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13/22

13:死んだら、だめ。




 ロベルト様が私を庇おうとしてなのか、王太子殿下を私から庇おうとしてなのか…………両方なのか。

 私に剣を向ける王太子殿下の前に立ちはだかったロベルト様。

 気付けば剣が胸から背中に貫通していた。肋骨の治療も途中だったのに。


 王太子殿下は剣から手を離し、時が止まったように呆然としている。

 謁見の間にいなかったような気がしていたけれど、エミリアンヌがどこかに隠していた?

 

 ――――いまはそれよりも。


「ロベルト様……すぐ、助けます。死んだら、だめ…………」


 ロベルト様が力なく笑った。

 声にならない声で何かを言っているけれど、わからない。治癒魔法を掛け続けているけれど、胸の剣が邪魔。


「殿下! 王太子殿下!」


 彼にもエミリアンヌの毒はしっかりと回っているようだけれど、もやは薄く、時々覚醒しているようにも見える。

 一番近くにいて腕力のある彼に、剣を抜いてもらうしか方法がない。


「でぇんかぁ? こちらに戻って来なさい?」

「っ、ぐ……」


 エミリアンヌのねっとりとした甘い声を聞いて、王太子殿下が呻き頭を抱えた。また毒を注ぎ込まれているのだろう。

 これでは王太子殿下を頼れない。

 でも、なぜ?

 これだけエミリアンヌの毒に侵されているのに、あんなにももやが薄く、時々覚醒しているのだろうか?


『彼も時々大きな怪我をしていただろう? そして、その時は君が治療をしていたからね』


 ――――()()


『そう。彼も』


 色々と辻褄が合ってきた。

 エミリアンヌの毒に侵されても、もやが薄い人たちがいた。

 特にロベルト様は全く感染しなかった。ずっと頭の片隅で不思議には思っていた。なぜ彼だけ正気でいられるのだろうと。

 私の魔力が治療をした人たちの中で生きている。


 そんなの、エミリアンヌの毒と何が違うのだろうか?


『全然、違うよ。ほら、見るんだ…………彼女の覚悟を』


 ――――彼女?


 誰かがエミリアンヌの前に立ちはだかった。


「何よ?」

「これ以上は自由にさせません! ラシェル、こちらは食い止めます。殿下の治療を!」

「っ、聖女様…………」


 老齢の聖女様が、エミリアンヌに両手を向け何かをしていた。立ち上がっていたエミリアンヌの身体がふらりと揺れ、王座にドサリと座った。


「……なに、これ…………眠気?」


 眠気? もしかして、聖女様のみが使える治療の際の補助魔法だろうか?

 

『正解。彼女が抑えている内に。ほら、早く。長くは持たないよ』


 歴代の聖女は、固有魔法のようなものを持っているという。今代の聖女様は、治療中の痛みを和らげるための睡眠魔法。

 こんな使い方も出来たのね。


「なんだ……これは…………」


 聖女様がエミリアンヌの意識を朦朧とさせてくれたおかげで、呻いていた王太子殿下が覚醒した。


「殿下! ロベルト様の剣を抜いて!」

「しかし、これは……」

「いいから早くして!」


 地位とか立場とか全てを取っ払い、叫んだ。その気迫に押されたのか、王太子殿下がロベルト様に刺さったままだった剣の柄を握り、コクリと頷いてくれた。


 ――――絶対に、助けます。

 



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