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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
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第55章 婚約と婚約破棄の予兆?1

 学園で初のダンスパーティー、目の前にいるのは、婚約者でも兄弟でもない初めてお会いする歳が3つ上の上級生。



「お初にお目にかかります。


セドルス・モルキンスと申します。」



 焦茶色の瞳と髪は、よくあるモブキャラそのものの風貌だった。



 モルキンス男爵のご子息、セドルス・モルキンス。

 知っている人もいるだろうが、男爵とは貴族の階級の中では1番低いとされているが、貴族社会では決して低い地位と侮られることはない。



 何故なられっきとした貴族であると共に代々継承するその他の爵位と違って、男爵位は一代限りの勲章。





 つまりこのゲームの世界では少なくとも、その人の実力により与えられることが多い。


 この人の親は王直々に貴族位を除させれた男爵なので、まぁ凄いことである。




 とはいえ、平民からでも男爵がうまれることから、貴族ならではの教養が身についているかというと…







「いたっ…」



「すすすす、すみません!」





(壊滅的だわ…)





 今時正式に爵位を持たないジェントリや下手したらこの学園に通えるような富裕層の平民でもダンスはそこそこ踊れる人が大半というのだけれど…

 れっきとした貴族がこれ程踊れないというのは社交界で少し苦労するかもしれないわね。




 ご覧の通り彼はダンスが苦手なようだ。


 社交ダンスは学園が始まってから授業で習い始めたのか辿々しくステップを刻み、


 本日足を踏まれるのは3回目だ。


 だが3年もいて、このぎこちなさは、


 そもそもダンスのセンスが無かったのも相まったのだろう。





 一曲踊って静かに消えようと思っていたけれど、私がいなくなったら彼とペアを組んでくれる女性はなかなか見つからないことが容易に想像ついてしまう。






(これは…どうしたら良いのかしら……)




「少し休憩しましょうか」


「では、飲み物をお持ちしますので少々お待ちください!」



 そう言って走り去っていくセドルスの後ろ姿は、とても上級生の貴族の令息とは思えなかった。


 誰かに仕えることにしか慣れていない従者そのものだ。



 まぁ、あまり深く聞く気は無いけれど…




 壁際にあるソファーに腰掛けて、全体をボンヤリ眺めていると、ラウルとバルダロス伯爵の令嬢が、踊っている姿が目に入った。


 その近くにはヒロインと王太子殿下が休憩のためかダンスをやめて、グラスを片手に談笑をはじめていた。



 彼らへの周りの嫉妬の眼差しや、ヒソヒソ話が、この位置からだとよく見えるし、微かに聞こえてしまう。





 良くも悪くも注目を集めてしまう人達は、こちらが探していなくても目についてしまうのだ。





 彼等から目をそらして、思いを馳せた。


 私はきっと社交界を好きにはなれ無いだろう。




 追放されるという最後になれるのなら、悪役令嬢というのも悪いものでもないかもしれない。

 けれど、追放された先にあるものが、安全な地であるのかはわからないし、罪人としてならば何らかの労働を永遠に強いられるだろう。





「お待たせ致しました!」




 セドルスからグラスを受け取ると、サリエルは会場の外へ繋がる扉へと進む。


「え、どちらに……」


「会場の熱気に当てられましたわ。


冷ましたいので、外の風に当たりに行くの。

宜しければモルキンス様もついてきますか?」


 置いていく事に少し引け目を感じていたので、そう問いかけると、「はい」と頷いて、従者のような上級生は私の後をついてきた。








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