- 懐かしい再会
「まさか、あたしの曾ばあちゃんの話だったなんて…おかしいと思ったのよ、なんか話が噛み合わなくて」
セキは懐中しるこを食べ一息ついたところで話し始めた。鴇への依頼である。
「耳のいい占い師…確かにセキさんはここらの妖たちやそういう類に好かれるくらいどんな小さな声でも聴いてくれる耳をお持ちだが占い師ではないですし」
「緋褪堂っていうのもずっと分からなかったんだけど、さっきこの別嬪さんのお顔を見たときに思い出したの…お嬢さん、私を知っていらっしゃる?」
「ちょっとおばあちゃん、瑪瑙さんに失礼でしょ!」
瑪瑙は諫める木綿子に気にしないでと言葉を零した。
「覚えていらっしゃるのですか、あんなたった一瞬の出来事なのに」
「曾祖母の腕の中で微睡む私を覗き込んで、微笑んでくれた。あまりに綺麗な方だから夢だと思っていたわ」
セキは皺の多い柔い手で瑪瑙の艶やかな髪をひと房手に取り懐かしむ。
「瑪瑙さんと仰ったわね、ほんとお綺麗な方…」
瑪瑙との再会を懐かしむセキに理解が追い付かない木綿子を呼びよせ、茶を勧める。
「瑪瑙はね、ちょっとした不思議を扱えるんだ」
「不思議?」
「例えば…そうだな、私は苦手なんだが…」
鴇は背もたれにしていた棚の上から三段目の引き出しから扇子を取り出した。青い蝶の描かれた扇子である。鴇はその扇子を客間の中央へ向けて仰ぎながら煙管から吸い込んでいた煙を吐き出した。するとその煙と共に宙を舞うように漂うように扇子から蝶が舞い出てくるではないか。ひらり、ひらり、と蝶たちは客間を一周ぐるりと舞い飛んで満足したように扇子へと帰っていった。
「ほんと鴇はその術苦手ねえ」
「おや、話は終わったのかい」
「ええ、懐かしの再会も思い出話もね。それより、鴇の腕なら五分は現界させてあげられるでしょう?」
「いやいや、私にはこれくらいが限度だよ…苦手なんだ」
「昔からそうよね」
「昔からこういった術や不思議を扱うのは君が一番だったね」
瑪瑙は鴇にそう褒められうっすら頬を染めた。
それを見て木綿子はなんて綺麗な人だろうと思った。長い睫毛にふっくらとした唇、煌めく瞳…どれを取っても美人という言葉が似合いすぎる。そんな瑪瑙にうっとりとしていると。
「そんなことより依頼の話なんだけどね、鴇ちゃん」
「そうでした。セキさんが依頼主から聞いたお話を私たちにも聞かせてもらえますか」




