第17話 ラウルとお出掛け⑧
因みにヒロインがアーサールートを辿ると、実はアーサーが好きだったのに婚約者に選出されなかったサリエルがヒロインに嫉妬する。
ハッピーエンドだと、サリエルのヒロインを狙った陰謀は未遂だが、アーサーも巻き込んでしまったため、国外に追放処分される。
バッドエンドだと、サリエルが企てた陰謀がサリエル自身が思っていたよりも大きなことになり、ヒロインを庇ったアーサーが死んでしまう。
これによりサリエルは国家反逆者として公開処刑されるらしい。
私はこの人のルートのバッドエンドを最も恐れていると言って過言ではないだろう。
そしてこれ以上はもう、詳しくは語らないでおこう。泣いてしまう。
「サリー、今度はどんなこと考えているんだ?
出来れば何か行動する前に一声かけて欲しいのだが…」
ラウルの言葉に意識が戻される。
馬車に揺られているので、辺りはガラガラと車輪が回る音がしていた。
心配そうにサリエルを見ているラウルに、先ほど考えたことで冷えた心がほっと息をついた。
それでも、彼もいずれは警戒すべき1人になるのだと自らを律する。
「ごめんなさい、
でもほら、また危ない事しても、ラウルがカッコよく助けてくれるでしょ?」
ふふっと笑うサリエルを見て、ラウルは目を見開いて。視線を逸すようにフイっとそっぽを向いて呟いた。
「まったく…」
そうしてサーカスのテントについたサリエルとラウルは、急いで席へと向かった。
チケットには注意書きに、〝特等席ご利用の際は開始10分前までに入室してください。それ以降チケットをご利用いただく際には一般席をご利用くださいますよう、何卒お願い申し上げます。〟と記載されているいるというのに、
今はもう
開演五分前だからだ。
サリエルとラウルの席は貴族専用に二階に設けられた1番前の特等席を用意してもらっていたが
特等席はゆったりと貴族が行動できるよう配慮されている箇所が多々あり、完璧なおもてなしの為に開演10分前には閉鎖されて基本的には閉会後まで開かなくなるという仕組みがあったため、仕方なく一階にある一般の席で見ることにした。
一般の席ではラウルが特に目立ってしまうので、2人ともフードを被って入る。
従者やメイドはサーカスのテント内には入れないので、サーカスの外にある使用人待機用テントで待っているらしく、
ラウルは馬車から降りて、サーカスのテントに入ろうとするさい、ふと視線を感じて振り返った。
サリエルのメイドであるメアリーからは〝くれぐれも、先程のような事が無きよう、サリエル様から目を離さずに…〟といった念が送られた。
自分の婚約者は大人なのか子供なのか。
わからないなと、不思議に思う。
大人びた物言いからは想像できない突拍子もない行動をするのだと、先程の事でわかったので、今後留意しようとラウルは心の中で呟く。
開始五分前という事もあり、ギリギリについた人で入り口付近はごった返していた。
ラウルは人に押されてよろめいたサリエルを支える。
「サリー、ここは人が多い。
迷子になってはいけないから、手を繋ごう」
「でも、男女が…」
「大丈夫、まだ俺達は幼い子供だ。
それに、貴族の子供が下の一般席にいるとは誰も思わないだろうし、周りはサーカスを見にきてて俺たちの事なんか気に止める人はいないよ。」
少したじろいでいるサリエルの前に、ラウルは右手を差し出した。
差し出されたラウルの右手にサリエルはそっと左手を重ねて、2人はテントの中に入って行く。