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第2章 第5話 - 研修旅行後の関係

 研修旅行から戻って最初の月曜日。俺は学校の廊下を歩きながら、なんだかソワソワしていた。


(先週の研修旅行のあのことを、みんな覚えてるのかな...)


 教室に入ると、いつものメンバーが集まってる。でも、何か空気が違う。


「おはよう」


 俺が挨拶すると、雫が顔を赤くして俯いてしまった。


「あ、おはよう...けーちゃん」


(やっぱり、研修旅行のこと覚えてるんだ...)


 俺も恥ずかしくなって、自分の席に座った。


 一方で、翔ちゃんと恵ちゃんは堂々と並んで座ってる。


「おはよう〜」


 恵ちゃんが満足そうに挨拶した。


「よう」


 翔ちゃんも余裕の表情だ。


(この二人、完全にカップルモードじゃん)


 美香ちゃんはその様子を見て、明らかに元気がない。


「美香ちゃん、おはよう」


 俺が声をかけると、美香ちゃんが無理に笑顔を作った。


「おはよう、けーちゃん...」


 声のトーンが普段と全然違う。


(やっぱり翔ちゃんのことで落ち込んでるのか)


 そんな時、麗華ちゃんと雪ちゃんがやってきた。


「おはようございます」


 麗華ちゃんが上品に挨拶した。


「おはようございます」


 雪ちゃんも続いて挨拶したけど、なんだか二人の間に妙な連帯感がある。


「麗華ちゃん、雪ちゃん、おはよう」


「先週はお疲れさまでした」


 麗華ちゃんがニッコリ笑った。


「楽しかったですね」


 雪ちゃんも嬉しそう。


(この二人、すっかり仲良くなったな)


 圭吾がやってきて、俺の肩を叩いた。


「けーちゃん、先週はお疲れ〜」


「圭吾も...」


「いやー、麗華ちゃんと雪ちゃん、マジで酒強いな」


 圭吾が感心してる。


「日本酒、美味しかったです」


 雪ちゃんが満足そうに言った。


「今度、もっと美味しい日本酒を持参しますわ」


 麗華ちゃんまで言い出した。


(この三人、酒仲間になってる...)


「で、けーちゃん」


 圭吾がニヤニヤしながら俺を見た。


「先週は良かったな〜」


「うるさいよ」


 俺は慌てて圭吾の口を塞いだ。


 雫が耳を赤くして俯いてる。


(やめてくれ、圭吾...)


 昼休みになって、俺たちはいつものように屋上に集まった。


 でも、なんだか微妙な空気が流れてる。


 翔ちゃんと恵ちゃんは自然にくっついて座ってるし、美香ちゃんは一人で弁当を食べてる。


「美香ちゃん、一緒に食べよう」


 雫が美香ちゃんに声をかけた。


「ありがとう、雫ちゃん」


 美香ちゃんが少しだけ笑顔になった。


 一方で、麗華ちゃん、雪ちゃん、圭吾は何やら酒の話で盛り上がってる。


「この前飲んだ純米吟醸、美味しかったですわね」


「ええ、さっぱりしてて飲みやすかったです」


「俺はもうちょっと濃い味が好みだな」


(昼休みに酒の話って...)


 俺は雫の隣に座ろうかと思ったけど、なんだか気まずくて少し離れた場所に座った。


「けーちゃん、こっちおいで」


 雫が俺を呼んだ。


「あ、うん」


 俺が雫の隣に座ると、雫が小声で言った。


「先週のこと...覚えてる?」


「え、あの...」


 俺の顔が真っ赤になった。


「私、酔っぱらってて...何か変なことしなかった?」


 雫も顔を赤くしながら聞いてきた。


「そんなことないよ。雫はちゃんとしてた」


「本当?」


「うん」


(雫、先週のこと全部覚えてるのかな...)


「けーちゃんも、温かくて気持ちよかった...」


 雫が小声で言った。


 俺の心臓がドキッとした。


「そ、そうかな」


「うん。ありがとう」


 雫が俺を見つめて微笑んだ。


(この距離感、どうすればいいんだ...)


 その時、圭吾が大声を上げた。


「おお、翔と恵、ついに公式カップルか!」


 翔ちゃんが苦笑いしてる。


「まあ、そんなところかな」


「いいじゃない、堂々としてて」


 恵ちゃんが翔ちゃんの腕に抱きついた。


 美香ちゃんがその様子を見て、さらに落ち込んだ顔をした。


「美香ちゃん...」


 雫が心配そうに美香ちゃんを見た。


「大丈夫よ。翔くんには幸せになってもらいたいから」


 美香ちゃんが無理に笑顔を作った。


(美香ちゃん、健気だな...)


「ところで、けーちゃんと雫はどうなの?」


 圭吾がまた余計なことを言い出した。


「え?」


 俺と雫が同時に驚いた。


「先週、仲良く寝てたじゃん」


「圭吾!」


 俺が慌てて止めようとしたけど、遅かった。


 雫の顔が真っ赤になってる。


「そ、そんなんじゃないよ」


「でも、お似合いだと思うけどな」


 雪ちゃんが意外なことを言った。


「雪ちゃんまで...」


「けーちゃんと雫ちゃん、いつも一緒にいるし」


 美香ちゃんまで言い出した。


「私たちは友達だから」


 雫が慌てて否定した。


「友達以上恋人未満ってやつ?」


 恵ちゃんがからかってきた。


「そんなんじゃない!」


 雫が立ち上がった。


「雫...」


 俺が心配になって声をかけると、雫が俺を見た。


「けーちゃんは、私のことどう思ってるの?」


 突然の質問に、俺は言葉に詰まった。


「え、あの...」


「友達?それとも...」


 雫が俺を見つめてる。


 みんなも俺たちを見てる。


(どう答えればいいんだ...)


「俺は...雫のこと...」


 俺が言いかけた時、チャイムが鳴った。


「あ、授業だ」


 雫が急いで教室に戻っていった。


「けーちゃん、チャンス逃したな」


 圭吾がニヤニヤしてる。


「うるさいよ」


 俺も慌てて教室に戻った。


 放課後、俺は一人で悩んでいた。


(雫との関係、どうすればいいんだろう)


 研修旅行で距離は縮まったけど、逆にぎこちなくなってしまった。


「けーちゃん」


 振り返ると、美香ちゃんがいた。


「美香ちゃん、お疲れさま」


「ちょっと話さない?いつものカフェに行こう」


 美香ちゃんが俺を誘った。


 俺たちはいつものカフェに向かった。


 カフェに入ると、いつものウェイトレスさんが俺たちを見つけて笑顔で近づいてきた。


「あら、今日は二人なのね。いらっしゃいませ」


「今日もよろしくお願いします」


 俺が挨拶すると、美香ちゃんがメニューを見ながら言った。


「ドデカパフェください」


「ドデカパフェですね。お飲み物は?」


「アイスコーヒーで」


「かしこまりました。山田くんは?」


「俺はホットコーヒーで」


 ウェイトレスさんが注文を取って去った後、俺が美香ちゃんを見た。


「ドデカパフェ?一人で食べるの?」


「やけ食いしたい気分なの」


 美香ちゃんが苦笑いしながら答えた。


「美香ちゃん、大丈夫?翔ちゃんのこと...」


「あ、バレてた?」


 美香ちゃんが苦笑いした。


「なんとなく...」


「翔くんのこと、ちょっと気になってたの。でも、恵ちゃんと付き合うことになって」


 美香ちゃんが寂しそうに言った。


「失恋って、こんなに切ないんだね」


「美香ちゃん...」


「でも、翔くんが幸せそうだから、それでいいの」


 美香ちゃんが俺を見た。


「ところで、けーちゃん」


 美香ちゃんが急にニヤッと笑った。


「夜中に...もんだよね?」


「え?何を?」


 俺が困惑すると、美香ちゃんがクスクス笑った。


「私の手を。寝ぼけて握ったりもんだりしてたの」


「え、ええええ?」


 俺の顔が真っ赤になった。


「覚えてないでしょ?酔っぱらってたから」


「ご、ごめん!」


「大丈夫よ。可愛かった」


 美香ちゃんがからかうように言った。


「それより、けーちゃんは雫ちゃんのこと、どう思ってるの?」


「え?」


「今日の昼休み、雫ちゃんがけーちゃんに聞いてたでしょ」


「ああ...」


「雫ちゃん、けーちゃんのこと好きだと思うよ」


 美香ちゃんがニッコリ笑った。


「そうかな?」


「女の子の勘だけど、間違いない」


「でも、俺なんかが雫を...」


「また始まった」


 美香ちゃんが呆れた。


「けーちゃんって、自分に自信なさすぎ」


「だって...」


「雫ちゃんと一緒にいる時のけーちゃん、すごく楽しそうなの」


 美香ちゃんが俺を見つめた。


「本当に?」


「うん。だから、素直になったら?」


 美香ちゃんの言葉が胸に響いた。


 その時、ドデカパフェが運ばれてきた。


「お待たせしました、ドデカパフェです」


 ウェイトレスさんがテーブルに巨大なパフェを置いた。


「あ、お会計は俺が出すよ」


 俺が言うと、美香ちゃんが驚いた。


「え?いいよ、自分で払う」


「いや、美香ちゃんが落ち込んでるから、せめて奢らせて」


 俺が言うと、ウェイトレスさんが急に冷たい目で俺を見た。


「...かしこまりました」


 ウェイトレスさんが去っていく後ろ姿が、なんだか不機嫌そうだった。


(え?何で怒ってるんだ?)


「美香ちゃん、ありがとう」


「私は失恋しちゃったけど、けーちゃんには幸せになってほしいの」


 美香ちゃんが微笑んだ。


(美香ちゃん、本当にいい子だな)


 家に帰る途中、俺は美香ちゃんの言葉を思い出していた。


「素直になったら?」


(そうだよな。このままじゃ何も変わらない)


 でも、雫にどう気持ちを伝えればいいのか分からない。


 アパートに着いて、俺は研修旅行の写真を見返してみた。


 雫と一緒に撮った写真を見ると、確かに俺は楽しそうに笑ってる。


(俺、雫といる時が一番自然でいられるんだな)


 その時、スマホが鳴った。


 雫からメッセージだった。


「けーちゃん、今日はごめんね。変なこと聞いちゃって」


 俺は返事を考えた。


「大丈夫だよ。俺こそ、うまく答えられなくてごめん」


 すぐに返事が来た。


「今度、二人でゆっくり話さない?」


 俺の心臓がドキッとした。


「うん、いいよ」


「ありがとう。楽しみにしてる♪」


(雫から誘ってくれるなんて...)


 俺は嬉しくなって、思わずガッツポーズをした。


(明日からまた頑張ろう)


 研修旅行が終わって、みんなの関係は確実に変わった。


 翔ちゃんと恵ちゃんはカップルになり、美香ちゃんは失恋し、麗華ちゃんと雪ちゃんは酒仲間になった。


 そして、俺と雫は...


(まだ分からないけど、きっと何かが変わる)


 俺は希望を抱きながら、その夜は眠りについた。

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