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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
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第67話 婚約と婚約破棄の予兆? 13


「…貴方には申し訳ないけれど、

私は用事があるので、パーティー会場へは戻りませんわ」


「会場に戻らずとも良いのです、

会場付近にある、噴水前でラウル様は待っておられます。」



 レイの真摯な瞳に断る理由も思い浮かばず、サリエルは迷いながらも、ついて行くことにした。




 もしかしたら、ラウルとわだかまりなく話せるのもこの日が最後かもしれない。



 そう思ったからだ。



 レイの背を見つめながらも心の迷いはより濃くなった。


 会わずに女子寮へ戻った方が良いのではないか。



 もしヒロインが他の攻略対象を選んだとしても、攻略対象者達は皆ヒロインの味方なのだ。


 つまり別の攻略対象者になろうとも、すべてのルートで悪役令嬢として出てくるサリエルは、どの道ラウルに良い印象を持たれなくなる。


 他の攻略対象ルートの時、ラウルとサリエルの関係は婚約者という設定のまま関係が冷え込んで、ゲームの後に婚約破棄を匂わせる事を言っていたり


 ゲーム中に破棄になったりと言うことはさらりとしか書かれていなかったが、




 全てのルートにおいて悪役令嬢と攻略対象達との決別は不可避である。




 先程、王太子に問われて出た自分の答えを思い返す。


『自ら、婚約者を裏切るような事は出来ませんわ』


 本当に、それが理由なのかと、自分に問いたくなる。


 何度も夢が告げていたのに、何処かで、期待をしそうになっている自分に嫌気がさしてしまう。


 もしかしたら、ゲーム通りにならないかも知れないって。



 ラウルが私の元へ足繁く通ってきたり、図書室でラウルに会うたびに、強く保とうとした心は綻びを見え隠れさせてしまう。


 自分の結末を変えられるとしたら自分しかいないと


 分かっているのに。


 攻略対象であるお兄様やラウルに、自分の味方でいてくれることを期待して、ダメだった時、

 私がお兄様やラウルを責めたりしないように。


 恨んでしまわないように。


 お兄様やラウルのせいではない。


 決まっていた事なのだから。



 恨みたくはないから、


 その為には〝お兄様なら優しいままでいてくれる〟〝ラウルなら大丈夫かも〟なんて


 期待をしないようにしなくてはいけないのに。


 だから、会いたくなかった。


 誰にも


 貴方に、今


 会いたくなかった。



 会いたくなかったけど、私を探していると聞いて嬉しくなったのも本当で


 そんな自分の愚かさに、嫌気がさしてしまう。









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