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四大天使の秘宝  作者: TERU
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第4話「神の住む町 伊予」

「大鷲」から「伊予」に向う途中、港町「鳥井」で「テル」と出会うティナだったが・・・

四大天使の秘宝


第四話「神の住む町 伊予」


 港には沢山の人でごった返していた、活気がある。観光客や商売人などである。港のあちらこちらで客引きがたえない。

ここは『伊予』に近い『鳥井』という港である。沢山の観光客はここまで『船』で移動して、歩いて『伊予』に向かうそうだ。ここから北へ二十キロほどである。


海賊船『ルシフェル』は海賊旗を下ろし、帆を納め、なるべく目立たないように入港した。しかし異人が乗る千トンクラスの巨大船である。それは目立つ。入港してから、役人が来て大変な騒ぎとなってしまった。通訳のヒューべリックが上手く役人と話をして帰したが、かなりの金を賄賂として使ったようだ。心配してヒューベリックがブラッドに相談に行ったところ。

「ティアナから見たらはした金だ!」

 ブラッドは逆に交渉したヒューベリックを褒めた。


 百五十名程の異人が、突然上陸してきたのである、鳥井の『住民』や『商人』や『観光客』等は明らかにビックリしていた。しかしそこは商人である。すぐに客引きにかかった。どの国でも商人というのは恐ろしいものだ。


 海賊共は持ち前の度胸とジェスチャーで町に溶け込んでいた。数十日ぶりの陸に、異文化である。誰もがはしゃいでいた。海の男の最高のご褒美の一時である。


ブ ラッドはティアナと五人衆を引き連れて宿を借りた。そこで作戦会議を開いた。


「三種の神器が京の都を出発する日まで約一ヶ月、各自情報収集にあたる」

 ブラッドが口を開いた。

「ただ伊予の国はここから二十キロ程距離がある。この大人数で移動していたら大いに目立つ。その為、大半のメンバーは港に待機させる。残ったメンバーには、強奪・横暴などは目立った行動は絶対禁止する。見つければ、即首を刎ねろ!わかったな!」

 メンバーが緊張して頷く。


「伊予には、俺とスチワートとマシューが行く。各自三名の部下を揃えてくれ」

「ティアナとゴルディバ隊は港に残り、ルシフェルを守ってくれ」

 スティワートとマシューとゴルディバが頷く。

「ブラッド、もしかして伊予に行って浮気するつもり…。」

 ティアナが突っ込む。

「まさか…ティアナを信頼して船を任せているだけだよ」

「あらそう…わかったわ…」

 ブラッドが焦って説明したが、全然納得が行っていない様子でティアナが返事する。

「バージは京の都に何人か連れて潜入してくれ。それと京に向うルートを調べてくれ」

「分かった」

りゅうは京の近くに大きな町で『堺』という所がある、そこに情報を集めに行ってくれ」

「了解した」

「堺に何もなければ、京にいるバージと合流してくれ」

 劉は頷く。

「各隊は、一名魔術師を連れて行ってくれ連絡用だ。それと通訳に」

 皆が頷く。魔術の通信を使って連絡を取り合うのだ。携帯魔術通信機器はすぐに手に入るが、魔力のある魔術師しか使えない。しかも魔力によって距離がきまる。そこそこの魔術師を連れて行かないと直ぐ『圏外』になってしまうので、マシューの選りすぐりの部下を連れて行くことにした。

「ジャンパーは忍という影の集団がいるようだ、それとここには陰陽師という魔術師もいるようだ。各自気をつけるように。出発は三日後にする。準備を怠るな。解散」

 ブラッドが告げて会議は終了した。



 ティナは一人で商店街を回っていた。他の皆といると、荷物持ちにされて前も見えなくなるからだ。船を出る時、ニックに見つかりそうになり逃げて来た。ニックに見つかるとガラクタの山を持たされる。最年少とはいえガラクタを運ぶのは嫌だ。


 商店街で買い物を続けていると、威勢のいい声に人が群がっている。「魚屋」の前だ。

「さあ本日上がったばかりの鮪だよ!本日は百キロもある脂の乗った本鮪を目の前で解体して皆様に販売します。早いもの勝ちだよ!」

 言葉は分らないが、大きな魚を売っているのがわかる。

 通り過ぎようとティナが横切った瞬間。その『鮪師』をみてティナはビックリした。先日一行を付けてきていた、忍の少年だったからだ。少年は百キロもある大きな本鮪を大きな包丁で見事に捌き、群がるお客に威勢よく売っていた。その目はあの冷たい目では無く、温かく優しい目立った。

 お客が去った後、ティナは少年に駆け寄った。ティナに気づいた少年は逃げようとした。


「テル!!」

 ティナは呼んだ。驚いた表情の少年は足を止めた。


 小さな橋の掛った川沿いで、二人は無言のまま座っていた。というよりも言葉が喋れない。


「どうして俺の名前がわかった?」

「俺たちの言葉が分かるの?」

 ティナは驚いた。まさか言葉が通じるとは思わなかったからだ。

「忍は体術・忍術などの技術を学ぶが、あらゆる状況に対応出来るように文学も学ぶ、語学もその一つだ。何カ国語は多少わかる。お前達が大鷲で話している事もわかった」

「そうなんだ。凄いな〜年もあまり変わらなそうなのに」

「名前が分かったのはね、ペンダントの裏側に書いてあったからなんだ」

ティナの言葉に、テルはペンダントを見た。

「実は俺は捨子なんだけど、その時からこのブレスレットが手に付いていて離れないんだ。しかも成長に合わせて段々大きくなってきているんだ」

 ティナはテルにブレスレットを見せた。テルの表情は明らかに驚いていた。テルはブレスレットの『火』のマークと『名前』を見てから、ゆっくりと話し出した。

「実は俺も捨子なんだ、その時からこのネックレスがある。そしてこのネックレスは段々大きくなる」

「凄いよ。俺たち何もかも一緒だ。何かの運命だよ」

 ティナは目を輝かせていた。テルも心を開いたのであろう。優しい目になっていた。

「俺が拾われた家は、表向き漁師をしている。そしてその魚を販売している。全国各地の港町に俺達の支店があるのさ。しかし実体は天皇陛下直属の『忍』の組織なのだ。『海猿』と呼ばれている。その他に別組織で山を中心に活躍している忍は『山猿』というのだ。魚屋の『支店』は、まあ『支部』だね。住民に溶け込む事が一番の情報収集だからね。『大鷲』にあるのが本家で棟梁が俺の親父殿だ。拾った俺を小さい頃から育ててくれた。毎日厳しく忍びの修行をさせられた。木刀毎日殴りつけられ、剣で切りつけられた事もある。殺されるかと思ったよ」

 テルは悲しい顔をした。しかしすぐに笑顔になって話し続けた。

「天皇陛下直属の忍は、全国の平和を願い、情報を集めて、天皇に害なすものや悪人を始末するのが仕事だ。国のためなら、俺も我慢して闇に生きているのだ。人を殺す事もある。辛いよね」

 ティナは彼が心の中で嘆いているのがわかった。

「最近悪い噂が流れていてピリピリしている。全国を統括する将軍の謀反が噂になっている。前々から横暴だったのだが、将軍の座に満足していないらしい。その陰謀の焦点になっているのが、『三種の神器』なんだ。やつら『三種の神器』が移動する時に何かを狙ってくるはず。それを阻止しなくては」

 熱の籠った話をした後、ティナを見た。

「忍の俺が初めてあった君にここまで話すとは、正直言って自分でもビックリしている。何故かな?運命を感じるってやつかな?」 二人で笑った。

「そんな時に異人が現れてね、怪しいと思って君達を追跡したってことさ。『三種の神器』を狙って、伊予に現れるじゃないかってね。そこで一番近い港の鳥井の支店に来たら、君がいたってわけなのさ」

 その時テルの目が光った。

「ははは。ただの商船だよ。補給に入ろうと思ったら、大鷲の港は小さくてね〜それで鳥井にきたの。それで二十年に一度の祭りがあると聞いて、もう少しいるつもりなんだ」

 ティナはごまかす。彼らの国の宝物を盗もうとしているとは言えない。

「そうかならよかった。君を殺したくない」

 さらりと殺すと言われて背筋が凍るティナであった。


 その時、ティナに何かが飛んできた。『飛苦無』である。それをテルが包丁で弾いた。そんな物持っていたの?ティナは"ゾッ"としたが今はそれどころではない。


 すると「テル!」と叫びながら二人の忍がティナの背後に回り、短剣を突き付けた。

「テル大丈夫か?突然店をいなくなって心配したぜ。なんだこの異人は」

「ティナだ、友達になんだ。危ない物はさげてくれ」

「怖かったよ…」

 ティナは腰が砕けて座り込んだ。

「ごめんね。彼らは俺を助けようとしてくれたんだ。ゆるしてやってくれ」

 半べそになりながら、ティナは立ち上がった。

「ティナおれは帰るから、また会おう。いや会えるような気がする」

 テルは他の忍達と共に消えて行った。ティナはまた、地面に座り込んだ。



 三日間の準備を終えて、『ブラッド隊』、『バージ隊』、『劉隊』が伊予の国に出発した。ティナはバージ隊についた。伊予にまず移動して拠点を作り、それからバージ隊・劉隊がそれぞれ出発する事になっている。


 伊予の国は『観光客』・『参拝者』そして祭りの準備で住民達が集まりごった返していた。二十年に一度の祭りである。これは一大イベントである。余りにも賑やかなので、ブラッドは一日自由時間を作った。というよりも遊ぶ拠点を探すのが見え見えだったが、一行もそれに乗った。


 ティナは一通り遊んで、集合場所に戻ると拠点が決まっていた。一行はそこに移動した。案の定『遊郭』の近くだった。どうゆうこと?とニックに聞く。

「何か勘違いしていないか?遊郭に近いが関係無い。『神社』と呼ばれる神殿の近くに川がある。その川沿いの『宿』なんだ。この川は『神社』へと続いている。最高の立地だろ?」ニックが言い訳している。

「ティアナに言っちゃおうかな?」いやそれはヤバイとニックがあせっていた。


 その晩メンバーが集まって『宴会』を開いた。その時ティナはブラッドに近づき話をした。

「ブラッド船長、本当にこの国の宝を盗むの?」

「四大天使の秘宝であるなら頂く。しかしそれじゃなかったら盗まない。この国の宝を盗んだら、この国の総力を上げて狙われそうだからな。どうしてそんな事を聞く」

 ブラッドがティナに問いかけた。ティナは鳥井で会った少年「テル」の話をブラッドに話した。ブラッドは少し考えて答えた。

「将軍の反乱?ヤバイ話になりそうだな。まあ『ルシフェル』にはまだ貯えがある。四大天使の秘宝と確認出来なかったら、さっさとこの国とはおさらばするさ」

 ブラッドはティナの頭を撫でた。ほっとした。テルと戦わなくて済むと思った。ブラッドは計算が出来る。割に合わなければ、手を引くことが出来る男なのだ。

「ティナお前は運命を信じるか?」

 唐突な質問をして来たので、ティナは考え込んだ。

「俺はお前と出会った時、運命を感じた。お前とその少年が会ったのも運命かもしれないな」

ブラッドが優しい声で話した。ティナはブラッドの言葉に『心』を躍らせた。



 一行が宴会で盛り上がっているころ、伊予から遥か東に六百キロ離れた「江良」の国の「江良城」の豪華な天守閣で一人の男が何やら手紙を読んでいた。大将軍「大川 綱吉」である。

「誰かおらぬか?」

「はっ!ここに」将軍家直属の忍大将が現れた。

「半蔵か、首尾はどうなっている」

「三種の神器の護衛に将軍家軍団長本多様が一万の兵を率いて、京に入りました」

「そうか本多か。本当に惜しい男を亡くすな」

「ですが将軍家最高の軍団で守らなければ、天皇家に怪しまれます」

「そうだな、それでは本多には華々しくちってもらおう」

「はっ!」

「賊の手筈はどうだ?」

「全国各地から堺に集まっております」

「三種の神器が、盗まれてしまったら、天皇家の権威もそがれよう」

「将軍家最強の軍団が全滅してしまうのは痛いが、天皇家の没落より安いわ。あの小僧が天皇の座から追いやられるのも時間の問題だな」

「はっ!それと何やら怪しい異人の集団が鳥井から伊予にむかったそうです」

「ふん!そんな異人の件はお主の好きにせよ」

「はっ!」

 半蔵は闇に消えた。


 翌朝、またもや一行は飲み過ぎで二日酔いであった。頭を抱えながら『バージ』部隊、『劉』部隊はそれぞれ『京の都』と『堺』に向かった。

 出発前にブラッドがティナを呼び止めた。

「ティナお前が船に来て何年だ?」

「え〜と、5年です」

 フィリップ神父が亡くなって五年になるのだ。その恨みはティナの心の奥底にまだ確りと残っていた。その心をブラッドは気付いていた。

「ティナこれをお前にやろう」

 ブラッドは十字架の形をした、一本の剣を取り出した。

「これはポルトギースで伝説のドラキュラと戦った時に手に入れた『剣』だ。」

「スゲ・・・これを俺に?本当に?ありがとう。」

「これには火の魔法が込められている。お前を助けてくれるだろう。」

 感激して興奮しているティナにブラッドは話を続けた。

「ドラキュラは何百年間、人間に憎しみを持っていた。しかしその憎しみで身を滅ぼしたのだ。ティナ憎しみはいつか己を滅ぼす。だからお前はこの剣を持って自らの手で、憎しみを断ち切る戦士となるのだ。わかったな。」

「うん・・・分かったよブラッド!ありがとう。」

 ティナは言ったが分かっちゃいない。興奮しているだけだ。しかしブラッドは彼の憎しみの炎を断ち切る話をしたのだった。


 一行を見送るブラッドにマシューが話しかけた。

「ティナにはそんな話をしても少し早いのでは?」

「いいのだ。ティナはあの剣を受け取った、『この瞬間のこの出来事』は一生忘れないだろう。そして俺の言った言葉も一生忘れない。それだけで十分だ。いつか彼にも分かる日が来る。その日、俺の言葉を思い出してくれる。それまで待とう。」

 彼らを見送りながら、ブラッドは答えた。



 ティナはまだ興奮冷めやらず、ウキウキだった。

「ティナよブラッドの言葉を忘れるな、ブラッドは誰よりも悲しみを背負っている。だからいつも温かく、そして優しく人と接しているのだ。」

 ブラッドとずっと旅を続けているバージが言う。

「うん!分かったバージ!」

「それじゃ〜行くぜ!!みんな〜!!」

 何故かまたティナが号令をかけて、一行は京の都に向った。



 しかしこれから起こる惨劇を彼ら一行はまだ知らない。

次回「京の都」をお楽しみに



キャスト

ティナ…赤髪に黒い目を持つ少年、この物語の主人公

ブラッド…「赤毛のブラッド」として海軍・海賊に恐れられている。ルシフェルの船長

ティアナ…海賊船ルシフェル副船長兼経理担当。森の種族「エルフ」にしてブラッドの妻

バージ…五人衆の一人。ブラッドの幼馴染。一等航海士として舵を任されている。最強の剣士

ゴルディバ…五人衆の一人。甲板長。巨漢ながら性格は温厚。ただし戦いの時は狂戦士となる

スチワート…五人衆の一人。砲撃長。最高の狙撃手。新兵器開発が趣味

マシュー…五人衆の一人。通信長兼ドクター。白・黒魔術の最高位の魔術師。

りゅう…五人衆の一人。コック長。武術の達人。その正体は、シン国の皇太子。

スカー…二等航海士、バージの弟子。槍術の達人

ゴンゴ…副甲板長、ゴルディバの弟。兄と同じ巨漢で狂戦士。

ニック…副砲撃長、狙撃手。スチワートと同じで新兵器開発が趣味

ヒューベリック…ドクター助手。白魔法・薬学の権威。

パリス…副料理長。武術家。りゅうを崇拝している。

テル…ジャンパー国 天皇直属の忍 ティナと友達になる




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