第53話 動き出す3
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私は毎日朝早くから図書室に来ている、どのくらい朝早いかというと、私は毎朝5時にはいる。つまり朝起きるのが4時前後なので、
寝てないのではないかと言われそうだけど、就寝は21時にはしているため最低6時間は寝ているので心配無用である。
ついでに私程ではないけど、ラウルも朝早くから利用する者だった。
なんでも、勉強は朝の方が捗るとかで、私の隣や前の席に座るのだ。
それが自然だと言わんばかりに最近では何の断りもない。
流石にこの間の屋上での出来事は、ラウルにも話が及んでいる事を考え、顔を合わせづらかった私は少々肩透かしだ。
同じクラスのヒロインとジルヴァンには、まだ何も聞いていないようだった。
図書室に入ると、既にきていたラウルが、魔法について書かれた教科書である魔本を真剣に読んでいるのが目に入った。
いつもは私の方が先にいるので、少々驚いたが、
集中しているようだし、邪魔してはいけないと
少し離れた席に腰掛ける事にした。
私はラウルを背に、窓際の席に腰掛けてカーテンの隙間から見える外の景色に前世の学校を思い浮かべる。
桜と同じようにピンクの色をした花びらは、クルクルと目の前で散ってゆく。この世界の春は少し長く、この季節になるといつかラウルと行った花祭りの事も思い出す。
散々な思い出だったなぁ……
でもあの後、お兄様への誕生日プレゼントに、お兄様の瞳の色をしたブローチを買えて嬉しかった。
今思うと、男性にブローチだなんて、あまり嬉しくないわよね。
お兄様は…喜んでくれたと思うのだけど。
フランツが穏やかに嬉しそうに目を細めてブローチを見つめる姿が思い浮かんだ時だった。
カタンッ
正面から音がして、窓の外から音のした方へ視線を向けると、青い瞳と目があった。
「おはよう、サリー」
椅子を引いて、座わりながらも、こちらに許しを得るような視線を向けるラウルに
思わずコクリと頷くと、彼は微かに口元に笑みを浮かべた。
その様子を見たとき、ふと思った。
ラウルは私といる時、綺麗に笑う。
口数も私の前では少なくなった気がするし、子供の時の無邪気な笑顔は今や友達やヒロインには向けるのに、私には向けてくれない。
きっと、私への親しみがゲームの強制力により無くなったせいもあるのだと思っていたけれど
ならこうして、私の座っている席の近くに毎回座ってきたり、
今のようにわざわざ移動してくるのは何故なのだろう……
本を読むふりをして、手にした本の端から、ちらりとラウルを見る。
先程と変わらず何やら真剣に魔本を読んでいるが、一見何処か冷たさを感じさせる真顔だけれど、この綺麗な男性の姿に胸の鼓動がはやくなるのは仕方ない事だろう。
いつの間にかラウルはこんなにも成長していたんだ……
学園入学する直前まで、私の家に訪ねてきてくれていたけど、ゲームのラウルに外見が近づけば近づくほどいつの間にかその顔を直視出来なくなっていた。
まつ毛、ながいなぁ…
「…相手、誰だった?」
「え?」
ふいにラウルが言葉を発したので、キョトンとしていると、ラウルは魔本から視線をあげてサリエルと目があった。
「今度のダンスパーティーだよ、ペアは誰だった?」
「特進科の上級生よ。モルキンス男爵のご子息みたい。」
「へぇ……それは、とても運の良い事だな…
本来なら、サリーと踊れる立場でないだろうに」
「え?」
ラウルは人を見下すような事を言った事はないし、蔑むような事を言っているのを聞いたこともない。
けれど、今、棘のあるような言い方をした気がしたのだけれど…聞き間違いだろうか?




