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前話の件で訂正
国交省→建設省
国交省は2003年に運輸省と建設省、北海道開発庁が合併して設立
「建設省の判断が下りました」
五十嵐からそう伝えられる
自分らが持っている地図と照らし合わせ、まだこの時代にない道は無理やり書いてるわけだが、問題ないようで
異変の起きた例のドライブインの手前まで進んでみることになった
当日
道路は封鎖され、自衛隊車両を先頭に、後ろからLAV、10式と続いていく
五十嵐は一番前にあるジープに乗って、後ろの車両を眺めていた
未来の戦車の形を目に焼き付けて置かなければ!
洗練されたその砲塔は、いつまでも見ていられるものであった
「松本隊長、もうすぐです」
後部座席の阿部隊員がそう言う
すると、途中で寄ったドライブインが見えてくる
「もうすぐだな」
早くこの時代からおさらばしたい
そう思いながら道を走っていく
ドライブインから10分以上経っただろうか
もう美唄市街地に入った
先頭を走っていたジープが路肩に止まる
それに合わせてみんな止まっていく
五十嵐が出てきて、松本に言う
「残念ながらここまでです・・・」
「ありがとうございます」
「この後はこの先でUターンして、滝川駐屯地に戻ります」
「了解しました」
それを聞いて阿部は意気消沈する
「も、もうゲームが出来ない・・・」
「そう項垂れるなよ阿部、楽しいことがあるかもしれんぞ」
運転していた隊員が阿部をなだめる
「もしかして74式戦車の開発に携わったり・・・」
「かもな」
1人で喜んでいる阿部をしり目に、松本が今後について考える
滝川駐屯地に戻った一行は、五十嵐から次の目的地を伝えられる
「松本隊長」
「はい」
「今回の件は残念です」
「いえ、協力していただきありがとうございました」
「感謝されるほどではないですよ、これから皆さんは東千歳駐屯地に向かってもらいます」
「東千歳駐屯地ですか」
「はい。 防衛庁技術研究本部の試験場や第7師団の司令部ですから安全かと」
「 防衛庁技術研究本部ということは我々に戦車開発を?」
「えぇ、有事の際には活躍してもらわないといけませんし、それ以外にも弾薬などを量産して継続的に使えるようにしたいですから」
「まったく問題ありません」
しかし、移動するにあたって問題があった
かなりの都市規模を誇る札幌近郊を通るにあたって、情報保護の観点から、何らかの工夫が必要である
この時代にトレーラーは無いし、シートで囲っても運転が出来ないのだ
「移動方法ですが、ちょうど第10戦車大隊が滋賀の方へと配置換えになります」
「それを利用して?」
「えぇ、車両には草などを張り付けて完全に見えないようにし、夜間に移動します」
「偽装の草は?」
「こちらで確保しますのでご安心ください」
■
アメリカ合衆国・某所
「日本支局からの情報が」
「なんだ、共産関係か?」
「いや、軍事関係だそうだ」
「軍事関係?」
男は送られてきたファイルを覗く
「は?」
彼から出た言葉はそれだけだった
ファイルを見ると、それを返す
「中身は?」
「ありえん。日本支局は狂ったのか?」
そう言ってファイルを渡した男も中を見る
「なんだこれは。からかっているのか?」
男はじっくりとファイルを見ていく
「情報筋は政府協力者か・・・」
「未来の戦車2両ってね・・・」
「これは上に伝えるべきか?」
「だが、ここで止めるわけにはいかんだろ」
「そうだよな」
ソビエト連邦・某所
「この件の裏どりは?」
「いえ、この後札幌にある軍事施設に移動するそうなので、そこで確認する可能性が」
「しっかりと裏がとれてから上に報告する」
「はっ」
滝川駐屯地に着くと、隊員らは本格的に移動の準備を整えていく
「小銃が個人用の14丁と、予備の4丁、戦車とMCVに1丁ずつで20丁か」
「えぇ」
木村が小銃を丁寧に並べていく
「拳銃が14人分のみ、MINIMI軽機関銃がLAVに1丁、トラックに4丁で合計5丁」
「手りゅう弾が25発です」
「戦車弾は?」
「120mm徹甲弾が24発、105mm徹甲弾が16発です」
「十分かな」
木村が装備品を紙に書き記していく
一方で松本やその他の隊員は、戦車の砲等にシートをかぶせ、枝や葉っぱを張り付けていく
当日のルート確認も行う
五十嵐はアメリカやソ連にバレたら不味いと、防衛庁と連絡を取り合う
山道に入り、迂回するルートが確実だ
そう考えながら地図に書き記していく
移動当日
ジープなどを引き連れ、まだ空が赤い中進んでいく
滝川を出てしばらくすれば、もう空は暗くなっている
エンジンを吹かし、山道へと入る
なるべく人目につかないよう、市街地を避けたルートだ
富良野を経由し、多少賑わいが増えるが夕張を通って千歳へ向かう
「このペースなら暗いうちに到着できますね」
「何事もなければいいが・・・」
「隊長、それはKGBやCIAのスパイが、戦車強奪のために撃ち合いになって・・・」
「違う、熊とかそこ等へんだ」
「そん時はM2ブローニングでパパっとやっつけますか」
「馬鹿言え」
冗談を言いながら、一行は山道へと消えていくのであった