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そこら中に

作者: 昼咲月見草

朝、そこら中に愛が転がっている。


きらきらと。


まるで朝の日差しに空気が輝くように。

朝露が木々や葉っぱ、花びらの上で輝くように。

たくさんの水晶玉がころころと転がっているように。


そこら中に愛が転がって輝いている。


男が1人、その愛を1つ拾い上げた。

少し離れたところで、女も1つ、愛を拾った。

朝日にかざして覗いてみる。

きらきらと輝きながら心が見える。


それは子どもが忙しい父のために探している四つ葉のクローバー。

男は微笑んで大きくその背の翼を広げる。

そして子供の元へと飛び立った。

持てる愛はただ1つ。

朝食の支度をしていた母の元へとそっと預ける。

静かに座っていた子どもを振り返って母親は言った。

「昨日遅くまで探してたクローバー、今日ママと一緒に探しに行こう」

子どもは大喜びで母親に抱きついた。


それは、祖母が寝てしまった孫のために読んだ絵本の1ページ。

女は目を伏せその背の翼を静かに広げる。

そして老人の元へと飛び立った。

持てる愛はたった1つ。

テレビを見ていた孫の心にそっと届ける。

孫は食後のお茶を飲んでいた祖母に笑って言った。

「おばあちゃん、あとでまた昨日のご本読んでね」

にっこりうなずいた祖母のそば、女は小さく微笑んだ。



それは、妻が夫のためにカロリー計算して作った食事。


それは、長年付き合った恋人のために作ったマフラー。


それは、遠くへ引越した友人への誕生日プレゼント。


そしてそれは…。



最初は恋だったものが変わってしまった執着。


最初は信頼だったものが変わってしまった不安。


最初は友情だったものが変わってしまった依存。


愛だったもののかけら。美しいかけら。


歪んだが故に輝くバロックパール。


それらを彼と彼女は1つずつ、大切に空へと持って駆け上がる。


かけらを天で日にかざす。

かけらを天で光に返す。

光の粒子は風に舞う。

舞って再び愛へと帰る。


天使は拾う。


人は落とす。


天使は帰す。


人は愛する。


拾いきれない愛が歪んでかけらに変わる。


拾うのをやめない天使に空が泣く。



風が吹く日はお休みで。

雨打ち付ける日もお休みで。

週に一度はお休みで。


天使が休んだ次の日は、たくさんの愛が転がっている。


朝日を受けて輝いている。


天使たちは今日も拾う。


1つずつ、大切に。


愛も、愛だったものも、1つづつ。


今日もそこら中に、愛が転がって落ちている。





この詩は、すみいちろ様の「にこりんころりんころりんこ」、徳田タクト様の「─ 徳田タクトの詩集 ─」より、「こころのクリスタルを」と「花弁日和」に発想を得て書かれています。

お二方には、いつも素晴らしい詩を読ませていただき、本当にありがとうございます。

最初に、「愛はそこら中に転がっている」という言葉が浮かんだ時、いくつかの詩が頭に浮かびました。

この詩は、皆様の作り出される作品に接する中で生まれたものだと思います。

本当にありがとうございます。


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