第78話 マリエッタは見た1
私は遠い昔。
唯一無二の大切な人を亡くした。
彼女は、私が守るべき人だった。
私には前世の記憶があったけれど、今生きるこの世界が前世でやっていた恋愛シミュレーションゲームだと気付いたのは、学園入学後の事だった。
何故気が付いたのかというと
恋愛シミュレーションゲームに出て来る登場人物が私のクラスメイトだったのだ。彼女は悪役令嬢と言う役どころで、私は自然と意識した。
そして、意識して見ているうちに、ある事に気付く。
教室の片隅で静かに本を読みながらも、私とは別の意味で周囲も明らかに彼女を意識していた。
身分が高いとか、人形のように整った顔立ちだと言うのもあるけれど
その場に居るだけで目が行ってしまうような雰囲気のある人と言うのを見た事が有るだろうか?
彼女はまさにそれだった。
その時ふと、唯一無二の存在を思い出した。
目の前にいる悪役令嬢の作る、ふとした表情や仕草が、大切な彼女と似ていると感じた。
破滅が待っている彼女とは
関わるつもりは無かったのに
そう思ったらどんどん興味が湧いてきて、学園ではよく行動を共にする友人になり、それがとても嬉しい事になって居る事に気付くのにそう時間はかからなかった。
そしていつの間にか、悪役令嬢として見ていた彼女は私にとって、唯一無二の大切な人になった。




