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四大天使の秘宝  作者: TERU
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第7話「八岐大蛇」

奮闘するティナやテル達の前に突如現れた、伝説の魔獣「八岐大蛇」!

怖ろしい魔獣は八つの口から炎を吐き、混乱する戦場を火の海とかした・・・

四大天使の秘宝


第七話「八岐大蛇」


 辺りは騒然としていた。逃げ惑う、山賊や兵士達。突然天空から舞い降りた魔獣は、十六の眼で私達を睨みつけた。その眼に睨まれた人間は、恐怖のために固まり身動きが取れなくなった。

 魔獣は三種の神器を守るように神輿の前に立った。

「ヒドラ(火トカゲ)」

 ティナは叫んだ。ヒドラは伝説上の魔獣で、火の精でもある。

「違います。ヒドラは頭が一つから三つですが、これは八つもあります。これは陰陽師が召喚した別次元の魔獣です」

 ヒューべリックが説明する。

「八岐大蛇」

 テルは地面に腰を落とし、驚愕の表情で言葉を絞り出した。

「なんだって?」

「この国の神話に出てくる怪物だ。この怪物を切れるのは、神が使わした三種の神器の一つ『天叢雲剣あまのむらくものつるぎしかない」

 テルが叫ぶ。何故突然魔獣が現れたのか?ティナとテル頭に過ぎるものがあった。

「天皇陛下だ!」

 ティナとテルがお互い声を出した。

「陛下は、三種の神器は簡単に手に入らないと言っていた」

 二十年に一度、三種の神器は天皇に献上されるが、神社に戻す時に『封印』をかける。天皇は陰陽道を少しかじっていると言ったが、少しどころではない。大陰陽師だったのである。


 黒虎と赤虎は突然の魔獣の出現で怯んだ。撤退!と叫び退却をしようとした時に、バージとスカーが彼らを塞いだ。

「決着はまだだ、何処に逃げる?」

 バージが睨みつける。

「お前達は馬鹿か?こんな化け物が出ているのに戦えるか!」

 言葉は分らないが化け物の出現により、逃げだすのが分かる。

「魔獣が怖いか?俺たちは世界中を旅して幾多の修羅場を潜っている。こんな魔獣は珍しくもない。世界知らないお山の大将さん、さあ続きを始めよう」

 八岐大蛇は人々を焼き尽くし、手が付けられない。ティナとテルは炎からヒューべリックの防御魔法『ウィンディシールド(風の盾)』によって守られていたがもう長く持たない。

「ティナその子を連れて逃げろ!もう持たない」

「嫌だ!ヒューべリックを置いては行けない」


 その時である、数十の光の矢が八岐大蛇を襲い掛かり、胴体に突き刺さった。第二波には、数発の大砲が撃ち込まれ、八岐大蛇は痛みで咆哮した。ティナとヒューべリックは後ろの森を見渡した。

「ブラッド。みんな!」

 ブラッド隊は、橋が壊れているため、迂回を余儀なくされていた。到着したと思えば魔獣の出現である。予定には無かったが、隊を編成して応戦した。マシュー部隊に第一陣として魔法攻撃、第二陣としてスチワート隊の小型大砲で応戦したのだ。

 そしてゴルディバ甲板長、弟のゴンゴが率いる屈強の10名の甲板員がアックス(斧)を構え、咆哮と共に雪崩の如く戦場へと駆け下りた。

 逃げ惑う山賊達は、狂戦士とかしたゴルティバ部隊に次々と切り倒されていった。


 赤虎はスカーと腕は互角だった。しかし八岐大蛇の出現により、赤虎は集中力が散漫になっていた。スカーもそれに気が付いていた。世界で数々の冒険をしていたスカーにとって、この状況は珍しいものではない。(ある意味珍しいが…)スカーは動揺などしていないのだ。

 赤虎の攻撃に鋭さが無くなった。修羅場の経験の差である。

 そして最後は呆気無く終わった。赤虎の槍の突きの一撃を『数ミリ』で見切りかわした。その直後、スカーは槍を左手だけで持ち、赤虎の胸に槍を突き付けた。その槍の先は赤虎の心臓を見事に突き抜いた。赤虎は血を吐きながら仰向けに倒れた。そしてそのまま動かなくなった。

 バージと黒虎の戦いは壮絶を極めた。黒虎の剛腕が大刀振り回し、バージの剣が受け流す。パワーの黒虎とスピードのバージである。赤虎は動揺していたが、黒虎に乱れはない。戦いに集中しているのだ。根っからの戦士であろう。笑みすら浮かべている。

「楽しいぞ。計画通りに行かなかったが、こんな闘いが出来るとは思わなかったぞ」

 黒虎の回りには闘気で満ち溢れていた。

「いい戦士だ。だが魔獣に巻き込まれる分にはいかない。そろそろ終りにしよう」

 バージが呟く。その時である、森の向こうからゴルティバ率いる狂戦士隊が山賊の群れを突き破ってきた。

「何事だ!」

 黒虎の気が一瞬乱れた。

 バージは勝機を見た。バージの突きが流星の如く突き出した。彼の異名『流星のバージ』はこの突きから来ているのだ。どれだけの突きが出ているのか分からない。この突きを受けて、生きている人間はいないのだから。

 右腕と、左腕が次々と切り裂かれた。体中には突きの跡が数十と残った。バージが突き終わった瞬間、黒虎の体中の傷口から血が噴き出した。黒虎はよろけながら後ろを振り返った。そこには山賊に潜入していたりゅうが立っていた。

「助けてくれ…」

 黒虎が血を噴き出しながら吐き出すように叫んだ。

 りゅうは、黒虎に近づき『ミゾオチ』に一撃した。すると黒虎の『目』『耳』『鼻』『口』すべての穴から血を噴き出し倒れた。『発剄』と呼ばれる武術の奥義である。わずか数センチの距離から、拳を打ち出すだけで、人間の人体を破壊する、恐ろしい奥義である。


 棟梁・副棟梁が殺され、山賊達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。元々八岐大蛇が現れてから逃げ出していたが、『頭』がいなくなると余計に無残である。烏合の衆というのはこんな感じなのだろう。


 残るは『八岐大蛇』のみである。辺りは死体の山と炎に包まれていた。八岐大蛇はマシューの魔法とスチワートが応戦していたが、厚い皮膚を貫くことが出来なかった。八岐大蛇も狙いをマシュー達に定めて、八つの口から炎を吐きだした。高温度の八岐大蛇の『炎』を高レベルの魔法の盾で身を守る事は出来たが、森が焼け野原となり周りの炎と煙で、持ちこたえられるのもあと数分程度であった。

燃え盛る森を背にブラッドが八岐大蛇に向かって歩き出した。金髪の髪は炎によって赤く映し出されていた。


 その光景を見てティナは「赤毛のブラッド」と呟いた。


 ブラッドは八岐大蛇の前に立ち、話しかけた。

「よう!もう山賊は逃げ帰った。三種の神器も守った。もう帰ったらどうだ」

 通じる訳ないが、ブラッドは八岐大蛇を睨み付けた。

八岐大蛇は『咆哮』を上げ、翼を広げたかと思うと上空に羽ばたき、空からブラッドに目掛けて炎を吐いた。上空に逃げたのは、ブラッドの気がただものでは証拠であろう。

 

 ブラッドの周りが灼熱地獄とかした。


 しかしブラッドは炎が吐かれた瞬間、目にも止まらぬ速さで、移動して黄金の棺の前に立っていた。

黄金の棺には攻撃出来ないと判断した、ブラッドが俊足で移動したのだ。

怒り狂う八岐大蛇をしり目に、ブラッドは黄金の棺から『天叢雲剣あまのむらくものつるぎ』を取り出し、片手で天に高々と掲げた。


 天叢雲剣の鞘には黄金の装飾のがされた、それにさまざまの宝石が装飾され神々しさが漂っている。そしてその場にいた誰もが感じる霊気が漂っていた。いや鞘からでは無い。鞘は霊気を抑えているのだ。ティナ達が感じていたのは、鞘から漏れる刀身の霊気である。


 怒り狂う八岐大蛇がブラッドに上空から襲いかかった。

 ブラッドは高々と上げた 天叢雲剣の柄をもう片方の手で抜き出した。するとその刀身から眩いばかりの光が辺り一帯を覆い尽くした。まさに太陽の如くである。この光に八岐大蛇も怯んだ。


 ブラッドは刀身を鞘から抜くと、鬼神の様な素早さで八岐大蛇に切り付けた。それは正に光の疾風である。無数の光の"刃"は八岐大蛇を切り裂いた。


 誰もが眩い光で、まともに見えない。現状が把握出来ないのだ。


 ブラッドが天叢雲剣を鞘に納めると徐々に前が見えるようになった。そしてその場にいる誰もが驚愕した。あの八岐大蛇がブラッドの背後に立ち、今にも襲いかかろうとしていた。

「ブラッド!危ない!」

 ティナが叫んだ。その瞬間、八岐大蛇の体から無数の血が吹き出し、大きな地響きと共に倒れたのだ。ブラッドの圧勝である。周りの本多をはじめ、数千の兵士も声が出ない。

 ブラッドにティナが駆け寄り、その後に他のメンバーも駆け寄った。

 その直後、厚い雲に覆われていた上空に五芒星ペンタグラムが浮かび上がった。その五芒星から光の柱が八岐大蛇に降りて、そのまま五芒星の中に引き上げて行った。その後五芒星が消えて行き、厚い雲は晴れて行った。

「終わったの?」

「ああ終わった。こいつも四大天使の秘宝では無かった」

 ティナにブラッドは微笑みながら答えた。

「しかしこの宝は凄いな。流石『神器』と呼ばれるだけある・・・。だが・・・俺たちには大き過ぎる代物だ。」

 ブラッドは天叢雲剣あまのむらくものつるぎを黄金の棺に戻した。

 ここがブラッドの凄いところだ。ティナは思った。普通の人間ならこれだけのお宝を目にしたら、欲に駆られて持ち出すであろう。それを返すのだ。大きな男だ。ティナはブラッドを眺めた。


 ブラッドは軍団長の本多を呼び出し、もう敵は来ないだろうと言って、三種の神器を伊予に運び出すように指示をした。勿論マシューの通訳付きで。本多も恩人であるブラッドに深々と頭を下げて隊に指示した。

「さて野郎ども我がルシフェルに帰るぞ!」

 ブラッドの号令と共に『赤毛のブラッド海賊団』は掛け声をかけてその場を去っていた。ティナはテルがいなくなっている事に気づいた。

 しかし彼にはまた会えるだろうと思い、ブラッドの後を追った。



 惨事の現場から遠く離れた、『京の都』の御所の玉座で聖徳天皇は座っていた。聖徳天皇は、目を瞑り瞑想に浸っていた。目を開くと、彼の額から血が流れ出した。

「まさか八岐大蛇を倒せる人間がこの世にいるとは思わなかったよ。」

 聖徳天皇は血を拭った。

 大陰陽師である聖徳天皇は黄金の棺に呪術をかけ封印した。天皇家は代々陰陽師の家系なのである。これが神の子孫とも呼べる天皇家の力なのだろう。都に結界の為、神社やお寺を建てたのも大陰陽師である歴代天皇の指示であろう。

 しかし『術』が破られると、かけた本人に『呪』が返ってくる。陰陽とは恐ろしい『呪』なのである。

「面白いな。あの異人は」

 聖徳天皇は笑っていた。


 部隊を収集するために軍団長本多は、橋を渡った約五千人の兵士を近くの平地に配置させて仮の橋を造らせた。生き残った反対側の兵士は三千人程になっており二千人程の部下が、山賊や八岐大蛇によって亡くなっていた。

 残りの三千人の兵士を、近くの平地に陣を引いて休ませた。その一方で、死体を埋葬、橋の修復に当たった。将軍家・天皇家にも報告の馬を走らせた。


 仮の橋の修復には一週間を要した。本多軍は大幅に遅れたが、それから一週間後に伊予に無事到着した。そして『三種の神器』を伊予神社に奉納する事が出来た。

 『鳥井』に到着した一行は、ルシフェルに戻り疲れと傷を癒した。この惨劇で一人も死人を出していない、ブラッドの組織力・統率力は凄いとティナは思った。

数日疲れを癒した後、ブラッドが会議を開いた。

りゅうの調べで、今回の件の黒幕が東の『江良』という国の大将軍だという事が分かった」

「今回は散々な目にあった。しかもお宝無しだ。こうなったら将軍の城に一発食らわして帰る事にする」ブラッドの発言にビックリしたが、彼の奇想天外な行動はいつもの事である。そのうち皆で高笑いとなった。

「それではいざ『江良』へ、出港!」


 海賊船『ルシフェル』は、『鳥井港』を出港して、東の国『江良』に向かった。


次回「さらばジャンパー!江良城炎上!」をお楽しみ。


キャスト

ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。ルシフェルの船長

バージ…5人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士

りゅう…5人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。

ヒューベリック…ドクター助手。白魔法・薬学の権威。

テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。

スカー…二等航海士、バージの弟子。槍術の達人

黒虎…山賊の棟梁、全国の山賊を集め、三種の神器を奪う計画を立てる。

聖徳天皇…ジャンパー国の天皇。後の代に人は「太陽天皇」と呼ぶ。大陰陽師でもある。


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