第87話 幼馴染6
そうして、俺自身の変化も確かに感じていた頃─────・。
予想していない形で、サリエルの言っていた通りになって行こうとしているのか、俺達の関係は変化しようとしていく。
♢♢
ある時、俺は父にサリアロス公爵邸へと呼び戻された。
「手紙ではなく、精霊による至急の呼び出しとは、珍しいですね」
屋敷へ着いたばかりの俺に、父は言った。
「ラドレス公爵家のご令嬢との婚約は無くなるかも知れん」
帰って来た直後に聞いた言葉に、フリーズして、手にしていた鞄を落としてしまい、静かな部屋にドサリと音がなる。
「何故…ですか」
「…前から、持ち上がっていた話でな。
王宮の様子が変わってしまったのだ。
今まで中立を保ってきたが、状況が変わった」
「それと、俺との婚約に何の関係が?」
「あるのだよ、サリアロス公爵と、ラドレス公爵は同じ公爵位かも知れん。
しかし、我々は王家あってこそ公爵で居られるのだ。
だが、ラドレス公爵は別格だ。
己に欲が無いだけで、魔力では王家を滅ぼせる力を秘めている。故に彼に逆らえる者はこの王国内には居ないだろう」
「だから、何だと言うのです」
「このまま、王位継承権争いを続けてしまえば最悪、国は2つに分かれて内乱が始まってしまうだろう。
それを防ぐには、早期にラドレス公爵の立ち位置を中立では無く、明確にさせなければならない。
望むべくは王家の魔力を受け継ぐアーサー殿下に。つまり、サリエル嬢はアーサー殿下の婚約者に「納得出来ません」
「父様、俺は嫌です」
それは咄嗟に出た言葉で
父様は驚いた表情で目を見開いて俺を見た。
それも無理はない。
俺は父様の言う事に逆らった事がない。
当主である父様に逆らう事はあり得ない事だったし、いつもちゃんと理由を話してくれていたからだ。
今回も理由を話してくれたけれど、俺はそれを拒絶した。
そんな俺に父は言った。
「…まだ、決まった訳では無い。
だがそうなる可能性はあると言う心構えをして置いてくれ」