第35章 花祭り7
サリエルは直ぐにこの場を離れようと後退ろうとしたが、
何となく、目を離しては不味いと足が縫い付けられたようにその場から動けずにいる。
「これは…
驚いた、可愛らしいお嬢さんがそんな刃物を持っているなんて、誰が思うだろう?」
先程から緩みきった穏やかな表情を崩さずに店主はそう問いかけた。
細めた目を開けて、サリエルをその瞳に映して言葉を続ける。
「だが、
所詮は子供だ」
「!」
店主の店の扉が開くと、中からは数人の男達がぞろぞろと出てきた。
いかにもガラが悪い人達で、各々槍や剣等の武器を持っている。
「おいたをした子には、
躾をしなければいけないからね」
先程のは相手の油断と不意をついたから出来た事。
力も経験もないサリエルはいくら武術や剣術を学ぼうと、大の大人の男を、それも数人を相手にするには無理がある事は明白だった。
男の1人が下品な笑みを浮かべてサリエルに斬りかかると、サリエルはスレスレで避けて直ぐに横から斬りかかられた。
「……っっ!」
それを右手に持つ短剣で受け止めるも、身体ごと弾き飛ばされて地面に転がる。
その時頭を打って気絶したのか、サリエルは身動きせずにいた。
男は飛んでいったサリエルの元へと足を進める。
「や、やめろ!!」
ラウルは大きな声で制止しながら、倒れたサリエルに駆け寄り、男の行く手を阻もうと、手を広げて見上げた。
「元々君達商品に傷を付けるつもりはない。
だがそのお嬢ちゃんは少々おいたが過ぎたからね、
少々手荒になってしまったよ」
店主はニコニコとそう語ると、他の男達と共にラウルの前に歩み寄ってきた。
「少々だと?
サリーは子供でしかも、女だぞ」
「…それで、大人しく商品になってくれるかな?
君は特上の商品だから
出来ればかすり傷1つない状態で保管したい。」
「……」
ラウルは黙り込み、少し俯く。
すると、いつの間にか男達の中で少し身なりが整っており、頬に傷のあるセピア色の髪をした男が気絶したサリエルを丁寧に抱えて店主の
横に立っている。
「サ……」
あの男いつの間に俺の後ろにいたサリエルをー…
「このお嬢ちゃんは、確かに商品価値は高いが
君と比べてしまうと
傷物になろうが全然問題ない。
さて、どうする?」




