1:聖女見習い。
新連載、よろしくお願い致します。
【人は、みな尊い。
すべての民の命は、平等である】
私たち聖女見習いは、そう教えられてきた。
癒やしの魔法を持った者は、すべからく教会に所属し、すべての民を平等に想い、病や怪我を治癒することが当たり前だと思っていた。
八歳で聖女見習いになって十五年、ずっとそうあるべきだと思っていた。
◆◆◆◆◆
「これ、やっといてちょうだい」
「……」
「何よ、その目は。気持ち悪いわね!」
バサリと投げつけられた書類を見る。
颯爽と立ち去った金髪縦ロールのエミリアンヌ様のやるべき仕事。本来は。
治療を施した人のカルテに症状やどんな治療でどれだけの魔力を使ったのかを書き込まなければいけない。なので、治療したエミリアンヌ様にしか詳細は分からない。それなのに、彼女は絶対に書類仕事はしない。
エミリアンヌ様の汚い走り書きのメモを見る。
――――六人も治療したのね。
私たち聖女見習いは二十人いて、王都の各地の教会に併設されている治癒院に割り振られている。
私は治癒能力の高さから。
エミリアンヌ様は地位の高さから。
私たちはそれぞれの理由から王城にある治癒院に配属されていた。
王城の治療院には聖女様もいる。随分とご高齢なので、そろそろ代替わりをしたいとのことで、最近は候補者決めをしているらしい。
きっとエミリアンヌ様はそれを知っている。だから今日は六人も癒やしたんだろう。いつもなら二人とかだし。
この世界には、魔法がある。
この世界には、神がいる。
聖女になるには、神の神託と祝福が必要だ。
神託が聞こえる者は限られている。教会のトップである教皇や神に愛された者。
『また押し付けられて。聖女と教皇に神託を――――』
――――いらないです。
例えば、私とか。
いつからだったろうか、頭の中に変な声が響き出したのは。男性とも女性ともいえない声。
初めはなにかの病気かと思った。主に精神的な。
ずっと無視し続けていたものの、どうやら本物の『神』と呼ばれる存在なのだと知った。
昔も今も、ただ頭の中でやんや言う煩い存在なだけだけど。
『酷いな』
人の思考を読み取る方が酷いと思うので、基本的にいつも無視している。たとえ思考が読めたとしても、聞かなかったことにすればいいのに、神は全部にツッコミを入れる勢いで話しかけてくる。性格が悪い。
『そんな事を言うと、教えてあげないよ? 君が憎からず想っている第二王子が大きな怪我をした、とかね?』
――――っ! 演習場ですか!?
頭の中で神がクスクスと笑いながら『早く行っておやり』と囁いた。本当に、性格が悪い。
複数回/日で、投稿していくと思います。