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初登校ですご容赦ください。
――どうして、
目の前に広がる光景を受け入れることができなかった。
テーブルの上には華やかに飾られたホールケーキそして
血まみれになり伏した母親と幼馴染の姿があった
◆◇
テーブルに並べられたご馳走ににやけが止まらない。
「今日は来てくれてありがとうね。」
そう母が言うと、
「いえ、俺の誕生日にも来てもらったのでそのお礼です。」
「私も普段から仁にはお世話になっていますから。」
そう幼馴染の樹と菫が返す。
そうである。今日は僕 小田巻仁の誕生日である。
「なんか二人の敬語聞くの気持ち悪いな。」
「俺も敬語くらい喋れるわ。」
「樹と一緒にされるのは心外。」
そんな軽口叩きながら時間は穏やかに過ぎていった。
「そろそろケーキを食べましょうか。」
台所からケーキが運ばれてくる。ケーキには、デカデカと16と書かれた蝋燭がたててある。
蝋燭に火がつけられ、部屋の灯りが消される。もう日も完全に沈んでいて部屋は真っ暗だ。
今年のプレゼントはなんだろう。そんなことを考えながら蝋燭の火を吹き消した。
部屋を暗闇が包む。いつもならここで「おめでとう」とみんなが言うところだが、部屋はシーンとしていた。
ドッキリか何かか。
そんなことを思い始めた時、鼻にツーンとした鉄分が混ざったような匂いがした。嗅いだだけで気分が悪くなる、この場にふさわしくないにおいだ。
その時、カーテンが風に煽られてはらりと揺れた。部屋に月の光が差し込む。
そこに映っていたのは、
血まみれになってテーブルに伏した母と幼馴染の姿だった
数秒間ただ見下ろしていた。今の状況が全く理解できない。
徐々に頭が追いついてくると吐き気が込み上げてくる。
もう既に救急車を呼ぶなんてことは考えることも出来なかった。
おそるおそる母に触ってみる、母の肌はぶよぶよとしていて、温もりはなく冷たくなっていた。
サーっと血の気が引いていく。今の状況に耐えられず腹の中のものを吐き出した。
その時、ガチャリという音がした。
仁には歳の離れた兄が一人いる。普段は仕事の都合で
別居しているのだが、今日は仁の誕生日のために、やってきたのだった。
兄は部屋の惨状を見ると、
「これはお前がやったのか?」
と言った。仁が首を横に振ると、兄は母の方えと手を伸ばす、するとジュッという音がして人差し指から煙が上がった。
兄が仁の方を見る。呆けた顔をした仁の目は、青白く光っていた。