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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
73/94

第73話 孤島2

 目の前に広がっているのはエメラルドグリーンの水面が所々光を反射して輝いている海だった。


 自分の手をついている場所はサラサラの白い砂が指を半ば埋もれさせている。


 ゆっくりと、後ろを振り向けば、そこは新緑の木々が生い茂った…まるで前世の物語で見たジャングルの入り口のような景色が広がっていた。私はその木々から長く伸びた木の葉の木陰にいる。



 何故こんな所に私がいるのかは、実は全くわからない。


 思い出せるのは意識を失う前に遡るーーー…



ーーーーーーー

ーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー







「地鳴りだー!」



「伏せろぉぉーー!!」





 それは突然の事だった。




 何時ものように授業を受けていた時に、教室…いや、学校の全体が大きく揺れ動き、大きく建物の軋み、砕ける音が鳴り響き


 大騒ぎとなった。




 揺れが収まり、教室にいた教師に誘導されるままに、私達は外へと向かおうとした時だった。





 私達、特進科にいる生徒達はその目を疑う景色を目の当たりにする。




「…ど…」


 廊下に出た者達は教師も生徒も余りの出来事に、辺りは一瞬静まり返る。


「どういう…こと?」


 生徒達は口々にそう呟いて、何度も目をこすっては状況を把握しようとしていた。


 私も自分の目を疑わざるを得ない。


「サ…サリエル様……」


 隣にいるマリエッタが不安げに身を寄せてくる。


 その様子を見て、自分の見ているこれが、間違いなく今起こっている事なのだと正確に認知できた。



「ここは……空の上だというの?」


 私達が窓から見た景色は、地面が直ぐには見えない。というか、雲が地面よりも近い。


 風も無いのに。だからこそかなり違和感だったけれど。


 認識したと同時に、教室の窓が次々と割れて、廊下と教室の境目の壁も吹っ飛び、風が吹き荒れ、息すらもし辛い





(これは一体どういう事なのー…??)




 その時ー…



 外を凝視して固まってしまったサリエルの背後から、女生徒達の甲高い叫び声と、男子生徒達の驚きの声が響いて


 教室に視線を向けるとそこには学園で見たこともない格好をした誰かもわからない男達が現れて、生徒達が数人男達の周りに倒れていたかと思えば、男達は倒れた生徒達の両腕を後ろ手で縛り、何かを取り付けている。


 外に逃げられない私達は狭い空間を皆様々に逃げ惑い、混乱していた。


 奇異な光景に冷静さを保てる人間がどれだけいるだろうか。


 悠長に現状把握する間も無く次から次へと事態は予測のつかない方に流れて行く。


 ただ、分かっている事は逃げる場所はおろか、隠れるところもないこの教室で次々と気絶させられ縛り上げられている。


 無事でいられると思われる方法は


 あの得体の知れない男達を全て倒す以外に思い浮かばないという事だ。




 だけど、今私達は空の上にいるのだ。





 場合によってはあの男達を気絶させて良いのかが怪しい。


 例えば、可能性は低いがこの現象を起こしている魔法使いがあの中にいたとしたら、その人の意識が途絶えた瞬間に私達は全員落下して行くだろう。



 見たところ剣や銃を手にしているものの、殺すのではなく、捕らえるに止まっている。


 少なくとも今すぐ私達に危害を加えるつもりは無いようだ。


 なら…地上に降りるまで大人しく捕まった方が…



(いや。こんな事をしでかしたという事はかなり綿密な計画の元だわ。


こんな大規模な事を学園の警備システムは愚か、国の警備システムにすら違法な魔力操作を感知されずに実行するなんて…


何も対策せず捕まったらまず


私達では何も抵抗なくされるがままになる。


こんな事をして私達を捉えるという事は、こいつ達のやろうとしている事は絶対に生半可な事では無いはず。



かと言って、この上空に今すぐ国の警備隊や軍隊が来てくれる可能性は一体どのくらいなのかしら?)




「サリエル様、心配は要りませんわ

私が 必ず 貴方だけでも守りますわ。」



 その言葉に我に返り、マリエッタを見た。


 私の腕にしがみついている手に、自分の手をそっと重ねるとガタガタと震えている。



「……マリエッタ…。」



 こんなに震えて…無理もないわ。

 私だって正直怖い。


 何が起こっているのか理解するよりも早く事態は動き、


 人が殺されている訳では無いけれど、この後殺されない保証もない。


 とても正気な光景では無く、惨劇と言っても過言では無く


 長らく平和な世で生きて、それも令嬢として籠の鳥のように過ごしてきた私達は


 こんな状況で正気を保っている事すらも危うい。


 抗う術が思い浮かばない程に恐怖心がただ大きくなる。







(怖い…けど、



ここには、一般の生徒や教師ばかりで戦闘に長けている人は誰もいない。


だから 私がしっかりしないと



私が 守らないと。




私は仮にも




ラドレス公爵の娘なのだから。)










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