プロローグ
命は軽い
これは俺が齢7歳にして思った。いや、思ってしまったことだった。
今俺は屍の上に立っている。
俺が殺した人だったモノの上に立っている。
今日で戦争は終わるだろう。俺には帰る場所も家族もない。
俺は何のために人を殺したのだろう。
俺は5歳の時に軍人に飢えて死にそうになっていた所を助けてもらった。
俺を拾った軍人はかなりの地位の人間だったらしく拾われた俺はまず、大きすぎる屋敷に驚いた。
軍人の名前はハルク・サルアと言う名前で、強面な顔であり初対面の人間には恐れられていたが、
情に厚く、とても美しい妻もいた。
実はこのサルア夫婦は長年子供に恵まれず悩んでいたらしく俺は遠いし親戚の子供という設定で養子に迎えられた。それからはしばらく忙しかった。メイドには礼儀礼節を叩き込まれ、父には戦い方を教えられ、母には勉強を教えられた。
俺は多分、いや、確実に周りよりも優秀であった。
この生活は4年続き、そして終わった。
ある日段々と激化してきた戦争に父は駆り出された。安全な戦地だとある兵士が言っていた。
だが、父は帰ってはこなかった。もとより戦争において安全な場所などなかったのだ。
母は泣いていた。俺は何も思わずただ受け止めていた。
周りの人は俺に事あるごとに励ましの言葉や哀れみの言葉を送ってきた。
その時に思ったのだ
命は軽い
人は死ぬのだ。あっさりと、思いがけずに。
当時の俺は不気味と言われるほど感情が薄い人間だったが、この時はやけにハッキリとそう思い、自分自身を嫌悪した。
それから3年の月日がたち、苛烈を極めた戦争もあともう少しというところでおれにも徴兵の命令が来た。
俺は強かった。才能があった。だけど殺せなかった。敵なのに、剣をむけられたのに、
今まで何も感じなかったのに、止めを刺そうとすると息ができなくなった。
苦しかったのは、呼吸のせいだけだったのだろうか。
だけど、俺が誰も殺せなくとも人は簡単に死んでいった。敵も味方も。
俺が止めをさせなかった兵士も味方の兵士が止めを刺した。
その時自分が情けなくて、何より少しほっとしてしまって、ますます自分が嫌いになった。
そして戦争は終わった。
俺の名は、ハル・サルア
誰かが言ってたな「殺せずの死神」って