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大和の光

大和郡山城内では、駆けつけた秀次、流、側近の田中吉政を連れ、臥せっていた秀長に事実を伝えた。


『なるほど・・・。家康殿の秘薬が体調不良の原因とは・・・・。』

秀長は最近よだれが自然にこぼれ、健康時の透き通った声が聞こえにくい。


『さよう、南蛮では水銀が毒性が強いとの意見が出始めており、これ以上の服用は危険かと!』

秀長とは旧知の仲である、吉政が文官らしからぬ声を張り上げる。


先ほどから医者と秀次達が薬の毒性について議論がつかずに紛糾していた・・・。


『では、一時薬の服用を一切やめ、精の付く食事療法に切り替えられては?』

秀長の側近で、秀長の右腕として辣腕をふるっている、藤堂高虎が議論の一瞬、空白が空いた間に絶妙な合いの手を入れてきた。


正五位下 藤堂佐渡守高虎、徳川家康の側近本多正信と同じ佐渡守の官位を持つもう一人の佐渡守・・・。

もっとも、正信の場合は従五位下であるから、高虎の方が格上ではあるが・・・。


そして、大和大納言秀長に武蔵大納言家康。

秀長と家康の奇妙な共通点である。


『されど、憎きは家康!律儀者の仮面いつか剥ぎ取らん!!』

高虎は怒りに震えていた。

史実では家康に媚を売る代表格であるが、自分より能力があり、正当な評価を与えてくれるものに仕えているだけで、この時の彼にとって、理想の主君、命を賭けれる主君は秀長以外居ないのである。


『高虎、家康は決して兄じゃの目の黒いうちは絶対に動かん・・・。だから待て!時が来るのを!狸の皮をかぶった虎が出てくるのを待つのじゃ・・・。』

秀長は家康の意図に気付き、自身の肩に背負った物の大きさを、絶対に生き抜くという精神力に変えたのであった。


それから、秀長は、信玄公が食したとされる、栃餅にはちみつをかけた通称【信玄餅】を好んで食べだした。


もともと水銀の毒は、蒸気になって摂取しなければ、自然と体外に排出される。

2週間もしないうちに秀長の体調が劇的に回復してきたのである。


『このままいけば、兄じゃの陣触れに間に合うなあ』

この働き者の秀長は、もう自身が倒れる前に出た北条討伐に参加する気でいる。


秀長が出陣の決意をしたのは、家康は元々北条家と同盟関係にあり、戦況によっては、豊臣家に臣従をしていない、伊達などの勢力と結託して、返り忠しかねない存在である。


この事については、当然秀吉も用心しており、秀次を大将とした、軍に組み込み、自身は別に軍勢を組んでの着陣である。


『すでに動員は完了しております。』

そばに控えていた杉若無心がすかさず答える。この頃は主だった武将達は領地に戻り、動員の準備に追われていた。


天正18年4月には、豊臣側の動員はほぼ終了しており、北方軍、前田利家、前田利長、上杉景勝、真田昌幸、依田康国、丹羽長重らが率いる約3万5千人。


水軍率いる長宗我部元親、加藤嘉明、九鬼嘉隆、脇坂安治の兵力約1万人。


主力に至っては豊臣秀次を筆頭に、徳川家康、織田信雄、蒲生氏郷、黒田如水、羽柴秀勝、宇喜多秀家、織田信包、細川忠興、小早川隆景、吉川広家、堀秀政、池田輝政、浅野長政、石田三成、長束正家、長谷川秀一、大谷吉隆、石川数正、増田長盛、金森長近、筒井定次、生駒親正、蜂須賀家政、大友吉統、島津久保、森忠政等、実に約17万人をも動員しているのである。


当然これには、関白秀吉軍は含まれておらず、正に秀吉の権威を天下に見せつけるに相応しいイベントとなったのである。


そして、秀吉を狂喜させたのが、自身が最も信頼し、どんな命令もそつなくこなす、もっとも優秀な家臣、豊臣秀長が2万の大軍を率いて、出陣したのである。





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