに言った。
(そうか、だからみんなでゲームできるのが嬉しいのか)
「今度、俺の家でもゲームしない?」
俺が提案すると、麗華ちゃんの顔がパッと明るくなった。
「本当ですか?」
「うん。俺のゲーム機は古いけど...」
「大丈夫です。一緒にプレイできれば何でも」
麗華ちゃんが嬉しそうに答えた。
(麗華ちゃんって、思ってたより人懐っこいんだな)
「私も混ぜて」
雫が手を上げた。
「俺も俺も」
圭吾と翔ちゃんも参加表明。
「みんなでゲーム会いいね」
美香ちゃんも賛成してくれた。
「それじゃあ、今度の休みに俺の家で」
「やったー!」
みんなが喜んでくれた。
ゲーム大会が一段落して、夕食の時間になった。
「いったん部屋に戻って、食堂に集合しましょう」
雪ちゃんが時計を見ながら言った。
「麗華ちゃん、ゲーム機ありがとう」
俺がお礼を言うと、麗華ちゃんが照れた。
「どういたしまして。みんなに喜んでもらえて良かったです」
「でも、これ片付けるの大変そう」
「大丈夫ですわ。夜にまたプレイしますから」
(夜にまた?)
「夕食後にも続きやるの?」
「はい。温泉の後に、夜のゲーム大会を」
麗華ちゃんがニヤッと笑った。
(この人、完全にゲーマーモードだ...)
夕食は和食のコース料理だった。みんなで大きなテーブルを囲んで食べる。
「美味しいね」
雫が満足そうに食べてる。
「温泉も楽しみ」
美香ちゃんがワクワクしてる。
「男子は先に入る?」
翔ちゃんが聞いた。
「女子が先でいいよ」
俺が言うと、雫たちが喜んだ。
「ありがとう、けーちゃん」
「じゃあ、私たち先に行くね」
女子たちは温泉に向かった。
「俺たちは部屋で待機か」
「麗華ちゃんのゲーム機、借りちゃう?」
圭吾が提案した。
「勝手に使って大丈夫かな」
「大丈夫だって。麗華ちゃん優しいし」
結局、俺たちは男子だけでゲームを続けた。
「麗華ちゃん、本当にすげぇよな」
圭吾が感心してる。
「あんなにゲームうまいとは思わなかった」
翔ちゃんも驚いてる。
「でも、楽しそうだったよね」
俺が言うと、二人も頷いた。
「普段、一人でゲームしてるのかと思うと、ちょっと可哀想」
「だから、みんなでプレイできて嬉しかったんだろうな」
(麗華ちゃんの意外な一面を見れた気がする)
30分ほどして、女子たちが温泉から戻ってきた。
「お疲れさま〜」
「気持ちよかった〜」
みんなリラックスした顔をしてる。
「じゃあ、俺たちも行ってくる」
「はーい、ゆっくり入ってきて」
俺たちは温泉に向かった。
温泉は広くて、露天風呂もあった。俺たちは体を洗ってから湯船に入った。
「あー、気持ちいい」
圭吾が大きなため息をついた。
「やっぱり温泉はいいな」
翔ちゃんもリラックスしてる。
その時、翔ちゃんと圭吾が俺の下半身に視線を向けて、急に黙り込んだ。
「...」
「...」
二人とも何も言わない。まるで珍しい動物を見てるみたいな顔だ。
「どうしたの?」
俺が聞くと、圭吾がボソッと言った。
「けーちゃん...それ、デカすぎない?」
「え?」
「いや、マジで...」
翔ちゃんも困惑してる。
「俺たちと全然違うじゃん。規格外だよ」
「そ、そうかな?」
俺は自分では普通だと思ってたんだけど。
「普通じゃないって。絶対。これは...これは...」
圭吾が言葉を失ってる。
「それで童貞って、もったいなさすぎる...」
「そんなこと言われても...」
俺は恥ずかしくなって、深く湯船に浸かった。
「というか、女の子に見せたら絶対驚くぞ。失神するかも」
翔ちゃんが真剣な顔で言った。
「え?」
「雫ちゃんとか、きっとビックリする。『うわああああ!』って」
「そんなこと考えたくない!」
俺の顔が真っ赤になった。
「でも、逆に自信持てよ」
圭吾がポンと俺の肩を叩いた。
「男として立派じゃん。むしろ武器だよ、武器」
「そういう問題じゃない...」
「ところで、けーちゃん」
圭吾が話題を変えた。
「雫ちゃんとの関係、どうなってるんだ?」
「関係って...」
「今日、バスでもずっと一緒だったし、キーホルダーもプレゼントしてたじゃん」
翔ちゃんも興味深そうに聞いてくる。
「あれは...友達として」
「友達としてキーホルダーをプレゼント?」
「うん...」
俺は曖昧に答えた。
「けーちゃん、素直になれよ」
圭吾がニヤニヤしてる。
「雫ちゃんのこと、好きなんだろ?」
(バレてるのか...)
「まあ...そうかもしれない」
俺が正直に言うと、二人がニヤッと笑った。
「やっぱりな」
「で、どうするんだ?」
「どうするって...」
「告白とかさ」
翔ちゃんが言った瞬間、俺の心臓がドキッとした。
「こ、告白?」
「だって、このままじゃ進展しないでしょ」
「でも、俺なんかが雫を...」
「また始まった」
圭吾が呆れた。
「けーちゃんの自己評価の低さは病気レベルだって」
「でも...」
「いいから、今度の旅行中に何かアクション起こせよ」
翔ちゃんが背中を押してくれる。
「明日もあるし、チャンスはあるだろ」
「そうだな...」
俺は少し考え込んだ。確かに、この旅行は雫との距離を縮めるチャンスかもしれない。
「よし、頑張ってみる」
「その意気だ!」
二人が俺の肩を叩いてくれた。
温泉から戻ると、女子たちがまたB号室に集まってた。
「お疲れさま〜」
「今度は夜のゲーム大会よ」
雫が俺たちを迎えてくれた。
「何のゲームやるの?」
「ホラーゲームをみんなでプレイしない?」
麗華ちゃんが提案した。
「ホラーゲーム?」
「はい。『バイオハザード』の最新作がありますの」
(ホラーゲーム...これは女子が怖がって距離が縮まるチャンス?)
「いいね、やろう」
俺が賛成すると、美香ちゃんが不安そうな顔をした。
「私、怖いの苦手...」
「大丈夫、みんなでプレイするから」
雫が励ましてくれる。
「でも、一人でプレイするより怖くない?」
雪ちゃんも心配そう。
「交代でプレイしましょう」
麗華ちゃんが提案した。
「怖くなったら代わってもらえばいいですし」
ホラーゲームが始まると、案の定みんな大騒ぎだった。
「きゃー!」
美香ちゃんが俺の腕にしがみついてきた。
(うわ、美香ちゃん柔らかい...でも圭吾の嫉妬の視線が痛い)
「こ、怖い...」
雪ちゃんも震えてる。
でも、意外だったのは...
「あら、ゾンビの動きが遅いですわね。もっと俊敏に動けばいいのに」
麗華ちゃんが冷静にプレイしてる。まるでゾンビに改善提案してるみたいだ。
「麗華ちゃん、ホラー平気なの?」
「お兄様と一緒にたくさんプレイしましたから」
(この人、どんなジャンルでも強いのか...ゲーム界の女王だな)
「雫も意外と平気だね」
「本でホラー小説とか読むから、慣れてるかも」
雫は冷静にゲームを見てる。
「恵ちゃんは?」
「ゲームより現実の方が怖いわよ。男子の下ネタとか」
恵ちゃんがサラッと言った。
(現実って...そっちかよ)
結局、ホラーゲームは麗華ちゃんの無双状態で、あっさりクリアしてしまった。ゾンビより強いお嬢様だった。
「麗華ちゃん、すごすぎる」
「ありがとうございます」
時計を見ると、もう夜の10時を過ぎてた。
「そろそろ解散しようか」
翔ちゃんが提案した。
「明日も早いしね」
「お疲れさまでした」
麗華ちゃんがお辞儀した。
「麗華ちゃん、今日はありがとう」
俺がお礼を言うと、麗華ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「こちらこそ。みんなと一緒にプレイできて楽しかったです」
「また明日もゲームできる?」
美香ちゃんが聞いた。
「もちろんですわ。でも、明日は観光もありますから」
「楽しみ〜」
みんなが部屋に戻って、今日は終わり。
俺は布団に横になりながら、今日の出来事を振り返った。
・麗華ちゃんのゲーム機持参(秋葉原レベル)
・みんなでのゲーム大会(圭吾の惨敗)
・麗華ちゃんの意外なゲーマーぶり(ゲーム界の女王)
・温泉での男同士の相談(俺の下半身問題)
・ホラーゲームでの美香ちゃんとの密着(圭吾の嫉妬)
(麗華ちゃんって、思ってたより親しみやすいんだな。ゲーム強すぎるけど)
そして、翔ちゃんと圭吾の言葉を思い出す。
「今度の旅行中に何かアクション起こせよ」
(明日は観光もある。雫との距離を縮めるチャンス...でも下半身問題はどうしよう)
俺は決意を新たに、眠りについた。隣で圭吾が浴衣の帯と格闘してる音が聞こえてくる。