第82話 幼馴染1
《ラウルside》
幼い頃から一緒にいたけれど、これは恋だと自覚したのは学園に入学してからだと思う。
初めて会った時から、彼女の作る表情が美しいと思った。
婚約者として紹介された少女は、家族ぐるみで呼ばれるお茶会で出会うどの令嬢とも何処か雰囲気が違って、人の事は言えないが、彼女は幼ない容姿と裏腹にとてもませていたように思う。
婚約者だと言うのに、サリエルの態度はこちらがどう真摯に振る舞おうとも、婚約者に対しての恋だ何だというより、気の置けない幼馴染であり、親友のようだった。まだ子供だった俺は居心地の良さも感じていた。
だけど、学園に入学してから、サリエルとの関係は変化してきていた。
入学前は良くサリエルの住むラドレス公爵邸へと遊びに行っていたが、お互い寮に入り、クラスも違い、校舎も別となれば親友のような感覚で遊んでいた俺達は会う機会もめっきり減った。
婚約者として、2人の時間を過ごそうと改めて言うのも、どこか気恥ずかしいと思っていたし、一度お昼を一緒に食べようと切り出したけど、サリエルは自然と話題をそらしていたので、各々クラスでの友人付き合いもあるだろうと考えていると、ますます会える機会が遠のいた。
学校ですれ違う事も殆ど無くて、たまに総合特選科の校舎から見える庭園に居るのを見かけるくらいになっていた。




