0-6 ステータス画面ってそう使うの!?
――森を抜ける。
冒険者のレニーもツィーハオも茂みを出た。
2人には森を出たらすぐに冒険者ギルドに救援を頼むように伝えている。
悠太は適当な位置にボリスの大柄な身体を降ろすと、振り返って森を見据えた。
丁度その時、バキバキと枝を折りながら、大火熊がその身を起こした。
二本足で立つと、周囲の木々よりよほど背が高い。
「村近いな。流石に、ここら辺で食い止めないとヤバいか」
ボリスを運ぶ関係上、長らく逃げてきたが、この辺りが限界であった。
できれば意識のない彼を安全な場所に運んでから相手にしたいところだと……考えを巡らせたところで村から悠太を呼ぶ声がした。
「ユータさん!」
駆けてきたのはカナリーであった。
何の事情か片手を後ろ手に隠している。
「カナリーさん逃げて! こっちは危ない!」
そう叫んでも止まらなかったことが一つ。
「ユータ避けろ! そいつ悪い奴だ!」
更に後方から追って来た相棒が叫んだことが一つ。
それぞれ悠太の次の行動を決める要因となった。
とぼけたふりをして棒立ちをしていると、カナリーは悠太の目前で表情を一変させ、鋭い爪の片腕を突き出した。
それはあらかじめ彼が浮かべていたステータス画面に弾かれる。
「カナリーさん、何で……」
画面は悠太以外には不可視故に、騙し打ちを防ぐのにも適していた。
「あはははは!」
カナリーは攻撃を防がれたことも本性がバレたことも意に介さず、壊れた笑い声をあげて悠太の横を走り抜けた。
大火熊の下へと向かう彼女を止めようとするも、振り回された腕輪の爪がそれを拒んだ。
「カナリーさん!」
呼び止める声も虚しく、カナリーは大火熊を見上げる足下まで近付いた。
「ウッド! ああ私の弟! 助けなさい! こいつらを、私の狩場を荒らす冒険者共を殺して! そして私の……」
狂った演説者を、大きな影が覆った。
「ウッド……?」
カナリーをすっぽり覆って余りある熊の前腕が迫った。
逃げようとして下半身を抑えつけられた彼女は、カエルが潰れたような声を上げた。
「何で、ウッド! 言うこと聞きなさい! これ腕輪、熊母堂の腕輪よ! 言うこと聞け! 何で、ここは私の狩場で……私の思い通りのはずなのに!」
助けに入ろうとする悠太の腕をネピテルが掴んだ。
「もう手遅れだよ。見て」
視線の先で、大火熊が彼女を抑えつける腕に、容赦なく火を宿した。
爪先まで燃える炎がカナリーの身を包む。
「ぎゃあああ! 熱い! 何で、腕輪は? 糞が、役に立たない! 止めろあんたの姉だぞ! 私は、わた、し……やだ、熱、許し……」
断末魔は徐々に勢いを失い、やがて炭になって月夜に散った。
その様子を、大火熊は憎しみに猛った顔で眺めていた。
「あの魔導具……腕輪で火熊を作って操ってたんだ。まあ、大火熊は例外みたいだけどね。処理に困ってる時点で命令なんか聞くはずないって、わかってたろうに」
その判断すらできないほど、彼女は追い込まれていた。
「なあ、カナリーさんの言ってたウッドって、弟さんの名前だよな」
「……そうだね。カナリーから聞いたけど、魔導具の力に呑まれた姉弟の成れの果てってとこ」
「……そっか」
成れの果てになりかけたことのある彼女が言うのだから、そうなのであろう。
「……何がカナリーさんを狂わせたんだろう。彼女の言ってた狩場ってのは、自分の命より重いものだったのかな」
放心はしていなかった。
この世界で凄惨な光景を見たのは初めてではない。
ただし、彼女のような最期を目にしたのは初めてで、どうしようもなく悲しく寂しい気持ちになるのであった。
「一応言っておくけど、ユータが気を病むことは何もないよ。自業自得ってやつだから」
冷淡に思える突き放しは、自分の心を支えてくれているのだとわかっているから、悠太は微笑んでやる。
「……大丈夫、冷静だ。今は大火熊が村に着く前に何とかしないと」
その為には多少無理をする必要がありそうで、無理をするには守るものは少ない方が良かった。
「ネピテル、悪いけどボリスさんを安全な場所まで連れてってくれるか?」
頼み事に少女は頬を膨らませた。
「むー、ボクがこのおっさん担げないのわかってるよね?」
「わかってる。悪いけどあれ使ってくれ」
「随分とまあ簡単に言ってくれちゃって……」
ぶつくさ言いながら、ネピテルは抜いた刀身をボリスの頬に当てる。
刀身が黒い雷を纏った。
「後で火熊のステーキ奢りね――『傀儡界雷』」
バリっと、横たえられていた大男の身体に電気が走る。
すると、ボリスの肘が、膝が跳ねて、ロボットダンスのような動きで立ち上がる。
そして、バチっとネピテルに顔を向ける。
腰が引け気味の彼女は、ファイティングポーズのまま後退りしていく。
傀儡界雷は本来、刀身で触れた相手を電気で操るものであった。
しかし故あって魔剣に宿る魔王に恨まれるネピテルが使うとそうもいかない。
「馬鹿魔王め……これさえなけりゃ使い勝手良い技なのに……」
口惜しそうに言うのと同時、意識のないボリスが腕を振り被って少女に襲いかかった。
ヒラリと躱して、片手を上げる。
「じゃ、後任した」
「おう、任された」
ネピテルは月に影を躍らせ、制御不能のボリスに追われながら村へ駆ける。
悠太は手を虚空にかざし、巨体と相対した。
大火熊は立ち上がり、轟く雄叫びをあげた。
漆黒の大地と深緑の森を照らしつけて、橙色の灯が強まっていく。
「さあ戦闘開始だ」
視線が交錯し、当てられる殺気が一段と濃くなった。
――仁王立つ大火熊は腰を落として上半身を捻ると、その極太の腕に灯した火を推進力に、森の木々ごとバキバキと薙ぎ払う一撃を繰り出した。
悠太は垂直に三メートル程も跳んで躱しつつ、薙ぎ払いの腕の毛を掴み、そのまま腕伝いに巨体を駆け上る。
大火熊は忌まわしい小虫を身体から振り払うべく、咆哮をあげて、火の粉のような赤い粒子を全身に纏うと――瞬間的に全身を炎上させた。
「う熱っちぃ!」
たまらず肩口から飛び退いた悠太は、空中で追撃を仕掛けてくる熊の張り手を受け止めようと、盾としてステータス画面を浮かべる。
画面はきっちりその場に留まったが、表面積が違いすぎて張り手にめり込み、呑まれる。
肉球の一部が破れ、血が噴き出す。
そのまま勢いを止めない張り手は悠太を捉え、凄まじい衝撃で吹っ飛ばす。
「がはっ」
激しい一撃をもらった悠太は、空中で後方に手をかざし、画面を浮かべ直すと身体を受け止めさせた。
そのままもう一度足元に画面を出し直し、宙の足場とする。
もはや少年にとってステータス画面は読むものではなく、掴んだり乗ったりするものになっていた。
一方で大火熊は、張り手で木っ端微塵になっているはずの人間が五体を保っていることと、自分の腕を襲った謎の激痛に混乱していた。
この人間は、衝撃に対して強く、手を出すと反撃を食らうことを覚えた。
――互いに次の一手へと移る。
大火熊は唸り声をあげながら、口元に赤い粒子を集めた。
対する悠太は、青い粒子を集めた。
「ええっと確か『集歌』は……靡く雫よ、忌み憎まれし小僧は大海知らずして――」
唱えたのは、この世界で必死に学んだ言葉の羅列。
いわゆる呪文――魔法を放つ準備であった。
――靡く雫よ、忌み憎まれし小僧は大海知らずして、僧の説法目覚ましく、耐え忍ぶる日々の至りし干天に、踊り踊りて狂い正しく幾星霜、風音雨音鼓の合図、哀れ小僧は泥に伏し、叶わぬ円卓、畔の影の塚穴に、宿れ御霊の光。
――水の魔法の詠唱。
青い粒子が悠太のステータス画面へと集まっていく。
熊は十分に赤い粒子を集め終えると、身体を大きく仰け反らせ、胸いっぱいに息を吸った。
その光景を見て、悠太は繰り出す魔法を決めた。
獣の息吹はカッと光り、熱線となって悠太へ、ひいては後方の村へと撃ち出された。
「宿れ御霊の光――」
呪文を唱え終わった彼は、迫る熱線に向けてステータス画面を出した。
「コール! 『氷ノ鍛冶師・盾』!」
画面を中心に青い光が渦巻いて、夜空に氷山のような巨大な氷塊を築き上げる。
轟々と、盾を模したそれが熱線を受け止めて、蒸発しながらも相殺する。
蒸気が周囲一帯に濃霧をばら撒いた。
――濃霧の中、大火熊は混乱を重ねて戸惑っていた。
恐らく、まだあの人間を仕留められていない。
あんなに小さな存在であるにも関わらず、獣の強靭な攻撃に耐え、炎すらも受け止めた。
そんな存在を、目の前の濃霧で見失っている事実に恐怖した。
目の前の事実と光景は、獣がいつも見ている――自分の狩場のものではなかった。
――火熊の狩猟は夜が良い。
身を守る為に火を灯す彼らは、闇の中でも霧の中でも、よく見える。
悠太は濃霧の中で揺れる巨大な炎に向かって、宙を跳んだ。
足元にステータス画面を浮かべ、また跳んでは足場を作る。
そうやって近づいて、大火熊の胸元に飛び移る。
片手で剛毛を掴み、片手をその厚い毛皮に当てた。
違和感に気付いた熊が身体を揺らす。
「悪いが痛いぞ」
悠太はお構いなくステータス画面を浮かべた――大火熊の皮下に向かって。
血飛沫が飛び散り、獣の絶叫が上がった。
――そのステータス画面は、世界の理を無視する存在である。
悠太以外の目には見えず、しかし確かに存在し、現れた位置から絶対に動かず、如何なる場合も傷つかず……そして必ず、手の平から15センチ先に出現する。
その距離は絶対的で、既にそこに存在していたモノを破壊してでもそこに現れる。
一度では、毛皮をえぐる程度。
「もう一度、ステータス・オープン」
画面を消して腕を押しつけ、二度出すと肉が弾ける。
「もう一度! ステータス・オープン……!」
更に血肉の海へと腕を突っ込み、三度目はかなり深い体内に傷を負わせた。
激痛に大暴れする巨体にしがみつきながら、ズポリと抜いた悠太の腕は、肩口まで赤く染まっていた。
悠太は、この最強の盾にして最強の矛でもあるこのステータス画面が、心底嫌いである。
大火熊の胸は、痛みにのたうち回ったせいでズタボロであった。
やがて動くほどに痛みが増すことに気づいた巨体は、立ったまま動きを止め、胸の違和感を睨み付ける。
濃霧も晴れてきて、再度互いの視線がかち合う。
大火熊の瞳は、鳶色であった。
「……くそ」
カナリーの顔が脳裏に過る。
今日、村で出会ったばかりで、ウバ茶を振る舞い、ラッキーを楽し気に眺め、弟との冒険を誇った冒険者の女性。
目の前に映る魔物は、定かではないがその弟だという。
「……ウッドさん! ウッドさん目を覚ませ!」
縁もゆかりもない悠太の声を届かせることが難しいのは承知の上であった。
それでも、元人間とわかっていながら問答無用で殺すなどできるはずがなかった。
いわゆる免罪符のような叫びは結局届かず、獣は憎らし気に瞳を歪ませて、赤い粒子を全身に集め始めた。
「ウッドさん!」
あの、全身を炎上させる技が来る。
――元の世界に戻れるだろうか。
自分はゲームのような異世界にいる。
そこまでは、もういい諦めた。
問題は、あれだけ帰りたかった元の世界に、自分はもうそぐわないのではないかということである。
最初は、返り血を浴びて生き延びた。
次に、狩る為に魔物の命を奪った。
そして、今、守る為に元人間かもしれない命を奪おうといている自分は、元の世界に帰れたとして――元の世界の自分に戻れるであろうか。
「……ちくしょ……コール――」
魔法を唱える。詠唱は省略した。
発動に必要な赤い粒子は、大火熊が十分に集めてくれたから。
「『炎ノ槍』!」
巨体を覆う膨大な粒子を横取りして、逆巻くそれらは夜空にそびえる巨大な槍と化す。
そして、炎の槍は獣の胸に煌々と突き立てられた。
剛毛と厚い皮膚は、外部から焼かれることには強いであろう。
しかし、ステータス画面で風穴を空けた胸に撃ち込まれたとあらば話は違ってくる。
炎の槍は大火熊の身体の内側から、全てを焼き尽くした。
「……ごめん」
目と口から炎を溢れさせゆっくりと傾いていく巨体から離れて、宙で見送る。
――ズシンと、大地が揺れて、火熊の碧洞は静寂を取り戻した。
夜空に浮かぶステータス画面は、『経験値』と記載された数値を激しく躍らせて、山田悠太のレベルを20から35に改めた。
命の重みを勝手に数値化するそれが、悠太は本当に嫌いであった。
◇◇◇◇◇
翌朝、ベアライト村は快晴であった。
宿屋で一夜を明かした悠太とネピテルは、カナリーの家の裏庭を訪れた。
既に事件の真相はギルドに報告している。
大火熊の遺体周辺からは熊母堂の腕輪、地下室からは行方不明であった冒険者たちのタグが回収された。
忙しなく家の内外を調査員が行き来している中、悠太は木を組みあわせ姉弟の墓を作り、手を合わせた。
「辛気臭いなぁ」
隣で小さな石碑を砂山に乗せているネピテルが、視線もくれずにぼやいた。
「うるせ。せめて弔ってあげないと。二人とも俺らと同じ冒険者だったんだから」
「悪人だよ?」
「そう、だけど。でも、ここの狩場を見つけた。火熊の素材が灯りとして出回るようになって、助かった村や人は多いんじゃないかと思う。そう考えると……俺には憎み切れない」
「ふーん」
ぱんぱんと砂山を叩いて固め、彼女は立ち上がった。
「お前こそ、ラッキーのお墓作ってやってるんだな。そういうのやらないと思ってた」
「ま、強敵だったからね。というか、ボクを何だと思ってるんだよ」
「無神経」
拳でこめかみをぐりぐりされる。
「痛ててて。悪かったって、やめろって」
墓の前でじゃれつく2人に、声をかける3人の男がいた。
「お前たち、ここにいたのか」
大柄なスキンヘッドのボリス、その弟のレニー、そして森で出会ったツィーハオであった。
「誰だっけ?」
相変わらず無神経なネピテルを退けて、悠太は3人に向き合った。
「昨日はどうも。3人とも無事で良かった」
当たり障りない挨拶に三者三様の返しがくる。
「いえ、こちらこそ。それに、昨日は、相棒の仇を討ってもらって、本当にありがとう」
「けっ、その仇さんの墓なんか作ってやがるぜこのランク1」
「レニー、少し黙ってろ」
未だ憎まれ口の止まないレニーを制して、ボリスが悠太を見下ろした。
厳つい顔つきと昨日因縁をつけられた経緯もあり、少し身構えたが、差し出されたのは一枚の羊皮紙であった。
彼が持つと随分と小さく見える。
「ひねくれた弟ですまないな。これでもこの推薦状に署名はしている。内心では認めているんだ。許してやってくれ」
「推薦状?」
首を傾げる悠太を抑えつけて、ネピテルが目を輝かせた。
「推薦状! そっかいいね、あんたが! いやぁ悪いねわざわざ」
「お、おう?」
ネピテルを払いのけ、戸惑うボリスから悠太は推薦状とやらを受け取り目を落とす。
「ええと……大火熊討伐に多大な貢献をしたとして、冒険者ユータをランク3に推薦する……」
「ギルド本部に渡せ。関与の証言に過ぎないが、調査が進みこの一件が大事になるにつれ、認められる可能性は高くなるはずだ。
少なくとも即時ランク2の試験クエストを受けることくらいは許可されるだろう」
「凄ぇ、でも何でここまで……」
てっきり敵意を抱かれているものと思っていたので、素直に疑問に思った。
ボリスは頬をかき、決まりが悪そうに視線を逸らす。
「弟から大火熊を仕留めたのはお前だと聞いた。俺を運び助けたこともな。助けられた俺たちにできる礼はこの程度だ。
それに、正直、お前はランク1にしておくには勿体ない……腹立たしい程にな」
「ボリスさん……ありがとう」
素直にありがたい申し出に悠太は礼を言った。
第一印象よりも話の分かる相手だと思った。
しかし、冒険者同士がわかり合う中、推薦状をひったくる少女がいた。
「ちょっと待って! これボクの名前ない! おいハゲこらどういうことだよ!」
「ハ……何だお前は」
「誰だよてめぇ! 兄貴に何言いやがる!」
「ユータさんの妹さんか何かかな?」
無理もなかった。3人ともネピテルとは接点がない。
「誰が妹だ! ボクはネピテル! この事件の真相を解き明かした名探偵だぞ!」
「何を言って……ぷ、兄貴、こいつランク1ですぜ」
「ふん、ランク1の戯言など誰が信じる。しっしっ、あっち行ってろ小娘」
「そのランクで決め付けんの止めろ馬鹿兄弟!
ってか認識改めろよ! つーか馬鹿ハゲ、ボクお前を安全地帯まで運んだんだからな!」
「ふざけるな! その貧相な身体でこの『バッドアックス』たる俺をどう運ぶと言うのだ!」
「まな板め!」
ついにネピテルがレニーに飛びかかって、少女と兄弟はギャーギャーと喧嘩を始める。
悠太は呆れつつ、一応は助け舟を出してやる。
ネピテルの分析がなければ真相は分からなかったであろうし、カナリーの犯行は止められなくなっていただろう。
貢献度は間違いなく一番だ、という風になだめながら一通り説明する。
「お前が言うならそうなのだろう。だが俺はこのガキが嫌いだ。推薦はせん」
これは少女の日頃の行いと態度のせいなので、悠太は引き下がった。
「やだやだ! ボクの手柄ぁ!」
もう街に戻る馬車の出る時間だと言う。
駄々をこねるネピテルを引きずって、悠太は3人に別れを告げ、ベアライト村を後にするのであった。
◇◇◇◇◇
ヘビーな散歩の帰り道。
湿地のぬかるんだ小道、小鳥は歌い、馬車は揺れる。
推薦状の改竄に夢中なネピテルを横目に、現代日本で育ったはずの悠太はぼんやりと考えた。
RPGゲームのような世界。
剣があって、魔法があって、魔物がいて、不思議な道具がある。
そんな世界で自分は、物語の主人公のような強力な力を与えられた。
しかしまるで気分は良くない。
何故ならこの世界の人々が、魔物さえも生きているからである。
慣れてしまうと元の世界に戻れるかが不安になる。
ただし、慣れない限りこの世界では生きていけないことは間違いなかった。
晴れの日差しが温かい。
馬車の揺れが心地よい。
考え事が睡魔を呼んできて――少年はこの日に至るまでの夢を見た。
ご覧いただき、ありがとうございました!
今回は読み切り的な感じで、主人公がある程度異世界に馴染んだ段階でのお話でした。
実質的には次回が第1話になります。トラックに撥ねられます。
初めての投稿でいろいろと温度を測りかねていますが、少年漫画的で、多少のチート、多少のハーレムを目指しております。
ご評価、ブックマーク、ご感想などを頂けますと大変励みになります!
今後ともよろしくお願い申し上げます!
以下、用語設定(作者こういうの好きです)
『火熊の灯篭』
火熊の毛を灯具の中に設置した魔導具。毛の本数で明るさを調節できる。
技名『一本灯し』『二本灯し』『三本灯し』。
この世界の照明は基本的にロウソクかこれか。
『熊母堂の腕輪』
熊母堂と呼ばれる巨大火熊の胎盤から作られた魔導具。
嵌めた腕が強化され、その腕で命を奪った相手を火熊へと変貌させる。
使用回数に比例して使用者自身も熊へと近づいていく。
また変貌した火熊は、生前の業の深さにより巨大化・凶暴化するという。
『カナリー&ウッド』
西方の村で生まれた双子の姉弟。
木には鳥が留まり羽を休める。鳥は木の種を遠くまで運び繁栄の助けとなる。
互いに支え合って生きてほしいとの願いが込められた名前であった。