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ぼっちの崩壊

 ガンッ


 放課後、自分の机の前で帰り支度をしていると、机が大きく揺れた。何が起きたのだろうと周りを観察していると、体の大きな人が机の前に立っていた。自分は顔を上げ、その人物の顔を見てみると、桑田だった。どうやら桑田が自分の机を蹴り上げたらしい。


 最初は桑田の不注意から自分の机を蹴り上げてしまったのかと思ったが、桑田の顔はこちらをにらみつけていて、かなり怒っている。自分は桑田を怒らせるようなことをした覚えはなかったので、とりあえず小さく頭を下げ、そそくさと自分の席を立った。


 すると、桑田は自分の肩を掴んで、逃げださないようにした。


「ちょっと、来い。逃げるなよ。」

 桑田はそのまま教室を出て行った。


 逃げなきゃ。危機を感じた自分は、片付けたかばんを背負って、桑田が出て行った扉とは違う方の扉に向かった。桑田が廊下を歩いている姿を出口から確認して、桑田とは反対方向に逃げ出した。桑田の方ばかりに気を取られていたために、走り出した方向に誰がいるか見ていなかった。


 自分は誰かにぶつかってしまい、その場に尻もちをついてしまった。


「すまない、発地君。怪我はないかい。」

 ぶつかった相手は皆見だった。自分は差し出された皆見の手の上に、自分の手を乗せる前に、後ろを振り返ってみた。すると、案の定、桑田が噴火しそうな勢いでこっちを見ていた。


「ああ、大丈夫。それよりも自分は桑田に呼び出されているから、今すぐに桑田の所に向かわないと。」

 自分はすぐに立ち上がり、一目散に桑田の所に向かった。自分はまるで逃げ出さずに着いてきていましたみたいな涼しい顔をしたが、桑田は噴火しそうなしかめっ面を崩さなかった。


 桑田は何をそんなに怒っているんだ?




 桑田の後ろをついていくと、学校を出て、近くの山の中まで連れていかれた。人気のない所だったので、嫌な予感がした。まさか、ボコられるんのかな。なら、どこかのタイミングで逃げ出した方が良かったかもしれない。


 桑田は山道で、突然止まると、こちらに振り向いた。


「俺はお前のことが嫌いだ。」

「……はあ。」

「お前は皆見のことも殴った時から好くことができんと思っていた。あんな優しい皆見を無抵抗のまま殴るなんて許せない。いつかこの報復をしてやろうとは思っていたんだ。


 そしたらだ。俺は風の噂でこんなことを聞いたんだ。


 お前、沙羅の家行ったろ?」

「……。」

 自分は黙るしかなかった。数か月前のことだが、確かに水上の家に行ったことは事実だからだ。


「否定はしないんだな。お前は沙羅が俺の彼女ってことも知っていたのか?」

「……。」

「答えろよ。」

 桑田は声を張り上げ、指をポキポキと鳴らしながら、答えを迫ってきた。


「知ってた。」

「そうか、お前が沙羅の家に入って、何をしたかは別にどうでもいいんだ。」

 桑田は近づいてくると、自分の胸ぐらを掴んだ。そして、胸倉をつかんでいない方の手を握りしめて、自分の頬を目掛けて、振り抜いてきた。自分は頬に信じられないほどの痛みを感じた後、殴られた方と反対側に、顔が向く。その勢いは、首の筋を痛ませ、脳を揺らした。


 自分はグラグラする意識の中で、自分は殴られたんだと理解した。理解したころには、もう一発拳が来ていた。口の中の皮膚が歯で切れてしまったのか、鉄のような血の味が口中に広がる。首の骨が折れてしまいそうなほど、力一杯に殴られている。


 桑田はある程度殴った所で、胸倉を離した。自分は立つ気力が残っていなかったので、その場にへたり込んでしまう。そこにすかさず、桑田は腹のあたりに蹴りを入れてくる。口の中に満たされている血を思わず吐き出してしまう。


 自分の血と唾液が絡みついたどろりとした赤いゲル状のものが地面にだらだらと口から零れ落ちていく。自分は腹部に感じる痛みから血が零れ落ちる口を閉じることができなかった。


 そこから何回か腹に蹴りを入れられたと思う。もう痛いとかそういうものではなく、いつまでこれが続くのだろうかと考えていた。おそらく数分も経っていないのだろうが、ものすごく長く感じて、なぜかいつまでも続くような気がした。

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