第2章14話 鬼さんこちら手の鳴る方へ
ガルムは森に鉱物を取りに来ていた。彼自体がBランクの冒険者であるので近場の採取なら大抵1人で行く事が日課になっていた。
いつもの感じで現れる魔物を自慢のアックスでなぎ倒し、目的地で採取し帰り道での事!
開けた場所にて休憩をしようとしたら、蛇の魔物が2匹襲ってきた!
蛇は巻き付かれると厄介なため、距離を詰めすぎずに対処する。
そして蛇を撃退して1息入れていたら、今度は熊の魔物が2頭現れてた!
「今日はやけにエンカウントしやがるな!!」
熊の魔物の攻撃を躱し、まずは最初の1頭の横っ腹を切り裂く!・・・ザシュ・・・
・・グルワワ~・・怒りの方向で向かって来るもう1頭の右腕を転がりながら躱し、
すぐに立ち上がって態勢を整える!
熊の魔物は二足歩行にて右左とワンツーを入れて来るが、半身を後ろに引きその攻撃も躱す!
そして1舜できた隙にアッパーの様な下から頭へ向けた1撃を入れる、すると熊の魔物は真ん中からずれて死んでいった。
その後もう一頭にもとどめの一撃を入れ戦闘は終了!
「流石に疲れたな!まーこれで休憩も出来るだろ!」
近くの岩に座り、持って来ていた干し肉をかじっていると、森の中から視線を感じた!
・・・ん?オイオイ!今度はオーガかよ・・・
まったくついてない日はとことんだな!
まだ俺を値踏みしてるようだが、弱っていると判断されたら来そうだし、いっちょこっちからかましてみるか!
そう思ったら、奴が背中を見せたので!
「なんだい!帰るのか?手負いかもしれねーのに珍しい奴だな!」
・・・思わずこんなセリフを言ってしまった!・・・
「それにしてもオーガかよ!この辺じゃ出ないはずなんだがな!」
・・・もうこうなったらどうにでもなれ・・・
「隠れてないで出て来いよ!」
・・・そのまま帰ってくれ!頼む・・・・
・・・ガサガサガサ・・・・・
・・来ちゃったよ!素直に来ちゃったよ!どーする正直オーガと戦闘とか勘弁して欲しいんだが!
それにコイツ何か普通じゃない気が・・・
「へ~ただのオオガじゃねーな!オメー」
・・・ヤベエ!コイツはマジでヤベエ!・・・
・・・進化固体じゃねーか!マジでついてねーな・・
内心アホなセルフで引き止めた自分を、呪っていたらオーガから信じられない事に、言葉が返って来た!
「俺はお前と戦う意思はない!」
!!俺は目を見開く!・・ニヤリ・・
・・・なんで〜コイツはビックリしたな!話せるのかよ。しかし戦闘の意思が無いってのはありがて〜な。
「こりゃ~驚いた!会話ができる個体かよ!」
・・しかしこーなると益々気になる事がある・・
「質問だ!なぜ俺を襲わない!腹が一杯だからか?」
「俺は元々人は襲わない!それだけだ!」
「ほう!それを信じろと?」
・・こりゃ驚いた!オーガなのに人を襲わないだと!そんな話聞いた事無いぞ。・・・
「信じるか信じないかはあんた次第だ!怪我もなさそうだから、もう行くぞ」
「怪我してたら襲ってたんじゃないのか?」
「怪我してたら傷薬を差し入れするだけだ!」
「そんな事をしてオメーに何のメリットがある?」
「何も!」
「何も無いのに助けるって言うのか?」
「ああ!」
ケタケタケタ・・・・バンバン・・・俺は笑いながら手で足を叩く・・・
「こら傑作だな!オーガのそれも進化個体に助けられそうになってたなんて・・」
・・・こーなってくるとひょっとして・・・
「オメー話ができるくらいだ、ネーム持ちだろ?」
「ああそうだ!」
・・もしやと思って聞いてみたら、やっぱ名前も持ってたか!益々戦闘にならなくて良かったな・・・
「やっぱそうか!俺はガルム!オメーとは少し縁のあるもんだ!そっちは?」
・・・ヤツは少し黙った後にゆっくりと答えた・・・
「カズマだ!それで俺との縁とはなんだ?」
「なんか人間みてーな名前だな!んで縁の話だが、俺はドワーフとオーガのハーフだ!」
「何だと・・・・!」
・・・めっちゃビックリしてるな!ま〜確かに!珍しい組み合わせだ!俺も俺以外じゃ見た事無いからな!
「普通のドワーフだと背はこれの半分より少し上くらいだ!だが俺はオーガの血が入っていてな!背もこのとーりよ!」
「成る程!珍しいな・・・」
「まーなこの秘密は誰にも話しちゃいねー!知ってるのは親とカズマ!オメーくらいだ。」
「何故そんな秘密を俺に?」
・・・確かに何でこんな身の上話をって俺も今思ってるよ・・・
「さ~何でだろうな!何かオメーなら大丈夫な気がしたのかもしれん」
「そうか!それでココには何で来たんだ?」
「材料収集だ!俺は鍛冶屋でな!武器つくる素材を取りにきてたんだ」
「成る程そ〜ゆう事か!」
「この近くの街ではこれでも凄腕で通ってるんだぞ!!」
「そうか!なら今度武器を作ってもらおうか!」
・・いやいや・・その前に問題があるだろ・・・
「街に入れたらな!」
「そらそーだな!」・・・二人で笑いあった!
「では邪魔したなガルム!」
「何でーい!もう行くのか!」
「あまり人に見られるわけにもいかんのでな!」
・・・確かにな・・・
「オメーも苦労してんだな!」
「まーな!あー1つ質問なんだが、投げたら戻ってくる武器ってあるか?」
「ん?ブーメランの事か?」
・・・偉い嬉しそうだな・・・アレそんな人気の武器じゃね〜けどな・・・
「ブーメランは作れるのか?」
「もちろんだ!かなりいい物作れるぞ!!」
「なら今度知り合いに買わせに行く!!」
・・ビックリだ!俺以外にもコイツは人間の知り合いがいるみたいだ!益々珍しいヤツだな・・
「なんでーオメー人の知り合いがいるのか?」
「ああ!」
「なら買いに行く者にガルムを訪ねろって言っておけ!安くしてやる」
「わかった!助かる」
「では!また会おうガルム!」
「おう!オメーも元気でな!」
ヤツは程なく森へ消えていった!
・・・中々思った以上にハードな1日になったが、面白い収穫があったな・・・
帰り道に、あのオーガに渡すブーメランをどんなのにするかあれやこれやと悩み、気がついたら自分の工房に帰って来ていた!
・・ブーメラン!ブーメラン!ブーメラン!ブーメラン!・・
そ〜いやこないだ作ったアレもあったな!
それはついこないだ趣味で高級な材料をふんだんに使った上に、魔法により投げても自分の手元に戻って来る性能が付与された、2つのハンドアックスであった!
「ま〜これはかなり高額だからな!オーガにゃ無理か!」
・・・さて今度ヤツの知り合いが来るまでには、ブーメラン出しておかんとな・・・
店を片付けながら、いそいそと商品を探すガルムであった。
遅くなりました!