かくして二人は邂逅する
処女作です。頑張ります!
俺は今困っている!凄く困っているのだ!
情けなく尻餅をついている俺の首には剣が突きつけられ、
見上げた先には目を閉じた銀髪の美人さん
しかも、場所は俺の泊っている宿屋の食堂の中央
どうしてこうなった!
やっぱりアレかな~
俺の頭は昨日の昼までさかのぼっていた。
俺、ハル・サルアは現在無職だ。
厳密に言うと全くの無職と言うわけではなく、冒険者
いわゆるギルドからの依頼をこなして生計を立てている人間だ。
冒険者は色でランク付けされていて、上から
『金』
『銀』
『赤』
『青』
『黄』
『黒』
に分かれているのだが、俺の色は『黒』一番下だ。
これでは無職とあまり大差ない
そもそも俺の祖国ディンターク王国と相手方のアグラル帝国の
100年にも及ぶ戦争が去年ついに終わり、結果はディンタークの勝利。
何もかもが嫌になって軍を抜け始めたのが冒険者。
もとよりやる気などない
そんな俺は昨日も散歩感覚で一番簡単な薬草採取をしていたのだが、
昨日は珍しく目当ての薬草が見つからず、森のかなり奥まで来てしまっていた。
「あ」
そんな中俺は見つけてしまったのだ。
ニードルラビットの変異種を
通常個体と比べ毛並みは遥かに美しく、色も茶色ではなく白、角も短く眼も赤ではなく青だった。
何よりも変異種は様々な部位が通常個体よりも金になる。
無言で剣を抜き、切りかかる。
「キュピ!」
しかし、こいつも甘くはない。本来の個体よりも明らかに速い動きで俺の剣をかわし
俺はこいつを更に森の奥深くまで追いかけた。
通常個体であれば手こずることは無いのだが如何せんこいつの動きはとてつもなく速かった。
しかし、永遠に続くと思われたこの追いかけっこも唐突に終わりを告げた。
「なっ!」
突如首筋に悪寒のした俺はなかば反射でのけ反った。
するとおれの顔の上、つまり先ほどまで俺の首があった場所を白銀が通過した。
そのままバク転の要領でその白銀から距離を取ると、目の前には目を閉じた銀髪の
美人さん。持っている剣は鞘が付いたままだったので殺す気はなかったようだが、
あの一撃を気付かずに食らっていれば意識はなかっただろう。
「誰だ?獲物の横取りは冒険者でなくともご法度のはずだがどういうつもりだ」
「あなたこそどういうつもりですか?その魔物は聖域の守護者。知らないとは言わせませんよ」
は?セイイキ?シュゴシャ?何言ってんだこいつ?
しかし、それよりも気になるのは相手の実力だ。見たところ剣士だが、先ほどの
一閃はかなりの実力を保証するものだった。
俺は自慢ではないが剣に関してはそこらの剣士には負けない自負があった。
相手の実力はおそらく俺と一緒かそれ以上。
さすがの俺も重症をおってまでまでニードルラビットをゲットしたいわけではなかった。
「待て、そんなにこいつが食いたいな!、、、っ!」
「聖域の守護者を食べるなど不届き旋盤、身をもって反省していただきます」
なんでだよ!話くらい聞いてくれてもいいだろ⁉
対話を試みた俺だが言い終わる前に暴力という名の返事。解せぬ。
この時点で完全に俺の頭の中からニードルラビットは消えていた。
こんなところでボコボコにされたくない俺は攻撃するふりをして背を向けて逃走を図る。
『大地の精霊よ』
更に身体能力向上の効果を持つ基本の魔法をかけて一気に逃げる。
不意をつけた俺は確実に逃げたと確信したのだが
『烈火の焔よ、我が眼前の敵を真紅に染めろ』
「なっ『清浄なる盾よ』あっつ!」
後ろから迫ってきた森を焼かず敵のみを焼く大規模炎魔法。
なんてご都合主義魔法だ!なんて思いながら咄嗟に防御するも
効果は微々たるもので吹っ飛ばされた俺は逃走の失敗を悟った。
ならばもう残された道はただ一つ。
相手に話を合わせ、
「待ってくれ!俺の負けだ!事情が有ったとて許されないことをした。
ちゃんと罪は償う。殺さないでくれ!」
「・・・確かに聖域の守護者を襲ったことは重罪です。しかし降伏すのであれば
ひとまず剣は降ろしましょう。それになぜあなたが守護者を見つけることができたのか
話してもらう必要があります」
油断させて、
「事情を教えていただけませんか?私は剣や魔法の腕には自信があります。
力になれるかもしれません」
「ああ、ありがとう、、、とか言うわけないだろ!『風よ!!!』」
「なっ!」
魔法をあまり習得していない人間であっても使える基礎魔法に俺の
ありったけの魔力を注ぎ込んで暴発させる。
例え基礎魔法と言っても全魔力を注ぎ込んで暴発させればとんでもない風力が発生する。
圧倒的な力で吹き飛ばされた俺たちだったが、予想できていた俺はすぐさま体制を整え
全速力で走ることで、俺は命からがら逃げることが出来たのだった。
ここまででも俺の不幸はかなりのものだがまだ続くのだ。
まずひとつは、町に帰ってきたのはいいのだが、恐らく先ほどの戦闘でだろうが、
身分証をなくしており罰金を取られと魔力検査を受けたこと。
二つ目は俺は冒険者ギルドのカードを身分証としていたためにギルドでもカードの再発行
に金をとられ、しかも当然クエストも達成できていないので、さらに罰金を取られたこと。
ここまで来て、地獄を見たのにだ。
さらに朝起きて朝食を半泣きで食べていたのにだ!
あの女、いきなり宿に入ってきたと思えば、俺を視界にとらえるなり剣を抜いて
切りかかってきたのだ。
まさかの不意打ち返し、全く反応のできなかった俺はこうして現在に至る。
俺は天を仰いだ。退屈で窮屈で気楽な生活の終わりを感じながら。
楽しいです!頑張ります!




