第38章 花祭り10
人の足音がして、2人は口を閉ざした。
その足音は1人ではないことは明らかで、サリエル達の入っている檻の前で止まる。
すると、店主の声が聞こえてくる。
「こちらにあるのが、
先ほど申し上げた特上物です。」
「オークションでも国賓級の方々に出せるものが入ったと言うから
大事な予定をキャンセルしてきたので
期待しておりますぞ」
中年の低く野太い下卑たことを言い募る男の声に、ラウルはサリエルを支えている右手に力を入れて、先程よりもひきよせた。
サリエルも無意識に、声のする方に視線を向けながらもラウルの胸元のシャツを両手でしがみつく様にぎゅっと掴む。
檻に被せられた布を掴んだのか、布にシワが入り、捲り上げられていくと、
其処には3人の男が見えた。
店主と、先程店主と会話していたであろう身なりの良い仮面をつけた中年の太った男。
そして、店主の後ろには先程気絶したサリエルを抱えていたセピア色の髪をした、頬に傷のある男が護衛の様にして立っている。
太った男は「おぉっ」と、感嘆の声を出し、その反応に満足した店主が「どうですかな?」と声をかける。
「これは、なんと驚いた。
どうやって入荷したのか、なんと見目麗しい……
そして何より凄いのは稀有色の物を手に入れるなど
…しかし稀有色を売るには意外と難しいかもしれないな……なんせ成長したら魔力を得ることは確実。
御せる人物に売らなければ後々面倒なことに。」
「他国が過去の戦争から魔法の、研究に力を入れ、魔力制御装置なるものの開発までこぎつけている国もある。
そんな方々はモルモットに出来るこの国の稀有色を手に入れたがっています。
だが、
他国の貴族にはいかなる手段を講じてもなかなか手は出せない。
それが金を積めば奴隷として買えるとなれば…
国賓級の顧客から国1つは買えてしまう金が出てくるでしょうな」
それを聞いて仮面をつけた男も興奮気味に頷いた。
店主はニコニコと男に続けて語りかける。
「それに、
もう一品の方も国1つ買えるとまではいかないまでも、かなりの高額で、しかも国内ですぐ買い手がつくでしょう。いかがですかな?」
仮面をした男はラウルの腕の中で紅の瞳に怯えた色を滲ませて微かに震えているサリエルをまじまじと見ている。
「ほほっ、これはこれは…なんと
人形のように可愛らしい…
売るのが惜しくなってしまう……
どれ、店主、この子を私の家に連れ帰っても良いか?」
男の言葉と同時に
ラウルの手に力が込められた事にサリエルは気がついて、視線をラウルに移すと、ラウルは檻の外にいる男達を険しい瞳で睨みつけていた。
「それは…オークションに貴方も参加していただければ可能なのですがねぇ…」
「オークションに出して、高値で売れても
店主に行く金はそのうちの30%だろう?
それよりも満額手に出来ると思えばどうかね?」
2人のやりとりはしばらく続いたが、
どうにも店主が納得する条件が提示されたようで、
「それならば…」と、頷いている。
会話に夢中な2人をチラリと確認しながら
険しい表情をしているラウルにサリエルは耳打ちする
「大丈夫よラウル、
もし私と引き離されても私のことは心配は要らないわ」
驚いたようにサリエルを見るラウルを安心させるように微笑みを浮かべた少女がそこにはいた。




