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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
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第45章 学園生活スタート2

 隣で静かに本を読むラウルの気配を感じて、ふと入学して2日程たった頃の光景を思い出した。



 私が3階の廊下を歩いてるとき、学校の庭園にある木陰の下に立ち止まっているラウルを見かけた。


 表情は見えないけれど、目立つ青い髪が風に揺れているときだった。


 ラウルは頭上から声が聞こえたのか、上を向いて、反射的にふってきたものを抱きとめる。



 ふってきたのは、桃色の髪にエメラルドの瞳の美少女




 ゲームの出会いイベントの瞬間だとすぐに気がついた。




 この時ラウルは何を思ったんだろう。




 私がいない間に、同じクラスの2人はきっと少しずつイベントを重ねて行くのだろう。





 私はゲームのストーリー通りラウルが好きになりはじめていると思う。いや、もしかしたらもう既に、好きなのかもしれない。



 これが恋愛なのか、何なのかは分からないけれど、何処か寂しいような、チクリと痛むような感覚だった。



 それは無理もない事だと思う。

 ラウルは6歳で出会ってから、私にマメに会いに来てくれた。


 同い年の子供で私が遊んだ記憶となると、ラウルしか思い当たらないし。


 加えてこんな整った顔立ちの男の子と婚約者として会っていたわけで…。




 前世の記憶が無ければ、盲目的に好きになってしまったんじゃないだろうか。


 それでも私は時々見る悪夢の、リアルな痛みに、ブレーキがかかっているせいか、



 どこか、冷静な自分がいる。





「最近は、どう過ごしてた?

クラスで誰かと仲良くなれたか?」



 ふと、ラウルから話しかけられて我にかえる。


 問いかけるような私の視線に、


「今は、2人だけだし、誰もいないし…

最近全然会わないから…」



 図書室で話しかけてくるような事は珍しいと、私が感じたのを見透かしたように言葉が付け加えられた。



 改めてこうして見るとラウルはゲーム通り格好良く成長したなとしみじみと感じる。



 制服姿を最初に見た日もそうだったけれど、学園の中ですれ違うたびに、私は、はっとしてしまう。




 ラウルはやっぱりゲームのキャラクターで、攻略対象者の1人で、私をー…



「サリー?」



 重なりかけていた夢から目覚めるように目の前にいるラウルに意識が戻ったサリエルは

 少し動揺した。


(だから、会わないようにしていたのに……)


 私を不思議そうに見つめる空のように澄んだ若干つり目の青い瞳に、思わず視線を手元に閉じた本の表紙へとそらした。


「ラウル、」


「?」


「覚えてるかな?

私達が、お互いを紹介された日の事を」


「覚えてるよ、我ながらお互いに可愛げの無い子供だったな」


 ラウルはハハッと笑い声を漏らしながらはにかんだ笑顔を浮かべた。


 けれど、サリエルは己の髪でその表情をラウルから隠すように、手元にある本に視線を向けたまま切り出した。



「その時、話した事も、

覚えてる?」








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