幸せな日常の終焉
短め。ここから先がようやく本筋です。
鈴と組んだベルシノは売れた。
歌う気はなかったが、結局ボイトレはさせられた。
まあ商品に乗る声だからね。
それは良かったのだが
「おっさん、竣ともう関わりたくないんだけど」
「…うーむ」
腕組みするおっさん。
「あいつ、私の曲なんだと思ってるの?作曲家だから、作品に納得いかないからだめだしはいいよ。それはプロの仕事だ。でもあいつが言ってるのは単なるわがままだ。つきあってられない」
「…たしかにな。目に余るよ。それはわかる」
「それはね。竣が私を連れてきたんだ。その恩義は自覚しているよ。でもそんな私を採用したのはおっさんだし、それに答えたのは私だ。いつまでも恩人気取りとか困るんだよ」
「その通りだ。しかしな…」
「首にしろなんて権限はわたしにはないよ?でももう私は絡みたくない」
「そうだな。SINOの言うとおりだ。竣とはもう繋がない。社長にそう報告してくる」
「ありがとう、おっさん。恩に着る」
「いや、君にここまで言わせた段階で…申し訳ない」
「…あとさ…」
「まだあるのか?」
「…哉、いるじゃん。あの人、ちょっと不気味なんだけど…」
底がしれない。私に向けるあの暗い目。なにかたくらんでいるのではないか。
「わかった。哉の動きにも注意しておこう」
「お姉さま♪」
収録が終わり、また鈴が抱きついてくる。
「…いや、鈴、誰もいないところではいいのよ?」
「いいえ。こういうのは普段からです♪」
楽しそう
しかし、こういうのは嫌いではない。
元々は内気な性格なのだ。これぐらい積極的なほうがやりやすい。
正直どきどきするし。
ベルシノでのアーティスト活動。
作曲家としての曲提供、そして、高校生活。
そんな日常は、唐突に終わりを迎えた。
SINOはおっさんとかの知ってる人には饒舌なのですが、それ以外には無口