第77話 孤島6
側に行って、傍にしゃがみ込むと、サリエルの気配に反応したのか、瞼がピクリと動きゆっくりと開かれた。
瞳をこちらに向けられて目が合う。
「お兄様!一体…」
言葉を繋げようとしたが、身体を起こしたフランツはサリエルの頬に手を添えると無言でジッと覗き込む。
その眼差しが、心の中にあった緊張の糸をブツリと切り離して、サリエルの瞳からは涙がジワリと込み上げて来た。
急に、知らない人が襲ってきた。
国王軍直属部隊がすぐに派遣されるー…そう、父であるラドレス公率いる国王軍第一部隊が来る事を信じて時間を稼いだ。
だけど、自分は来るまで持ち堪えられず、そのまま空から落下した。
ーーそうよ、あの時死んだと思って、走馬灯まで見た気がするわ。
それが何故か此処に居て
自分一人で途方に暮れそうで
見せないようにしていた恐怖や不安や色んな物が急に前面に押し出されるように涙が溢れ出してくる。
そんなサリエルの頭にフランツは手を乗せて、引き寄せる。
フランツの胸元に頭をつけて、俯く形になったサリエルは、一瞬目を見開いたが、直ぐにギュッと瞼を閉じて、眉間に皺を寄せた。
「…っ、……ふぅぅぅっ…」
しがみ付いてポロポロと泣き揺れる肩を包むように左手を回し、フランツは穏やかな笑みを浮かべた。




