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悪役令嬢サリエルの夢  作者: マロン株式
第1章
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第16話 ラウルとお出掛け⑦

「サーカスの開演時間が迫っている。

行くぞ」


「あ、ラウルちょっと待って」


 サリエルは後ろにいた焦茶髪の少年の方に歩み寄ると、先ほど鞭打たれていたローブと服の袖を捲り腕をそっと掴んだ。


 少年がわずかに「えっ」と驚きの声を出しているのを他所に、サリエルは真剣な顔で少年の腕を見つめている。


「…少し腫れて熱をもっているわ…

痛かったでしょう…痣は目立たないけど…


もしかしたら骨が折れているかも知れない」



 気遣わしげに見上げているサリエルの瞳に、少し戸惑いながらも焦茶髪の少年は答えた。


「だ…大丈夫です、


あの、有難うございます、正直に言うと本当に困っていたので助かりました。


私の名はセドルスと申します。



こちらは…」


「わたしの名はアーサー


旅の者だ」



 焦茶髮の少年の後ろから、サリエルとあまり変わらない背丈の男の子が、すっと現れた。



「声が…」



 先程連れの少年が、『口がきけない』と言っていたので少し驚きの言葉が出た。

サリエルの疑問に答えるように、彼は続けて言った。


「周りにはわたしの姿、声は隠しておきたいのだ。

だが、恩人には礼を尽くさねばなるまい。


礼を言う」



 目の前にいる男の子は、まだフードを被ってはいるが、同じ様な背丈のサリエルには


真っ直ぐサリエルを見据える顔立ちの整った端正な顔がはっきりと見えた。


 この国では茶色の髪や瞳が一般的で、ラウルのように青色であったり、兄のように銀色のような色合いは貴族だけにしかいない稀有な色合いだ。


 潜在的に所持している魔力の影響をうけて、このような髪色や瞳の色になると言われている。


 勿論貴族でも魔力を持たない人は沢山いるし、髪や瞳が茶色だって沢山いる。


 けれど、平民から稀有な色が産まれたことは、この国の歴史上皆無なのだ。



 だから身につけているローブがあまり上等でないことと、共にいる少年が焦茶髮で良くある色である事から平民ではないかと勝手に思っていた。


 しかし、フードの奥に潜む端正な顔と共に垣間見た瞳の色はー…




「ー…琥珀」



 サリエルの呟きに、アーサーはフードを深く被り直してお辞儀をした。


「セドルスの怪我の治療も含め、先を急がねばならぬので、我々はこれで失礼する。


その前に、お主の名を、教えてくれないか?」



「私はサリエル・ミューラと申します。」



 ローブの中でスカートをつまみ、ペコリとお辞儀をすると、アーサーの口元が満足したようにフッと笑ったのが見えた。踵を返してセドルスと歩いて行こうと、サリエルに背を向けて歩いて行く。



「サリエルか。またいずれ会うだろう。」



 アーサーのその呟きは、すぐ後ろについてきたセドルスにしか聞こえなかった。



ーーー

ーーーーー





琥珀の瞳



金色の髪



 どちらも稀有な色合いだ。


 この色の特徴は王家に所縁あるものに他ならない。


 そして、彼は己を〝アーサー〟だと名乗った。


 まさか、こんな所で会うとは思えなかったが、彼の真名はアーサー・グリム・ラオドランドでは無いだろうか。



 攻略キャラの1人であるアーサーと同じ特徴を持っていた。

 この国には現在、王位争いが水面下で行われている。

ゲームが始まる頃にも落ち着いたように見せてそれに纏わるイベントがあった。

その時点ではアーサーは王位継承権第1位になっていた。


 しかし、幼少の頃は5人いる兄弟の1番下で側室でも身分の低い母だった為、継承とは遠い存在となるはずだった。


 成長をするにつれて、兄弟は死にゆき、または陰謀により捕らえられていくうちにいつの間にか王位継承権第1位を得ていた。


 それは、たまたま運が良かっただけではない。


 類稀なる才能や、人望が彼には幼い頃からあった。

幼いながらにも、陰謀から己を守って、ゲーム開始の時点でも戦い続けていたっけ…



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