ある天才少女賢者の苦悩……
皆さんも秘密をもっているのではないでしょうか? この物語は、ある天才少女賢者の秘密に関わる日常の苦悩を綴った物語です。
私は村人が見守る中、ゆっくりと胡坐で座る。私を中心に地面に魔法陣が展開され、その紋様が激しく光る。私は本当はする必要がない手を前に出すポーズをする。
(このパフォーマンスは大事……)
その瞬間地面から土が盛り上がり、瞬く間に村は土壁に囲まれる。小さな村だから城下町の防壁より全然簡単。村人は喜ぶし私はお金を貰えるからWin-Winだ。
(あ、入口忘れてた。三か所ぐらい穴開けて……もう少し強度が高い方がいいかな……火魔法と水魔法を使って焼をいれて……)
「流石は土の賢者トゥラン様だ! これほど立派な防壁を作って頂けるとは……」
皆は私のことを土の賢者と呼ぶけど、実は全ての属性魔法を扱う事ができる。攻撃魔法だけでなく回復魔法も扱う事ができる。でも、冒険とかはしないし、誘われることもない。私は座りながらじゃないと魔法を使わないから。
どうして魔法って陣が展開されて光るんだろう……これさえなかったら良かったのに……
私は村長からお金が入った袋を受け取ると、遠い目で空を見上げる。
あー……思い出すなぁ……初めての授業で水魔法を使った事。私に魔力があるって事で入った学園で、安全だって事でコップに手をかざしたっけ? その瞬間お尻から魔法陣が展開されて、まるでお漏らし状態……恥ずかしくなって魔力暴走して教室が大洪水……
その後、学園では扱えないって事で師匠に預けられて爆笑された……まじ黒歴史。だって、よく考えてよ。火魔法を使おうと思ってもお尻から魔法陣が出るんだよ! それって、おならみたいじゃん!
一度だけ懇願されて冒険のパーティーを組んだ時は、魔獣に追いかけられたから殿を務めて大火炎魔法で撃退したけど、あとで皆に怒られた。そんなことが出来るなら最初から使えって? お尻向けて火魔法なんて使ったら放屁賢者って二つ名がつくじゃん! 乙女にもプライドがあるっての!
私は受け取った袋の中身を確認すると、ゆっくりと座り直して魔法陣を展開する。土からゴーレムがせり出し、私はゴーレムの肩に載った状態で座っている。
(これなら、ゴーレムの肩が光っているようにみえるだけ……)
ゴーレム越しなら水魔法でも火魔法でも自由に使える。だから私は土の賢者と呼ばれるようになった。乙女の尊厳は守られたのだ。本当に良かった……この方法を考えてくれた師匠には感謝。これからも私の秘密は守り続けないといけない。
はぁ~……お金が溜まったら賢者を辞めようかな……
本作品は第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞の応募作品として書かせて頂きました。コメディなので沢山笑って頂けると嬉しいです。
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茂木多弥