よくある風景
今年もよろしくお願いしますっ!
「 あ~とりあえず彼氏が欲しい」
課題を終え送信確認した後ノートパソコンをそっと閉じる。
「あははっ。また始まったね」
向かいの席で同じく課題と戦っている友人がなだめるように声を掛けてきた。
「だってそういうお年頃なんだもん」
りこは飲みかけのリンゴジュースのパックを飲み終えてもストローから口を離さなかった。
ついでにほっぺをふくらましてみる。
「りこちゃんは可愛いのにね~。世の中の男子は見る目がないわ」
りこは、少し棒読みに聞こえますよ~。とジト目で伝えた。
そして、心が籠っていなくてもフォローしてくれる友人をジロリと見る。
綺麗に整えられた髪にナチュラルメイク、もちろん爪も綺麗にネイルをしているふうかにりこの愚痴は止まらない。
「はぁ~。この大学男子の割合が多い方だよね?なのにどうしてなんだろう」
カタカタとキーボードを弾きながら
「えっ?でもりこも本気で彼氏が欲しい訳じゃないんでしょ?」
先に課題を終えたリコはスマホを見ながらう~んと唸った。
「んで、彼氏の前にもっと大切な事があるんじゃない?」
キーボードの音がいつの間にか止まっていたのでりこはスマホから視線を上げふうかを見る。
肘をつきながら顎を乗せりこの方を見ていた。
「彼氏っていうのは恋をした後に出現するものだよ。りこ君。そして、そのことは今どきの中高生...。いや小学生でも理解していると思う。」
りこはふうかの視線を反らすためにペットボトルのお茶を飲んでみた。
が、ふうかの視線は外れなかった。
「...。私の恋愛感覚は小学生以下という事でしょうか?ふうか先生」
「恋に恋すらしていないりこ君は...。このふうか先生でもアドバイスは難しいですなっ」
と言いながら再び課題を始めた。
ふうかはパソコンの画面を見ながら
「因みにりこ君はその彼氏とやらに何を求めているのかね」
ふうか、いつのまにか口調が探偵もどきになってるよ!と思いながらリコの理想の彼氏を描いてみる。
「え~、背が高くて、一緒に課題ができて、時々傍にいてくれる人?」
りこなりに上手く考えがまとめられたのでうれしくてふうかにどや顔を見せるとふうかは少し考えてから
「だったら、今石投げたらすぐにでも当たりそうだけどね」
と適当に流された。許さん!
リコは溜息を付きながら
「じゃあ、とりあえずメジャーリーガーの道から辿ってみようかな...。」
なんだか面倒になったりこも適当に答えると
「えっ、そこ?投げる方に全振りするの?彼氏を処するの?」
ふうかのツボに入ったらしくケラケラと笑い出した。
「りこってたまにすごく面白いよね」
たまにはいらないと思う。私はいつも面白いぞ!ふうかよ!
りこはふうかが楽しそうに笑っているのを見ながら少し幸せを感じていると
「ん?ふうかちゃん、りこちゃん何?すごく楽しそうだね!」
同じサークルのつかさがふうかの隣に座り、ふうかが笑っていた内容を説明し始めた。
つかさはそれをうんうんと相づちをしながら聞き入っていた。
そんな2人の雰囲気をりこはしばらく眺めた後、そっと自分の荷物を片づける。
2人は話に夢中でりこの行動には気が付かない。
きっと私、こういう雰囲気がしんどいんだよね。
一緒にいるようで2人の間には入れていない。先に楽しく話をしていたのは私だったのに...。
「じゃあ、私は課題終わったし帰るわ」
りこが盛り上がっている2人に告げると
「おっ、了解。またなっ」
「え~、りこももう少し一緒にいようよ」
だったら、ふうかもつかさとばかり話をしないで私を気にかけて欲しい...な。
とは言えず、りこはニッコリ笑った後
「2人の邪魔はできないよ」
と言ってその場から離れた。
「えっうん。じゃあね。」
とふうかが言った後
「ふうかちゃん、続きの話もききたい」
とつかさに言われ少しだけ戸惑った後、「それでね...」と話し始めた。
りこは少し寂しく感じながらも仕方がないのかなと割り切り建物の外にでた。
今日は、いつもより冷たい風が頬をピリっと刺激する。
りこが空を見上げると、澄んだ青空が一面に広がっていた。
マフラーを口元まで上げてそのまま最寄り駅まで歩いて帰っていった。
年始からあまり明るくないお話しですみません。
りこ→女の子
ふうか→女の子
つかさ→男の子
最後までお読みいただきありがとうございました。