表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そこら中に

作者: 昼咲月見草
掲載日:2020/12/07

朝、そこら中に愛が転がっている。


きらきらと。


まるで朝の日差しに空気が輝くように。

朝露が木々や葉っぱ、花びらの上で輝くように。

たくさんの水晶玉がころころと転がっているように。


そこら中に愛が転がって輝いている。


男が1人、その愛を1つ拾い上げた。

少し離れたところで、女も1つ、愛を拾った。

朝日にかざして覗いてみる。

きらきらと輝きながら心が見える。


それは子どもが忙しい父のために探している四つ葉のクローバー。

男は微笑んで大きくその背の翼を広げる。

そして子供の元へと飛び立った。

持てる愛はただ1つ。

朝食の支度をしていた母の元へとそっと預ける。

静かに座っていた子どもを振り返って母親は言った。

「昨日遅くまで探してたクローバー、今日ママと一緒に探しに行こう」

子どもは大喜びで母親に抱きついた。


それは、祖母が寝てしまった孫のために読んだ絵本の1ページ。

女は目を伏せその背の翼を静かに広げる。

そして老人の元へと飛び立った。

持てる愛はたった1つ。

テレビを見ていた孫の心にそっと届ける。

孫は食後のお茶を飲んでいた祖母に笑って言った。

「おばあちゃん、あとでまた昨日のご本読んでね」

にっこりうなずいた祖母のそば、女は小さく微笑んだ。



それは、妻が夫のためにカロリー計算して作った食事。


それは、長年付き合った恋人のために作ったマフラー。


それは、遠くへ引越した友人への誕生日プレゼント。


そしてそれは…。



最初は恋だったものが変わってしまった執着。


最初は信頼だったものが変わってしまった不安。


最初は友情だったものが変わってしまった依存。


愛だったもののかけら。美しいかけら。


歪んだが故に輝くバロックパール。


それらを彼と彼女は1つずつ、大切に空へと持って駆け上がる。


かけらを天で日にかざす。

かけらを天で光に返す。

光の粒子は風に舞う。

舞って再び愛へと帰る。


天使は拾う。


人は落とす。


天使は帰す。


人は愛する。


拾いきれない愛が歪んでかけらに変わる。


拾うのをやめない天使に空が泣く。



風が吹く日はお休みで。

雨打ち付ける日もお休みで。

週に一度はお休みで。


天使が休んだ次の日は、たくさんの愛が転がっている。


朝日を受けて輝いている。


天使たちは今日も拾う。


1つずつ、大切に。


愛も、愛だったものも、1つづつ。


今日もそこら中に、愛が転がって落ちている。





この詩は、すみいちろ様の「にこりんころりんころりんこ」、徳田タクト様の「─ 徳田タクトの詩集 ─」より、「こころのクリスタルを」と「花弁日和」に発想を得て書かれています。

お二方には、いつも素晴らしい詩を読ませていただき、本当にありがとうございます。

最初に、「愛はそこら中に転がっている」という言葉が浮かんだ時、いくつかの詩が頭に浮かびました。

この詩は、皆様の作り出される作品に接する中で生まれたものだと思います。

本当にありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ