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四大天使の秘宝  作者: TERU
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第6話「三種の神器」

ついにそれぞれの思惑を持った者達の激突が始まる!!ティナとテルの運命は!?


四大天使の秘宝


第六話「三種の神器」


 『京の都』の天皇が住む御所の近くの宿で、海賊船『ルシフェル』一等航海士『バージ』を中心としたメンバーが会議を行っていた。三種の神器が都を出発するまで、後三日と迫った夜の事である。メンバーは殆どが情報収集+買い物を終え、会議も大詰めであった。


「堺に潜入しているりゅうによれば、山賊どもの群れは2千人にも及ぶらしい。その集団は既に堺を出発して、伊予に向うルートに移動している。伊予で襲うのでは無く、途中の山奥で勝負をかけるようだ」

 バースはりゅうに与えられた情報を伝える。

「奴らは護衛の1万軍勢が不利な、険しく細道の場所を選び側面から一気に攻めるはずだ」

 スカーが付け加える。

「一番適していると思われるのが、来る途中で通った。『野上』の山奥にある大きな橋の近くの山道が一番険しく、側面の山から襲いやすい。そこがポイントとなってくるだろう。行列が渡り始めてから橋を爆破し、隊を分断する。そして残りの部隊を、地理的に有利な山賊が側面から護衛部隊を襲う。これが奴らの計画だと思われる」

 バースは百戦錬磨の武将でもある。一度通ったルートから、敵が考えられる作戦を読んだのだ。戦略家としての能力も高い。

「二千人の山賊どもが、一万人以上もいる将軍家最強の軍団に勝つには、この場所しかあるまい」

「この件はブラッドにも伝えている。作戦はこのように行う。三種の神器の行列の後を追って、我々バージ隊が付いて行く。りゅうは山賊の中に混じり動向を探る。劉部隊は山賊の後ろについて貰う。ブラッドはマシュー隊・スチワート隊それにゴルディバ隊を引き連れて伊予から出発、行列の正面を押さえる」

 バージは隊の編成を告げた。

「しかし数が一万と二千の戦いである。まともに遣り合うわけには行かない。山賊が将軍家を襲い、混乱している時に、三種の神器を狙う。分かったな」

 バージの説明にメンバーは頷く。一万二千人の戦いの中に、たった数十人で乗り込んで行くのである。それなりの覚悟が必要である。

 ティナはテルと戦うことになるのか?が心配であった。

「狙いは三種の神器の一つ『天叢雲剣』(あまのむらくものつるぎ)である。四大天使の秘宝の一つミカエルの秘宝は『炎の剣』だと聞いている。可能性があるとすればこいつだ。その他、八咫鏡やたのかがみ、は神を映し出しその神を光臨させるそうだ。八尺瓊勾玉やさかにのまがたまは神がかり的な霊力があり、絶大なパワーを引きだすそうだ。」

 バージ達が収集した情報を話す。伊達に都を徘徊していない。(買い物や遊び中心ではあるが…)

「ブラッドはこの国の宝を狙う事に慎重だ。下手をすると一国と争う事になるからな。確認を怠るな」 バージがメンバーに言い聞かせた。

「それから仕入れた荷物はいち早く、明日馬車で鳥井に帰ってもらう。ジョンにはすまないが馬車を手配して鳥井に戻っていてくれ」

 メンバーの一人、航海士ジョンにバージはお願いをして、ジョンも了解した。やっぱり買った品物は大事らしい。

「それでは会議は、終わりとする。今から酒屋に行くから付き合え」

 やっぱり今日も飲むの?とティナは呆れる。上陸してから飲み続けである。彼らのワイルドさは流石に凄いとティナは思った。



 『野上』の山奥の森の間に広い平地がある。そこに陣を構え、山賊棟梁『黒虎』は副棟梁『赤虎』『青虎』それと一部の幹部と共に軍議を開いていた。

「三種の神器は三日後に、将軍家軍団長本多が兵一万を護衛に付け京を立ちます。この『野山』到着するのは京から一週間後かと思われます」

 赤虎が説明した。

「1万の兵など山の中では赤子同然。山間で全滅してくれるわ。橋の爆破の準備は出来ているな?」

 黒虎の問いに青虎が「はっ!」と答えた。

「それから半蔵殿より書状が届いております」

 青虎が書状を黒虎に手渡す。

 書状を受け取り、黒虎は読み出した。読み終えた黒虎は話し出した。

「天皇直属の『山猿』と『海猿』が嗅ぎまわっているようだ。半蔵殿直属の伊田忍軍が殲滅に当ると言っている。余計なことをする。『山猿』『海猿』如き恐れるにたりぬは。」

「しかし後ろを守って頂けるのは有難い」

「分かっておる。精々働いて貰おう。軍議はこれにて終わる」

 黒虎は書状を近くの松明に焼き捨てて宿舎に戻った。

 彼らが出て行った後、森の影から軍議の一部始終を聞いていたりゅうが駆け寄り、燃える途中の書状を松明から取り出した。書状を確認して闇へと消えていった。



 遠い東の居城、『江良城』天守閣で大将軍 大川 綱吉は、将軍家直属の忍『伊田忍軍』棟梁半蔵と密談をしていた。

「半蔵、手配は整ったのか?」

「はっ!山賊の棟梁黒虎は、部隊を『野山』に配置しました。一週間後には決行出来るかと」

「バカな山賊共には大金をチラつかせて働かせろ。『三種の神器』は伊田忍軍が回収しろ。国の宝だ、一つ拝みたいものだな」

「はっ!天皇直属の『山猿』『海猿』が嗅ぎまわっております。もうこちらの動きに気付いておると思われます。こちらの方は我が伊田忍軍が処理致します」

「天皇家などは、もう潰れる。関係無いわ。『山猿』『海猿』は全滅させろ」

 将軍が答える。その目には野心の炎が灯っていた。



 三日後、将軍家最強軍団本多部隊が一万の兵を引き連れて京の都を出発した。その後を追って、バージ部隊が出発した。それと同じ日にブラッド率いるマシュー隊、スチワート隊、ゴルディバ隊が伊予を出発した。劉隊は黒虎率いる山賊隊の後を等間隔に付いて行った。




 京を出発して本多軍は四日、隊列を組み『野上』に入っていた。細い山道である。一万の隊列は、長く連なっていた。本多将軍は苛立っていた。『三種の神器』を守るために、一万もの兵を引き連れたが、この長者の列では、支持をするにも時間が掛かりすぎてしまう。ここを側面から襲われてはひとたまりも無いと心配していた。森の中警備や下見は、将軍家直属の伊田忍軍が担当しているがその気配が感じられない。これはどういう事なのか?将軍は胸騒ぎを感じていた。しかしその心配は現実のものとなった。



 長い隊列が『野上大橋』と呼ばれる橋に差し掛かった。山賊の副棟梁赤虎は、爆薬を仕掛け待機していた。その隊列が半分に達しようとする時に、三種の神器を乗せた神輿が見えた。

「火を放て」

 号令と共に山賊が仕掛けた爆薬に次々と火の付いた弓矢を打ち込んだ。

「ドカーン」

 轟音と共に、橋を渡っている人間諸共に橋は崖に崩れ落ちていった。


 一瞬の出来事である、本多の前で橋が崩れ落ち、隊が分裂してしまった。

 「何事か?」と叫ぶ本多であったが、隊列が長く錯乱している兵士達から情報が一切入ってこなかった。その時である、隊列の右側の森の間から雪崩の如く山賊達が襲い掛かってきた。

 山賊達の奇襲である。側面を突かれしかも細道、片側は崖である。兵士たちは錯乱しており、しかも兵の半数が崩れた橋の向こうである。地の利は完全に不利である。しかも側面からの奇襲である。兵士たちは統制が取れず隊列は崩れ果てた。


「遅かったか!」

 駆けつけたバージ隊は目の前の惨劇を見て驚愕である。一万もの兵が分断されている。しかも山賊どもに兵士達は切り倒されて行く。五倍もの兵を相手に地の利を生かして攻略したのである。まあそれを読んでいたバージも凄いとしか言えない。

 隊列の先で、善戦している箇所があった。本多である。三種の神器の神輿の周りを、近くの兵士をまとめて守りながら戦っている。流石である。しかし細い道では残りの兵士も助けに入れず、しかも山賊の奇襲で錯乱している。

 バージ隊は森の中を走り抜け、『三種の神器』の近くまで寄って行った。

山賊の副棟梁『赤虎』・『青虎』が本多の隊を切り崩していた。全滅も時間の問題であろう。対岸から半分の隊が弓矢で応戦するが届かない。絶体絶命である。

 その時である。十名ほどの『影』が森を飛びぬけ神輿の前に立ちはだかった。そして山賊達と戦いだした。『山猿』『海猿』である。それにしても数か少ない。そしてよく見るとテルは肩からと額から血を流している。彼らは伊田忍軍の奇襲にあい、殆どの仲間を失いながら、『三種の神器』を守りに来たのだ。

テルはサムライソードを持ち、天皇から頂いた短剣を腰に挿して山賊副棟梁青虎と戦っていた。だが相手の方が強い、手負いのテルは神輿に追い詰められていた。

「テル!」

 ティナは大声を上げて混乱する戦場に飛び込んで行った。

「ティナ!チッ!作戦もあったものじゃない。バージ隊あの神輿を守るぞ」

 バージは指示をしてティナを追いかけた。


 テルは防戦一方であった。勝負にならない。実力が違いすぎる。

 追い詰められていた。青虎の大刀がテルの頭上に振り下ろされる瞬間、ティナはブラッドに貰ったクロスソードを抜いて受け止めた。

「ティナ!」

 テルが驚く。

「何故来た?」

 テルの言葉にティナは「友達だからさ」と答えた。

 しかしその側面に赤虎が槍を突きつけた。黒虎の剣を受けているティナは避けられない。その瞬間。スカーがランス(槍)を構えて受け止めた。

「世話が焼けるな〜ティナ。こいつの相手は俺がするお前はそいつをやれ。」

 スカーはティナに支持をして赤虎に一撃を加えた。


 突然天皇直属の『海猿』『山猿』が援軍に駆けつけ、しかも知らない異人までも加勢に来たので、山賊と戦っている本多は驚いたが、味方だと分かり戦いを続けた。


 赤虎とスカーの槍の戦いは一進一退であった。腕は互角。息の詰まる勝負である。

しかし二人の勝負に水を刺した男がいた。『黒虎』である。大刀がスカーを狙って切りつけた。スカーは間一髪でかわした。

「何をしておる。早く片付けぬか!」

 黒虎は赤虎に怒鳴りつけた。陣の後方で指示をしていた。黒虎は『三種の神器』の確保が中々出来ない前線に苛立って自分で乗り込んできたのだ。

2対1これは不利だな?と思ったスカーであったが、バージが駆けつけて来たのを見て安心した。

バージは黒虎に切りかかった。

「どうやらこいつが大将みたいだ」

「ならこいつをさっさと殺って終わらせる」

 バージは刀を構えた。邪魔をされた黒虎は、バージに切りかかった。


 ティナとテルは青虎と対峙して、奮闘していた。

「小僧面白い剣を持っている。何やら剣に術を掛けているようだ。お主を殺して頂くぞ」

 青虎はティナに容赦なく切りつける。ティナの剣には『火』の魔法が掛けられている。剣全体に炎が上っているのだ。

 何度か切りあっているうちに、テルのサムライソードが切り落とされ、テルは青虎に地面に叩きつけられた。テルは伊田忍軍と切りあい、山賊との戦いでボロボロだった。

「危ない!」

 ティナが叫んだが、動けないテルに青虎が切りつけた。間に合わない。

その瞬間、テルは叫びながら、腰の短刀を抜いて青虎の攻撃を防ごうとした。しかしその宝剣の先から眩い光が走り、物凄い勢いで刀身から水が飛び出した。水は刃物のような形になって、青虎に襲い掛かった。

青虎は大刀で防いだが、その大刀を水の刃が突き破り青虎の胸を切り裂いた。

青虎は叫びながら倒れた。一瞬の出来事でテルとティナが顔を見合わせる。すると天皇の言葉を思い出した。『水の魔法』お互い目で合図した。


 ティナとテルが喜びに浸っているその背後で、突然青虎が立ち上がり血を吐きながら神輿に切りかかた。青虎の大刀が神輿の屋根が壊し、三種の神器の収められている黄金の棺が露になった。

「まずい!」

ティアとテルは炎の剣と水の剣を振り上げ、青虎に切りつけた。

叫び声を上げた青虎であったが、そのまま黄金の棺を抉じ開けた。その時、両サイドに離れているお札のようなものが、破れるのをティアは見た。


「グオ〜!」

 何かが爆発したような音と共に、眩い光が一本の柱となって黄金の棺から天に向かって登っていった。青虎の身体は吹き飛ばされ地に叩きつけられ動かなくなった。

 さっきまで晴れていた上空が突然厚い雲に覆われて雷が次々と落ちた。その中心が黄金の棺から伸びる光の柱である。

何が起こったのか?この怪奇現象に山賊も兵士も固まり動きが取れない。


 光の柱の頂上に五芒星ペンタグラムの魔方陣が画かれた。

「陰陽師の呪印。ペンタグラムの魔方陣だ。」遅れて駆けつけたヒューベリックが叫んだ。


 その直後、光の柱の先の五芒星の中から『魔獣』が降り立った。怖ろしい魔獣には蛇のような八つの顔があり、胴体には全てを切り裂くような爪を持った手と足。背中には全てを覆い隠すような真赤な翼が生えていた。


突然の魔獣が現れた為、山賊、兵士共に我先にと逃げ出し大混乱になっていた。


怖ろしい魔獣は、八つの口から炎を吐き出し逃げ惑う山賊・兵士を焼き尽くし地上に降り立った。



次回『八岐大蛇』をお楽しみに


キャスト

 ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

 ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。ルシフェル船長

 バージ…五人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士

 りゅう…五人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。

 ヒューベリック…ドクター助手。白魔法・薬学の権威。

 テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる。

 スカー…二等航海士、バージの弟子。槍術の達人

 黒虎…山賊の棟梁、全国の山賊を集め、三種の神器を奪う計画を立てる。

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