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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
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第56章 婚約と婚約破棄の予兆?2

 太陽の光を反射して、水面がキラキラと輝く噴水の前にある椅子に腰掛けると、


 グラスに入っている飲み物を一口飲み込み、息をついた。



「……」


「何でしょうか?」


 セドルスの視線に不快さを感じないものの、何かをこちらに問いかけたそうにしているので、こちらから切り出す。


「あぁいった場所が、苦手なのですか?」


「あまり得意ではないわね。」




「実は、ボクもなんです…

ダンスパーティーがあると、いつもペアの方にはご迷惑をおかけしていました……」



(見ていたらわかるわ)




 上級生相手にタメ口が見え隠れしてしまうのは失礼だとは思いつつも、彼は気にも止めていないようなので気にしない事にした。







 サリエルが黙ってグラスの中にある飲み物の泡をじっと見つめていると






「貴方は、相変わらずお優しい方ですね」





 まるで前からサリエルの事を知っているかの様な口ぶりに

思わず横に立っているセドルスを仰ぐと、逆光でその表情は良く見えない。



「私と会った事がおありでしたか?」



「はい、随分前に」


「すぐ教えてくださればよろしかったのに」


「言ってしまうと逃げてしまわれるかと思いまして。

入学されて何度かご挨拶に伺おうとしましたが…


貴方は避けているようでしたので…」



 私は彼を避けていた記憶が全くない。


 むしろ彼の存在を全く覚えていなかったので、首を傾げて頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「…飲み物が無くなってしまいましたね、

グラスを戻して来ます。

ここで待っていて下さい」


「え…」


 セドルスは前かがみになって、顔を近づけてきたかと思うと、


 さり気なくサリエルの手からグラスを取り、歩いて行く前にもう一度振り返り、ニコリと笑った。



「絶対に待っていて下さいね」


 人畜無害のその笑顔を見て、何かが引っかかった。





 彼の事を思い出せないけれど、


 何か、重要な事を見落としていない?



 そういった疑問が脳裏をよぎった。


 そもそも公の場に出る事が無かった幼少期を経て学園に入学した私は、モルキンス男爵の事さえどんな人なのか詳しく知らない。




 私がモブキャラを避ける…?



 心当たりが無いわ。





 私が避けている人はゲームの登場人物だけだ。


 ヒロインは主人公なので当然避ける。


 私は婚約者であるラウル・ベジスミンですら出来るだけ関わりを持たないよう学園内を移動しているがそれは攻略対象の1人だからだ。


 フランツ・ミューラである私のお兄様は、上級生であるからあまり気をつけなくても会わないと言っても、

 極力顔を会わせないようにしている。

 もちろん攻略対象者だから。





 ジルヴァン・モルストは当然避けるとして








 あとはー…







『私は、セドルスと申します。』





 ふとー…




 焦茶色の髪をした少年の後ろに控えている


 フードを被った人物の瞳が脳裏をよぎった。






「ー…っ」





 サリエルは立ち上がって、冷や汗と

 ドクンドクンと、波打つ心臓を抑えようと拳を胸の前で握る。







『こちらはー…』









(離れなければ、セドルスが戻る前に


事実確認と考えるのは後だわ)





 この場を離れなければならない。




 そう思い、一歩を踏み出した瞬間







「ここで待てと命じたはずだが、


一体何処へ行く?」







 黄金の髪に琥珀色の瞳をした

 最も関わる事を避けていたはずの人物




 アーサー・グリム・ラオドランドその人が




 サリエルの行く手を遮るように立ちふさがった。



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