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15/22

15:最終決戦。

 



 今日、何度目かの覚悟を決めた。


 【人は、みな尊い。

  すべての民の命は、平等である】


 私たち聖女見習いは、そう教えられてきた。

 癒やしの魔法を持った者は、すべからく教会に所属し、すべての民を平等に想い、病や怪我を治癒することが当たり前だと思っていた。


 八歳で聖女見習いになって十五年、ずっとそうあるべきだと思っていた。


 だけど、もういい。

 隠し続けていたこの力を使うと決めたからには、全力で挑む。


 ――――覚悟なさい!


 スッと両方の掌をエミリアンヌに向けた。

 ありったけの力を込める。

 やはりと言うべきか、先程と同じく反発してエミリアンヌの生気を引き寄せられない。


 ならば、他から力を持ってきて上回るだけ。


 先程の感覚を思い出す。

 無我夢中だったけど、気付いたこともあった。

 地下牢で吸い取った囚人たちの生気、謁見の間に入るまでに吸い取った生気など、先ずそれらから出ていき、治療に充てられていた。それらがなくなってから、私の生気がロベルト様に渡って行った。

 

 自分の生命力を攻撃力に変換すればいい。

 

『それをして、どうなるかは…………神であるボクにも解らないよ?』


 ――――はい、承知しています。


 たとえこの命が尽きようと、エミリアンヌだけは許さないし、逃さない。

 

「っ!? どこからそんな力が――――」


 反発しあい拮抗していた力が徐々に崩れだした。

 エミリアンヌの薄汚れた生気が僅かに流れ込んでくる。吐きそうだった。胃の奥底をぐじゃぐじゃにかき混ぜられているような、内臓を素手で触られているような気持ちの悪いもの。


 そんな気持ち悪いものを自分の中に入れながら、自分の生命をどんどんと削っている。

 とても妙な感覚だった。


 遠くでロベルト様の声が聞こえる。

 何を言っているのか、解らない。声がちゃんと聞こえない。

 ただ、生命力を変換すれば変換するほど、エミリアンヌの生気を大量に奪えるようになった。


「やめてよ! せっかくここまで来たのにっ!」


 エミリアンヌがどんどんと年老いていく。

 シワシワになり、腰が曲がり、やせ衰え、自慢であったろう金色の髪の毛が白くなり、パラパラと落ちた。

 

 ドサリと床に倒れ込んでも、奪うことは止めなかった。

 エミリアンヌが骨と皮のようになり、パラパラと崩れ始めた。


「い………………や……」


 はくはくと口が動いているが、もう何も聞こえない。

 エミリアンヌの崩壊は進む。

 そして、砂になり消えた。


 ――――終わった。


 そこで私の意識はブツリと切れた。




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