第36章 花祭り8
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背景は白一色
あぁ、またあの夢か。
これは、どのルートのだろうか
成長した私が見える
ゲームのサリエルだ。
「私は……貴方の婚約者
私はただ、貴方の事が…」
「けど君は
親が決めた婚約者だ
俺は君が好きではない」
そう言ったのは青い瞳と髪を持つ陶器のように透き通った肌を保つ綺麗な青年だった。
何度も
何度も何度も
私はこの夢を見た。
「……ラウル様…っ」
思い出したあの日、私はラウルの事なんか知らなくて、だから、傷ついてるサリエルを他人のように見ていた。
「君をもう、このまま野放しには出来ない」
「わ…私は、何もしていません!」
「彼女は嘘をつかない」
「……
彼女を信じるというの?
私と過ごした日々よりも……」
「時間は、関係ない。」
「酷い、酷いわっ、こんな……私は婚約者である貴方を生涯の伴侶と愛する努力をした。
そして……貴方を、愛したのに
貴方もそうだと思っていたのに
あの日々は一体なんだったというの?」
何も答えず、視線を逸らすラウル
顔を手で覆ったサリエルはその指の隙間から、ゾクリとするような憎悪の瞳をのぞかせる。
「許さない!許さない!
あの女!!!!!」
つんざくように響き渡るその絶叫の最中
ラウルは腰に差している剣を静かにぬいて、一瞬のうちにサリエルを斬り伏せた。
倒れこむサリエルは、力なく仰向けに崩れおち、涙が溢れおちる瞳で、自分を斬った存在を仰いだ。
彼の表情は見えなかった。
ただ、後ろ姿しか見えず一度も振り返らない。
「私は…ただ……貴方に…信じてほしー…」
婚約者としての好きでなくとも
1番近くにいた
幼馴染として
ぽっと出のあの女よりも私を
信じて欲しかった。
私は貴方を信じてた。大好きだったから。
でも信じていたものは違った。
私の独りよがりだった。
もう貴方の愛を信じられない。
貴方の暖かな誠意ある対応が
貴方の優しさが
貴方の言葉が
貴方の全て
2度と信じられない
こんな事になってからなんて、なんて私は鈍いのかしら
意識を途絶えさせていくサリエルの心は
ゲームのサリエルのものなのか
それとも今生きる私のものなのか
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